2019年7月に75歳でこの世を去った名優ルトガー・ハウアーが、謎の殺人ヒッチハイカー役として怪演し話題となった映画『ヒッチャー』(86)が、『ヒッチャー ニューマスター版』となって、公開から35年を迎える2021年1月8日(金)よりシネマート新宿ほか全国順次公開することが決定。
HDリマスター化によって鮮やかによみがえった本素材での上映はこの度が世界初となる。
テキサス砂漠を突き抜ける1本のハイウェイ。
眠気と戦いながら車で走行中の青年ジムは、雨でズブ濡れになってヒッチハイクしていた謎の男ジョンを乗せてやる。
それが悪夢の始まりとは知らずに……。
本作は、殺人ヒッチハイカーを乗せたばかりに、その後逃げても逃げてもひたすら狙われ続ける青年の恐怖と絶望を描き、アメリカ全土に”恐怖のヒッチハイカー“というトラウマを植え付けたサイコ・スリラー。
シンプルなストーリーながら、全編に異様な緊張感を持続させることに成功、と同時にド派手なアクションの連続で、観る者に恐怖と興奮を与える傑作として、今もなお多くの映画ファンに愛されている。
ちなみに筆者も、劇場公開時に鑑賞し、度肝を抜かれた。ヒッチハイカーというアメリカの都市伝説をここまで的確に描いたホラーは他にはない。一見の価値はもちろん、劇場のスクリーンで見るべき、傑作だ。
メガホンをとったのは本作で監督デビューしたロバート・ハーモン。
殺人鬼の動機や人物背景などをほぼ排除し、彼らの置かれた状況だけを丁寧に描くことで登場人物の本質をにじませていく演出が光っており、J・J・エイブラムス監督は『10 クローバーフィールド・レーン』(16)製作時に本作の影響を受けていることを明かしている。
撮影は『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(15)のジョン・シールが担当しており、盛大に横転する車や燃え上がるヘリコプターなど、サービス精神旺盛な場面が多い上、霧の中に佇む怪しげなヒッチハイカーや人影もなくどこか不安を煽る広大なハイウェイなど、ハッとするほど美しい場面もあり、どのシーンも見どころだ。
ある日突然命を狙われ逃げ惑う青年ジム役を務めたのは、スティーヴン・スピルバーグ監督『E.T.』(82)で自転車少年グループの1人として映画デビューし、翌年フランシス・フォード・コッポラ監督『アウトサイダー』(83)の主役に抜擢されたC・トーマス・ハウエル。当時アイドル的人気があった彼は、そのイメージ払拭を狙って本作に出演し、後に「俳優として『ヒッチャー』は重要な作品」と語っている。
あらゆる手段でどこまでもジムを追う、神出鬼没で不気味な殺人鬼ジョン・ライダーを演じるのは、美しいブルーアイが『ブレードランナー』(82)で演じたレプリカント(人造人間)同様、冷たくも惹きつけられるキャラクターとしての魅力を倍増させているルトガー・ハウアー。当時、悪役を演じたくないと考えていたハウアーだったが本作の脚本を読み出演を快諾した。クリストファー・ノーラン監督はこのハウアーの怪演を「渾身のサイコパフォーマンス」と絶賛しており、自身の作品『バットマン ビギンズ』(05)で彼を起用した。
普通の青年ジムが殺人鬼ジョンと死闘を繰り広げ続けるうちに、いつしか不思議な共鳴が生まれていく衝撃のサイコ・スリラー『ヒッチャー ニューマスター版』は2021年1月8日(金)よりシネマート新宿ほか全国順次公開だ。
【STORY】
シカゴからサンディエゴへの砂漠地帯。陸送の仕事をしていたジム・ハルジーは、ある嵐の夜に1人のヒッチハイカーを車に乗せる。しかし、ジョン・ライダーと名乗るその男はハンドルを握るジムの喉にナイフを突きつけ「俺を止めてみろ」と脅しだす。ジョンは恐ろしい殺人鬼だったのだ。一瞬の隙を見て、何とかジョンを車から突き落としたジムだったが、それは恐怖の始まりに過ぎなかった。何度でも執拗に襲いくる恐怖の殺人鬼。警察や協力者でウェイトレスのナッシュを巻き込んで事態は悪化していく。
【作品概要】
出演:C・トーマス・ハウエル、ルトガー・ハウアー、ジェニファー・ジェイソン・リー、ジェフリー・デマン
監督:ロバート・ハーモン 脚本:エリック・レッド 撮影:ジョン・シール 音楽:マーク・アイシャム
1986年/アメリカ/音声:英語5.1chサラウンド/日本語字幕:落合寿和(2019年新訳版)/16:9ビスタサイズ/DCP/97分
提供:是空、TCエンタテインメント 配給・宣伝:アンプラグド
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