映画史の闇の中から忽然とその名を表した選りすぐりの、
怪作、珍作、奇作、迷作、異作が今年も目白押し!
2019 年より開催されて以来、この世の映画好事家を驚かせる作品を次々と上映してきた「奇想天外映画祭」の第4回目が、新宿 K’s cinema にて 9 月 17 日(土)~10 月 7 日(金)に開催となる。
特集上映のビジュアルと予告編、さらには目玉作品『リキッド・スカイ』への小島秀夫ほか、各界の識者の熱いコメントを紹介する。
9 月 17 日(土)~10 月 7 日(金)開催
第4回「奇想天外映画祭」怒涛の予告編!
傑作ホラー『顔のない眼』&遺作『赤い夜』ジョルジュ・フランジュ生誕110年記念上映!
ブニュエルの怪作『昇天峠』、40周年記念の 4K レストア『リキッド・スカイ』!
ピーター・ブルック追悼作品、『紅い唇』まで、今年も充実のラインナップ!
今年も必見のラインナップだが、「cowai」のオススメはなんといっても、本年が生誕 110 年となる<ジョルジュ・フランジュ>からの2本。怪奇と幻想と恐怖に満ちたフランジュのホラー映画史に残る大傑作『顔のない眼』(59)をスクリーンで鑑賞できる喜びをかみしめたい。世界中の映像作家に多大な影響を与え、日本でも、あのスケキヨさんの白マスクもこちらが元ネタ(原作のスケキヨ・マスクはもっとおどろおどろしい)。
そして、テンプル騎士団の秘宝を狙って、“赤い仮面”の男が率いる仮面軍団とゾンビ軍団が共闘して挑む、フランジュのカラー作品にして遺作『赤い夜』(74)も見逃せない。
また、メキシコ時代のブニュエル・ワールド満載の逸品、ルイス・ブニュエルの《世にも奇妙なバス旅行》こと、『昇天峠』(75)も必見。下のスチールを見るだけで、この作品の怪しさ爆発の魅力の一端が理解できるかもしれない。
映画祭としての注目ラインナップは、まずジェーン・バーキン主演、ジョージ・ハリスン音楽『ワンダーウォール』(68)。イギリス時代最後の主演作となったバーキンはセリフ一切なし。ただ覗かれるだけの不可思議な役どころ。音楽はサントラ盤が最初のアルバム「不思議な壁」となったザ・ビートルズのジョージ・ハリソンが担当。インド・テイストのサウンドが全編に響き渡る。『レッド・ツエッぺリン/強熱のライブ』のジョー・マソットのサイケデリックなデビュー奇作。
また、<ラテンアメリカ>から、ひたすらアナーキーな世界に邁進する主人公の情念とパワーが画面にほとばしり見るものを圧倒する“シネマ・ノーヴォ”の傑作グラウベル・ローシャ『狂乱の大地』(67)、そして、そして、ノワール作品が2本。
『死刑台のエレベーター』とマイルス・デイヴィス、『大運河』と MJQ などノワール+ジャズの流れで登場した、アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズが音楽を担当したエドウアール・モリナロ『殺られる』(59)。
クライマックスのカーチェイス・シーンは伝説になっているアンソニー・マン・ノワールの傑作『サイド・ストリート』(50)。
そして今年の 7月に亡くなったイギリスの偉大な演出家であり映画監督ピーター・ブルックを追悼し、神秘思想家グルジェフの自伝を映画化した『注目すべき人々との出会い』(79)を特別上映する。
さらに、昨年の好評を博したアンコール作品としては、デルフィーヌ・セイリグ主演、ハリー・クーメル監督『赤い唇』、ジョン・ウオーターズの初長編作『マルチプル・マニアックス』を上映。
今年の映画祭の目玉作品がスラヴァ・ツッカーマン『リキッド・スカイ』だ。
小さな宇宙船がニューヨークに着陸する。エイリアンたちは麻薬による陶酔を求めて、ヘロインからさらには人間のオーガニズム絶頂期に脳内で分泌される快楽物質を追い求めている。息をのむばかりの美と輝き。奇怪で気取ってそれでいてきらびやかな世界。痛快で“ぶっ飛んだ”『リキッド・スカイ』はカルトの枠を超えた唯一無二の作品として鮮やかに光り輝く。今回 40 周年記念として 4K レストアされた『リキッド・スカイ』デジタル・リマスター版を是非お見逃しなく!
超カルト作『リキッド・スカイ』に
小島秀夫ら識者からも驚嘆のコメントが到着!
場面写真10点も一挙掲載
まさか 4K リストア版の”あの空“が観られるなんて!80 年代ニューウェーブなビジュアル、ファッション、ネオンカラー、サウンド!当時は劇場公開に行けず、ビデオをレンタルしては何度もキメた。いやあ、効いた。好きだったわ。後に VHS を買ったくらい。40 年ぶりに吸引してみてわかった。僕の脳内には今も「リキッド・スカイ」が残留し、発光している!令和の若者たちにも、サブスク映画時代には決して生まれえない真の“カルト作”に陶酔してみて欲しい。
小島秀夫(ゲームクリエイター)
Sex, Drag and Electronic Music
その後何本もの映画/ドラマで共犯者となる同世代の映画監督との初仕事で、参考曲にリキッドスカイのサントラの”Noon”と”Jimmy’s Theme”があった。僕が喜んだのは言うまでもない。One of My Best 80s Films/Fim Musics.
上野耕路(作曲家)
僕は知らなかった。中性的な主人公、全編に無機質なリズムボックス、サイケデリックなネオンカラーに彩られたオーガズム、究極なまでにコンパクトに表現された Sex & Drug & Violence な SF カルトムービーを僕は知らなかった。2022 年の今、初めて見た「LIQUID SKY」。この映画が公開された 1982 年に、嫉妬してます!
MASASHI (作曲家、ギタリスト from CASCADE)
80s ニューヨークのヴィヴィッドなサウンド&ビジョン!
時代を超えた未知との遭遇に思わずレッツ・ダンスだ!
ジョニー志田(ラジオ DJ)
こういうイ・キ・カ・タがしたい
滝本誠(映画評論家)
上映作品
『リキッド・スカイ』 40 周年記念 4K デジタル修復版上映
製作・監督|スラヴァー・ツーカーマン
出演|アン・カーライル、ポーラ E・シェパード、ボブ・ブラディ
1982|アメリカ|112 分|カラー
小さな宇宙船がニューヨークに着陸する。エイリアンたちは麻薬による陶酔を求めて、ヘロインからさらには人間のオーガニズム絶頂期に脳内で分泌される快楽物質を追い求めている。息をのむばかりの美と輝きの、失われたニューヨーク。セクシュアリティの解放、性的暴力に対する復讐、セックスに憑かれた男たちは絶頂に達すると消滅する。奇怪で気取ってそれでいてきらびやかな世界。そして“ジェンダーファック・ファッション”。この世界を生み出したのが、共同脚本執筆者であり、レズとゲイのパンクモデルの二役をこなしたアン・カーライルだ。痛快で“ぶっ飛んだ”『リキッド・スカイ』はカルトの枠を超えた唯一無二の作品として鮮やかに光り輝く。
『ワンダーウォール』
監督|ジョー・マソット 音楽|ジョージ・ハリソン
出演|ジェーン・バーキン、ジャック・マッゴーラン
1968|イギリス|92 分|カラー
ロンドン。初老の自然科学者オスカー・コリンズはアパートの隣に越してきたジェーン・バーキンを偶然見つけた壁の穴から覗いているうちに、研究対象を“若いキュート”な彼女に変えてしまい夢と幻想の世界にはまり込んでしまう。イギリス時代最後の主演作となったバーキンはセリフ一切なし(ただ覗かれるだけの不可思議な役どころ)。音楽はサントラ盤が最初のアルバム「不思議な壁」となったザ・ビートルズのジョージ・ハリソンが担当。インド・テイストのサウンドが全編に響き渡る。『レッド・ツエッぺリン/強熱のライブ』のジョー・マソットのサイケデリックなデビュー奇作。
ジョルジュ・フランジュ生誕 110 年記念上映
『顔のない眼』
出演|ピエール・ブラッスール、アリダ・ヴァリ
1959|フランス=イギリス合作|90 分|モノクロ
ジェネシュ医師の娘クリスティーヌは交通事故で顔に大火傷を負い森の中の屋敷で仮面をつけてひっそりと暮らしていた。ジェネシュはクリステイーヌにもとの顔を取り戻そうと若い女性を殺して彼女たちの顔の皮膚を娘に移植するのだが、何度試みても失敗してしまう…。怪奇と幻想と恐怖に満ちたフランジュのホラー映画史に残る傑作。
『赤い夜』
出演|ゲイル・ハニカット、ジャック・シャンプルー
1974|フランス=イギリス合作|100 分|カラー
テンプル騎士団の秘宝を狙って、“赤い仮面”の男が率いる仮面軍団とゾンビ軍団が共闘して挑むのだが…。当初はルイ・フイヤードの「フアントマ」のテレビ・シリーズとして企画されていた。フランジュの『ジュデックス』の流れを組む荒唐無稽なアクション活劇。
ラテンアメリカ
『狂乱の大地』
監督|グラウベル・ローシャ
出演|ジャルデルー・フィーリョ、グラウセ・ローシャ
1967|ブラジル|107 分|モノクロ
60 年代初頭、突如ブラジルに現れた“狂気”がヨーロッパの映画人たちを震撼させた。架空の軍事独裁国エル・ドラドの革命と反乱を描いたグラウベル・ローシャ3作目の本作は、ひたすらアナーキーな世界に邁進する主人公の情念とパワーが画面にほとばしり見るものを圧倒する“シネマ・ノーヴォ”の傑作。
『昇天峠』
監督|ルイス・ブニュエル
出演|リリア・プラド、カルメン・ゴンザレス
1951|メキシコ|75 分|モノクロ
メキシコ、ゲレーロ州の海沿いの村、サン・へロミート。村はヤシの実で成り立っている。主人公オリヴェリオの結婚式の当日、突然母の容態が悪くなったことから、彼はとある事情で隣町までバスで行く事になる。危険な山道を走るバスに驚くべき珍事が次から次へと降りかかる…。メキシコ時代のブニュエル・ワールド満載の逸品。
奇想天外映画祭ノワール
『殺られる』
監督|エドウアール・モリナロ 音楽|アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズ 出演|ロベール・オッセン、フイリップ・クレイ、マガリ・ノエル
1959|フランス|90 分|モノクロ
50 年代末にフランス映画界に登場したモダン・ジャズと犯罪映画の結びつきがあり、『死刑台のエレベーター』とマイルス・デイヴィスや『大運河』と MJQ などに次いで登場したのが『殺られる』である。当時にしては珍しく暴力とエロティシズムを随所に盛ったノワールの佳作であり主演のロベール・オッセンが素晴らしい。
『サイド・ストリート』
監督|アンソニー・マン
出演|ファリー・グレンジャー、キャシー・オドネル
1950|アメリカ|83 分|モノクロ
郵便配達員のジョーはついで出来心で弁護士事務所から金を盗むがそれは”悪徳”弁護士が不法な手段で得た金だったことから、事態は思わぬ展開で突き進んでいく…。舞台となるニューヨークの街、人々をリアルに描いた稀有な作品でありクライマックスのカーチェイス・シーンは伝説になっているアンソニー・マン・ノワールの傑作
ピーター・ブルック追悼
『注目すべき人々との出会い』
監督|ピーター・ブルック
出演|ドラガン・マクシモヴィク、テレンス・スタンプ
1979|イギリス|107 分|カラー
ボブ・ディラン、キース・ジャレットなどのミュージシャンに大きな影響を与えた“神秘思想家”グルジェフの自伝を演劇界の重鎮として名高いピーター・ブルック(2022 年 7 月逝去)が映画化した異色作。生きる心理を求めた青年グルジェフの冒険と神秘に満ちた“覚醒への旅”の最後に登場するグルジェフの“神聖舞踏”は圧巻のフィナーレだ。
奇想天外アンコール
『赤い唇』
監督|ハリー・クーメル
出演|デルフィーヌ・セイリグ、ダニエル・ウイメ
1968|イギリス|100 分|カラー
ベルギーの港町のホテルを舞台に繰り広げられる恐怖とエロテイシズムにに包まれた禁断の世界を描いた怪奇幻想映画。独自の耽美映像で知られるハリー・クーメルの代表作として知られる。主人公エリザベート伯爵夫人を演じたデルフィーヌ・セイリグの銀色に輝くミステリアスな美貌に酔いしれる。
『マルチプル・マニアックス』
監督・製作・脚本・撮影・編集|ジョン・ウオーターズ
出演|ディヴァイン、デイヴィット・ロチャリー、メアリー・ヴィヴィアン・ピアース
1970|アメリカ|96 分|カラー
1970 年の『ピンク・フラミンゴ』で“バッド・テイスト映画の帝王”と一躍その名を刻んだジョン・ウオーターズが’68 年に 5,000 ドルで製作した長編処女作。ウォーターズ自身が“セルロイドの残虐行為”と呼んだこの作品の主役はドラァグ・クイーンの先駆者として名高いデヴァイン。