1995年カンヌ国際映画祭 批評家週間正式出品
逃げ切れない恐怖―― 幻の傑作が30年ぶりにリバイバル公開!
『グリーン・インフェルノ』で知られるイーライ・ロス監督に”これこそ私がやりたい映画だ“と言わしめた、90 年代傑作サスペンス・スリラー、30 年ぶりにデジタルリマスター版でリバイバル!
映画『ミュート・ウィットネス デジタルリマスター版』エクストリーム配給で2025年8月15日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテ 他全国ロードショー!
「cowai」では映画の公開を記念して、アンソニー・ウォラー監督への単独インタビューを掲載。また、映画のB2ポスターを抽選で3名様にプレゼントします。(応募方法は記事の後半で紹介)

『ミュート・ウィットネス デジタルリマスター版』予告編
わたしは、沈黙しない。
イーライ・ロス、エドガー・ライト……世界の映画作家たちが偏愛する
《カルト的》傑作サスペンス・スリラー、30 年ぶりのリバイバル!

「あんな映画は二度と作れない」
「『スクリーム』の監督オファーを断ったんだ」
幻の傑作『ミュート・ウィットネス』公開記念!
アンソニー・ウォラー監督単独インタビュー!

――監督にお会いできて、光栄です。『ミュート・ウィットネス』は私もベスト10に入れるほど大好きな傑作です。本作がデジタルリマスターされ、30年ぶりに日本でリバイバル上映されることについて、まず一言お願いします。
監督 ありがとうございます。ソフトのリリースや配信ではなく、劇場で公開されることがうれしいですね。元々、この作品はシネマスコープで撮っていて、劇場のスクリーンで観ることを前提にしていますので、自分の意図した、とてもエキサイティングな体験ができると思います。
私自身も、このリマスター・バージョンを去年、自分の誕生日にロサンゼルスで鑑賞するという、素敵な体験ができました。だからこそ、このリマスター・バージョンの素晴らしさには自信を持っていますので、日本のたくさんの方に見ていただきたいです。
――この作品が改めて人々を引き付ける理由はどこにあるのでしょうか。
ウォラー:なぜかホラー・ファンにも受けが良いのですが(笑)、この作品は別にゴア描写が売りではなく、純粋なサスぺンス・スリラーです。たしかにスラッシャー・ホラーのような側面もあるけれど、僕自身は5分ごとに血まみれシーンが繰り返されるような映画は退屈して飽きてしまう。むしろ1か所だけインパクトのあるシーンがあって、あとは全編に散りばめられたサスペンスとユーモアで観客を引っ張って、ハラハラ楽しませるような作品が好きなんです。そうした部分が結果的に観客に受け入れられたんじゃないかな。
――なるほど、ワンシーンのインパクトで、ホラーのようにも見えつつ、ジャンルすら絞り切れない程の仕掛けでハラハラ楽しませる。構造的にはサスペンスなんだけど、それ以上のスリルと映画的な楽しさ、仕掛けが詰まっているのが、本作と言うわけですね。
ウォラー:そうですね。ホラーが決して嫌いなわけじゃないけど、作品的にはスリラーやサスペンスがより好きなんだ。

誰も脚本を買ってくれないから、自腹で作ったんだ

――『ミュート・ウィットネス』が監督デビュー作になると思いますが、企画の立ち上げはどのように?
ウォラー:実は映画が完成する10年前、1983年か84年に、すでに脚本は完成していた。ハリウッドのいろんなスタジオに売り込んで、その中には、後に完成した作品を買ってくれたコロンビア・トライスターもいた。でも、当時は僕も新人の無名監督だったから、いきなり会社の重役が脚本を読んでくれるわけもなく、おそらく学生のバイトがさっと読んだのか、「この脚本は最低だ!」と糞ミソに酷評されてしまった。「プロットも展開も最悪で、すべてが下の下の下!」って。当時コロンビア・トライスターから届いた、評価の通知を未だに持っているぐらいだよ(笑)。あの当時、脚本を読んでくれた人が、この作品の良さを理解して、会社に薦めてくれていたら、自分のキャリアはもっと早く始まったんじゃないかなと思う。

ウォラー:まあ結局、どこも脚本を買ってくれないから、自分たちで撮ろうということになった。僕もCMを撮ったりして貯金をして、予算の半分を捻出して、残りは医学生だった友人に出してもらって、やっと本編を撮ることができたんだ。
――製作費の半分も自腹なんですか。しかも、残りも友人の出資なら、完全な自主映画ですね。
ウォラー:そうだね、今思えばどうかしている(笑)。でも、売り込むためには、ちゃんとやりたかったんだ。だからアレック・ギネスの出演シーンも1985年に撮影していた。途中からでも映画会社が買ってくれると信じてね。だって、あの(『スター・ウォーズ』や『アラビアのロレンス』の)アレック・ギネスが出演するんだよ。でもね、誰もなかなかお金を出してくれない。結局、8年間かけて作品を完成させた。そしてロサンゼルスで上映会を開いたりして、再びハリウッドで売り込みをした。最終的にコロンビア・トライスターが作品を買って、世界に配給してくれたからラッキーだった。作品を評価して「あそこを変えろ」とか「ここを変えろ」とか面倒なことを一切言われず、契約してくれたので、みんなからは「奇跡だ」と驚かれたけどね。
――新人監督が自腹で、しかも公開の当てのない作品で、アレック・ギネスの出演シーンを撮るなんて凄いですね。
ウォラー:実はアレック・ギネスのシーンが最初の撮影だった。自分は無名どころか、映画学生みたいな立場だから、カメラの目の前で、歩くギネスがいるというだけで当然緊張しっぱなし。だから最初のシーンで、カメラをセットアップして、「さあ撮るぞ」って、ずっとフィルムを回していたんだけど、彼が演技をしないんた。全く動かない。「えっ、なんで?僕が何か彼を怒らせた?」と固唾をのんで見守っていたら、スタッフから教えられた。僕が「アクション!スタート!」って言うのを忘れていたんだ(苦笑)。そのぐらい、ひどく緊張していたということさ。

困難を極め、滅茶苦茶だったモスクワのロケ
影響を受けた映画には意外なホラー作品も

――そうした撮影エピソードを聞くだけでも大変そうですが、この映画では、さらにやっかいなことに、ソ連時代のロシア、数々の名作映画が撮られたモスフィルム・スタジオでもロケ撮影が行われています。
ウォラー:モスフィルムでの撮影で、簡単だったことを上げろと言われる方が難しいくらい、苦労が続いたよ(笑)。撮影初日にモスクワで軍隊の蜂起があって、戦車が首相官邸に戦車が発砲したりしてね。そんな緊迫した中で撮影に入らなきゃいけなかったし、現地のクルーの中にはドラッグ中毒のスタッフがいたり滅茶苦茶。モスフィルムのスタジオも非常に老朽化していてもはや廃墟に近い。でも映画の中では、それをロケーションとして効果的に使ってはいるんだ。
――じゃあ、あの雰囲気のあるスタジオはセットや美術ではなく?
ウォラー:実際にああいう状態だった。いい味は出しているけど、機材も古い壊れかけの物ばかり。さすがに撮影機材はドイツから持ち込む予定だったけど、ソ連の税関がいきなり「昨日からルールが変わった。65,000ドルの税金をかける」って言ってきた。事前に約束した書類を用意していたにもかかわらず。その後は交渉に次ぐ交渉で、最後は5,000ドルとウオッカ1ダースで決着を付けた(笑)。
とにかく自腹で半分製作費を出しているから、領収書1枚だって大切なんだ。それなのに渡された領収書は鉛筆で適当に書かれていたり、信じられない位雑なビジネスのやり方だったのでずっと心配でした。今の携帯電話の社会では考えにくいけど、当時のソビエトは電話一つかけるにしても、アポを取って電話局に行って手続きをして電話をかけるという状態だったので、一事が万事、映画制作は困難を極めましたね。

――そのかいあって、この映画は新人監督離れしたトリッキーな仕掛けに満ちた傑作になりました。どのシーンにも監督のこだわりが感じられます。この作品を撮るにあたって、影響を受けた作品や意識した作品はありますか。
ウォラー:まず『サスペリア』かな。
――いきなりホラーですか!(笑)。
ウォラー:『サスぺリア』は全てを超越するぐらいの、オーバー・ザ・トップのような作品です。やりすぎなぐらいのオーディオ&ビジュアルの使い方が好きだ。もちろんそれを直接マネするわけではなかったんだけど、間違いなく影響を受けた映画の一本ですね。
そして、デ・パルマの『殺しのドレス』。『ミュート・ウィットネス』で、映画監督のアンディーがヒロインのビリーの部屋で電話をかけている時、背後からフォーカスのピントが合ってない人物が近づいてくるあのショットは、『殺しのドレス』へのオマージュ。
最後はやっぱり『サイコ』。さっき言ったように一つのショッキングシーンでインパクトを与えて、残りはサスペンスで引っ張るというこの映画の基本構造は『サイコ』からの影響なんだ。

実は『スクリーム』の監督のオファーを断ったんだ

――ここまでお話を聞いて、『ミュート・ウィットネス』が単なるサスペンスを超えて、様々な映画のエッセンスが注がれ、それが独特の魅力を生み出している理由が、よくわかりました。正直なところ、監督のその後の作品は、『ミュート・ウィットネス』を超えるほどの衝撃や話題を与えていないように思います。『ファングルフ/月と心臓』なども十分面白いんですが、個人的には『ミュート・ウィットネス』の続編やスピンオフ、あるいは同様のスリラー、サスペンスなども見たいのですが。
ウォラー:お気持ちはわかります。でも『ミュート・ウィットネス』のように100%自分で全てが決められた映画というのはレアなんです。あんな映画は二度と作れないんじゃないかな。とにかく予算が多くなると、口を出す人も増えてくるし。やはり他人のお金で映画を撮りながら、クリエイティブな領域をすべて自分でコントロールすることは難しいですね。

――『ミュート・ウィットネス』のような作品を撮ってください」というオファーはあるんですか。
ウォラー:ありますね。ファンの方も期待しているかもしれませんが…、でも、僕自身は『ミュート・ウィットネス』の続編を撮るようなことは、したくないと思っています。自分の来た道を戻るような感じになってしまうのも嫌だなって。
僕が次にやりたいのは子供用のアニメ作品であったり、第二次世界大戦中の実話を基にした映画だったりするので。スリラーのジャンルに戻るということはあまり考えていません。
ちなみに、過去にオファーされ、自分が断ったホラー映画の中に『スクリーム』がありましたね。
――“アンソニー・ウォラーの『スクリーム』”!それは見たいような、見たくないような(笑)。
ウォラー:最終的にスケジュールが合わなくて実現しなかったんですが、個人的にはオファーを断るつもりでした。
なぜなら僕がスラッシャー映画専門の監督というレッテルを貼られたくなかった面も大きい。

――大変興味深いお話でした。では、最後に観客に日本の観客に向けて、30年ぶりの上映、まだ見ていない若い観客も多いと思いますので、メッセージをお願いします。
ウォラー:この作品は主人公に感情移入をして見てほしいですね。映画館の観客は黙って映画を見なければいけないので、まさにミュートと言いますか。観客も喋れないわけですから。主人公のように喋れない状態でこの映画を体験すると、さらに楽しめると思います。本来の意図通り、大きなスクリーンで見てほしいですね。
――ありがとうございました。
(取材・文・福谷修)

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『ミュート・ウィットネス』公開記念!
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幻の傑作サスペンス・スリラーが 30 年ぶりに甦る

特殊メイクアップアーティストとして働くビリーは、姉の恋人が監督するホラー映画の撮影のためにモスクワのスタジオに訪れていた。撮影後、忘れ物を取りに一人でスタジオへ戻るが施錠されてしまい閉じ込められてしまう。声を出すことのできないハンディキャップを持つビリーは助けを求めて誰もいないはずのスタジオ内を彷徨うが、そこでは密かにポルノ映画の撮影が行われていた――と思った瞬間、目の前で女優の胸にナイフが突き立てられる。行われていたのはなんとスナッフフィルムの撮影だったのだ! そして彼女の地獄のような一夜が始まった……。



名匠ヒッチコック、デ・パルマの後継者に相応しいと
名高いアンソニー・ウォラー 長編デビュー作!

監督は『ファングルフ/月と心臓』(1997 年)などで知られる、アンソニー・ウォラー。
ヒッチコックやデ・パルマの後継者に相応しいと名高い彼は、イーライ・ロス監督が『サンクスギビング』の製作の際にもインスピレーションを受けたと発言している。

出演はヒロインにロシアの人気女優マリナ・スディナ。

共演は『ノスタルジア』などの名優オレグ・ヤンコフスキーほか。『スター・ウォーズ』などの英国演劇界の重鎮、アレック・ギネスが特別出演。






『ミュート・ウィットネス デジタルリマスター版』
監督・脚本:アンソニー・ウォラー
出演: マリナ・スディナ、フェイ・リプリー、オレグ・ヤンコフスキー、
エヴァン・リチャーズ、アレック・ギネスほか
1995 年/イギリス、ロシア、ドイツ/英語、ロシア語/98 分/カラー/
字幕翻訳:額賀深雪/R18/提供:シノニム/配給:エクストリーム
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