黒沢清監督が菅田将暉に薦めた、“超絶イケメン俳優の犯罪サスペンス映画”。【連載企画】「あの人の一本!」

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「cowai」の過去のインタビューの中で、
特に反響の大きかったエピソードを再録!



WEB映画マガジン「cowai」に過去に掲載されたインタビューの中で、特に反響の大きかったホラー・エピソードを抜粋し、イチオシの作品を紹介する好評連載企画「あの人の“ホラーな”1本!」
五回目は特別編『あの人の一本!』と題して、『CURE』『回路』の黒沢清監督が、映画『Cloud クラウド』の撮影前、主演の菅田将暉に薦めた映画を紹介する。記事は、『Cloud クラウド』公開記念・黒沢清監督単独インタビューより。(2024年9月27日掲載)



【「あの人の“ホラーな”一本!」】バックナンバー

①深川麻衣「初めて見た時、衝撃でした」
https://cowai.jp/interview/12364/

➁白石晃士(『近畿地方のある場所について』監督)
「クトゥルー的な世界観はありますが、実はクトゥルーというより…」
https://cowai.jp/movie/12367/

③堀未央奈「私ほんとに何でも好きなんです。ホラーだとジャンルを問わず」
https://cowai.jp/interview/12375/

④伊藤潤二「菅野(美穂)さんを“富江”にしてくれって、私の方から頼んだんです」
https://cowai.jp/interview/12381/









【連載企画】あの人の1本!⑤黒沢清
菅田さんから「何か参考になる作品があったら見たい」と言われて……



黒沢清監督が、主演に菅田将暉を迎えた映画『Cloud クラウド』(2024年9月27日公開/Prime Videoほかにて配信中)は“誰もが標的になりうる”日常と隣り合わせの恐怖を描いたサスペンス・スリラー。転売で稼ぐ主人公・吉井良介を菅田将暉、吉井の謎多き恋人・秋子役を古川琴音、吉井に雇われたバイト青年・佐野役を奥平大兼、ネットカフェで生活する男・三宅役を岡山天音、吉井が働く工場の社長・滝本役を荒川良々、そして吉井を転売業に誘う先輩・村岡役を窪田正孝が演じている。


※『Cloud クラウド』公開記念・黒沢清監督単独インタビューより。(2024年9月27日掲載)


黒沢清監督(「cowai」特写)




――菅田さんの演技力は誰しも認めるところですが、本作では、これまでの出演作品以上に抜きんでた存在感と深い魅力を感じます。これは黒沢監督の演出との相性がうまくマッチした成果ではないでしょうか。

黒沢 そうありたいですね。もう少しわかりやすい、例えば喜怒哀楽の激しい人物とか、見るからに個性的なキャラクターならまだしも、主人公・吉井良介はごく普通の人間で、反応も曖昧。およそ暴力的なことを好んでするような人物ではありません。だから、そんな彼がどうやって最後に、ある種の殺戮にまで至るのか、というのが作品の鍵であり、特に、前半から中盤にかけての、まだ何も起こっていない、つかみどころのない主人公をあくまで曖昧に、しかし同時にミステリアスな魅力を放つ人物として演じ切ってくれたところが、本当に菅田さんのおかげだったと思います。

ーー脚本は菅田さんの当て書きだったのでしょうか?

黒沢 いやいや、まあ、「菅田将暉さんに出演してもらえたら本当に良いんだけど」程度には思いましたが、あまり夢のようなことは考えず、「(主演は)誰かはわからない」「誰が演じてもいい」ように書いていきました。

――最初は、菅田さんが出てくれる可能性は低いと思っていた?

黒沢 彼は人気者で大スターですからね。

ーー菅田さんが演じることになって、演技指導はされたのですか。

黒沢 演技指導みたいなことは何もしていませんし、打ち合わせもほとんどやっていません。ただ、菅田さんが唯一、事前に「何か参考になる作品があったら見たい」とおっしゃったので、その場で思いついた作品として、『太陽がいっぱい』(1960)という、アラン・ドロンが主演した、ルネ・クレマンの映画を挙げて、見ていただきました。

――ああ、『太陽がいっぱい』とは腑に落ちますね。

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菅田「こんな主人公がいたんですね」


黒沢 あの作品のアラン・ドロン(演じる青年)って、本当に真面目にコツコツと犯罪を犯していくじゃないですか。1960年代初頭の映画ですから、背景に貧困や差別が社会に歴然とあった時代で、ああやって真面目に生きのびるために犯罪を犯す主人公がいたっていうのが、菅田さんにはすごく新鮮だったようです。タイトルは知っていても、これまで見たことはなかったようで、「こんな主人公がいたんですね。わかりました」と納得してくれました。
昔は、『太陽がいっぱい』の主人公のような犯罪者がフィクションの世界では珍しくなかったと思うんですけど、いつの間にかいなくなってしまった。今どきの悪いことをする奴は、もっとやさぐれているとか、世をすねて面白半分とか、あるいは遊ぶ金欲しさとか、幼い欲望レベルの動機で犯罪を犯すんですよね。
『Cloud クラウド』の主人公は別に犯罪者ではないし、さりとて完全な善人でもない、ギリギリのところをやっている。ふざけて遊びがてらやっているわけではなく、真面目にコツコツとやっている姿はどこか『太陽がいっぱい』のアラン・ドロンに通じるものがあるのかなと思っています。





【元記事】





映画『Cloud クラウド』はPrime Videoほかにて好評配信中!









【「あの人の“ホラーな”一本!」】バックナンバー



①深川麻衣「初めて見た時、衝撃でした」




➁白石晃士(『近畿地方のある場所について』監督)
「クトゥルー的な世界観はありますが、実はクトゥルーというより…」



③堀未央奈
「私ほんとに何でも好きなんです。ホラーだとジャンルを問わず」



④伊藤潤二
「菅野(美穂)さんを“富江”にしてくれって、私の方から頼んだんです」





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