『ゲット・アウト』など社会派ホラーのジョーダン・ピールとJ・J・エイブラムスが製作総指揮した話題のSFホラードラマ『ラヴクラフトカントリー 恐怖の旅路』が本日10 月24日(土)より日本独占初配信開始となる。(「BS10 スターチャンネル」にて11月より放送予定)
これを記念し、映画評論家町山智浩が本作の内容を1話ずつじっくりと深堀り解説する「特設Podcast”ラヴクラフトカントリーラジオ”」も本日10月24日(土)より放送開始となる!
このPodcastを通して、本作の歴史的、社会的背景に加え、文学や映画など幅広く探求し、本作のメッセージを紐解く。
ドラマ『ラヴクラフトカントリー 恐怖の旅路』の配信に合わせ、スターチャンネルではさりげない描写に込められた深い意味やメッセージをしっかり読み取れるよう、アメリカ文化に詳しい映画評論家・町山智浩に1話ずつ解説や見どころを語っていただく、特設Podcast“ラヴクラフトカントリーラジオ”が始動する。
前述の通り本ドラマは1950年代に実際にあった黒人差別問題を題材にしている。
例えば冒頭のバスのシーンに関して、Podcast内で町山は「主人公アティカスの隣に黒人のおばさんが座っていてるが、この人は1955年に白人専用のバスの座席に座って逮捕されたローザ・パークスという実在の人物です。彼女の逮捕を受けてキング牧師がバスボイコット運動を始めるのです」と解説。
その他、黒人にとって安全な宿やレストランを記した「グリーンブック」の制作や、歴史には残らない黒人女性が歌うロックンロール、KKKの警察官によって隠ぺいされた黒人殺害事件、日没に黒人が出歩くと逮捕される町、など今では信じられないような史実が劇中でしっかり描写されている。
日本ではなかなか知ることのできないこれらの事実を知り、より本作が語るものを理解するためにも町山の解説Podcastは必聴だ。
この後、放送内容の前半の内容を公開するが、最後まで解説内容を聴きたい方は、是非「ラヴクラフト カントリーラジオ」をチェックして頂きたい。
また、Podcast第1回目の最後に町山氏は「『ラヴクラフトカントリー 恐怖の旅路』は、ラヴクラフトが好きだけど黒人だという非常に画期的な主人公。朝鮮戦争にも出征しているから喧嘩も強い。そんな面白いキャラクターが、ラヴクラフトの世界に出てくるような怪物が跳梁跋扈する中をどのように活躍していくのか? いまだかってない超面白そうなドラマが始まりましたね。」とも語っており、本編の今後の展開にも期待が高まる。
【特設Podcast“ラヴクラフトカントリーラジオ”放送情報】
10月24日(土)より毎週土曜ひる12時より公開!あわせて文字起こしもスターチャンネル公式noteにて掲載予定。本編と共に要チェック!
■公式Podcast ・・・
【Anchor】https://anchor.fm/starch
【Spotify】 https://open.spotify.com/show/7kPoezb8oohPEaNHAUnshw
【Youtube】https://www.youtube.com/channel/UC9qwYRHeqFT85xuX7Brjg0w
■note ・・・ https://note.star-ch.jp/n/n63ec193a311c
【作品概要】
HBO®ドラマ『ラヴクラフトカントリー 恐怖の旅路』(全10話)
『ゲット・アウト』など人種差別の現実を風刺した社会派ホラーで高い評価を受けているジョーダン・ピールと、『スター・ウォーズ』シリーズや『ウエストワールド』など大スケールのSFアクションで名高いJ・J・エイブラムスが製作総指揮となりHBO®と夢のタッグ。1950年代の設定ながら” ブラック・ライブズ・マター”を訴える昨今の人種差別反対運動に呼応するかのようなタイムリーな本作は、「いかにアメリカが変わっていないか」 「いかに黒人が抑圧され日々恐怖を抱きながら生きているか」をリアルに描きながら、SF小説から飛び出したようなモンスターやゴースト、魔術 の要素を加えてSFファンタジーホラーというジャンルのエンターテイメント作品に仕上げている。タイトルにもなっているH・P・ラヴクラフトは、幻想 小説・怪奇小説の先駆者のひとりで”クトゥルー神話”の始祖として世界中のファンから愛されている作家だ。彼が生み出した世界観をもとに、本作では多重的に様々な要素を加えながら、人種差別について改めて考えさせるメッセージを新しい形で伝えている。
【配信】
Amazon Prime Videoチャンネル 「スターチャンネルEX -DRAMA & CLASSICS-」
Amazon Prime Video チャンネル上で、スターチャンネルが国内で独占最速放送を行っているHBO®の海外ドラマや独占良作映画が観られるスターチャンネルの配信サービス。
https://www.amazon.co.jp/channels/starch
【放送】
◆字幕版…10月24日(土)より毎週土曜1話ずつ更新
※10月24日(土)~11月22日(日) 第1話無料配信
放送:「BS10 スターチャンネル」
◆【STAR1 字幕版】11/26(木)より 毎週 木曜よる11:00 ほか ※11/22(日)よる7時20分 字幕版 第1話 先行無料放送
◆【STAR3 吹替版】11/30(月)より 毎週 月曜よる10:00 ほか ※11/30(月)第1話は無料放送
ハリウッド大作のTV初放送や圧倒的クオリティのHBO®ドラマを独占最速放送でお届けするBSハイビジョン3チャンネル編成のプレミアムチャンネル。最新映画から、メガヒット作や不朽の名作、話題の海外ドラマまで、充実のラインアップで放送。
http://www.star-ch.jp
※AmazonおよびAmazon Prime VideoはAmazon.com, Inc.またはその関連会社の商標です。
【製作総指揮】ジョーダン・ピール、J・J・エイブラムス、ミシャ・グリーンほか
【監督】ヤン・ドマンジュ(『ベルファスト71』)ほか
【出演】ジョナサン・メジャース(『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』)、ジャーニー・スモレット(『 ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 Birds of Prey』)、コートニー・B・ヴァンス(『アメリカン・クライム・ストーリー/O・J・シンプソン事件』)ほか
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【町山智浩による『ラヴクラフトカントリー 恐怖の旅路』第一話解説一部抜粋】
冒頭の夢のシーンだけで物語の時代設定が分かる
第1話の冒頭からスゴかったですね。朝鮮戦争の戦場から始まるのですが、敵がなんとウォーマシン。あのH・G・ウェルズの「宇宙戦争」に出てくる火 星の歩行戦車とアメリカ軍が戦ってるんです。そこには円盤もいて、こちらはよく見ると1956年の映画『世紀の謎・空飛ぶ円盤地球を襲撃す』でストップモーションの巨匠レイ・ハリーハウゼンが作った円盤。つまり、本作の時代設定がだいたい1956年ぐらいだと分かるわけです。
またこのシーンでは、体が真っ赤なビキニの美女が出てきますが、これは後で説明します。さらに登場するのが大怪獣。体は恐竜みたいですが顔はタ コになっていて、背中にはコウモリのような翼がついています。これはH・P・ラヴクラフトが創造した、宇宙から太古の地球へ飛来し深海に閉じ込めら れている邪神クトゥルーですね。いきなり冒頭から怪獣大行進のようなことになっていますが、その中で「彼は野球が大好きだった」とナレーションが聞こえてきて、クトゥルーの体が真っ二つになります。真っ二つにしたのは野球のバットで、それを持っているのはブルックリン・ドジャースのユニフォームを着た黒人野球選手。背番号は42──1947年に黒人初のメジャーリーガーとなったジャッキー・ロビンソンで、先ほどのナレーションは1950年に作られた映画『ジャッキー・ロビンソン物語』のナレーションなんです。
なんだこれ、メチャクチャだな!と思うと、実はこれ、朝鮮戦争から帰還した主人公アティカスがバスの中で見ている夢でした。その時、彼の膝の上に乗っている本はエドガー・ライス・バローズの「火星のプリンセス」。夢の中に出てきた美女は“火星のプリンセス”デジャー・ソリスというわけです。「火星のプリンセス」は「ターザン」の作者でもあるバローズが1917年に書いた小説で、南北戦争で南軍の兵士だったジョン・カーターが、洞窟の中からなぜか火星にワープしてしまい、火星の美女に愛され英雄になるという物語です。
1950年代の黒人差別の実態が映し出される
このシーンでアティカスの隣に黒人のおばさんが座っていて、カメラがグッと引くと「黒人専用席」という文字が見えます。南北戦争が終わった後もアメリカ南部では1964年まで人種隔離が続いていて、バス、トイレ、レストランは白人用と黒人用に分かれていました。つまり、そうした時代の物語である ことがここで分かります。また、この黒人のおばさんが誰かというと、アメリカ人ならその服を見れば一発で分かります。1955年にモンゴメリというアラバマの町で、白人専用のバスの座席に座って逮捕されたローザ・パークスです。彼女の逮捕を受けてキング牧師がバスボイコット運動を始め、バスにおける人種隔離が撤廃されました。さらにこれをきっかけに公民権運動が起こり、人種隔離や選挙権を剥奪されていた南部での黒人の権利を取り戻すという、黒人の平等のための市民運動が始まるわけですが、それらのきっかけになったのがローザ・パークスなんです。
その後バスがエンコし、白人の乗客は助けられたのにアティカスとパークスはトウモロコシ畑のど真ん中に取り残されます。この時すでに2人は人種隔離が行われているケンタッキー州を出たところで、「ジム・クロウ法はないところだから」と言っています。ジム・クロウ法とは南北戦争後も黒人を差別していた南部各州の差別法のこと。その法を突破した場所なのに黒人は助けられない、つまり南部じゃないのに北部でも差別がひどいということが表現されています。
なお、パークスがバスでアティカスに「何を読んでいるの?」と尋ねますが、彼女はインテリだから「火星のプリンセス」のこともその作者のことも知ってるわ けです。バローズは「ターザン」を書いた人ですが、アフリカに行ったターザンがゴリラの王になるという内容の「ターザン」は白人至上主義的な作品であることが当時でもよく知られていました。ゴリラは明らかにアフリカの人々を意味していて、そこへ行った白人が肉体でも彼らより強くて王になるわけです から。また「火星のプリンセス」の主人公ジョン・カーターも南軍兵士で、バローズには非常に差別的なところがある。そのことをパークスに批判されたア ティカスは「作品と作家は別。バローズが差別的でも小説は面白いんだよ」と言うものの、彼自身も困ってしまいます。
差別的な白人作家のSF小説を好む黒人オタクの葛藤
冒頭の夢でも分かるようにアティカスはSFオタクで、白人の差別主義者が書いたSF小説が好きということに彼自身も困るわけですが、ここが一番重要なところです。ドラマ『ラヴクラフトカントリー 恐怖の旅路』のモチーフになっているのは、ホラー小説の巨匠H・P・ラヴクラフト。実は彼は白人至上主義の差別的な人で、そのことでSFファンやホラーファンを困らせてきました。ラヴクラフトは差別的だから表立って好きと言えないし、読んでることが 恥ずかしい。でも小説は面白いし…と。
ラヴクラフトは1890年から1937年まで生きた人で、宇宙から来た怪物たちが恐怖を巻き起こすという、SFとゴシックホラーを合体させたコズミック・ ホラー(宇宙的恐怖小説)を得意としました。彼は生前にほとんど小説が売れず貧困の中で亡くなりましたが、死後に友達が本をまとめて再評価されるようになりました。後のシーンでアティカスが手に持つ「アウトサイダー」という短編集は、1945年に復刊されラヴクラフトのブームを起こしたもので、『ラヴクラフトカントリー』はそれから10年後の物語。ラヴクラフトは評価されているものの小説の多くが非常に差別的でして、20代の頃には「ニガーの創造」という短い詩を書き残しているのですが、これがひどい内容。昔々、神が地球を創造し、人は神に似せて造られた。その次に動物たちが造られた。人間と動物たちの間があまりにかけ離れていたので、そのギャップを埋めるためにニガーが造られたというひどい詩なんです。そもそもニガーは黒人に対する差別用語だし、そんなひどいものをたくさん書いていたわけです。
そうした差別的な面に対してラヴクラフトのファンも「どうしたものか」と悩んでいた。日本でも「この人のアニメは好きだけど、発言が差別的で尊敬できない」なんてことがよく起こりますよね。そうした葛藤に対する答えとして描かれた小説が、マット・ラフという作家が2016年に書いた「ラヴクラフトカントリー」。これは「ラヴクラフトの小説は好きだけど、彼の差別的なところが気にかかる。だったらそれをうまく合体させて物語にできないか」という発想で生まれました……
※これ以降の解説が気になる方は下記のURLから是非「特設Podcast」をチェック!
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