鬼才ブランドン・クローネンバーグ監督 最新作
アレクサンダー・スカルスガルド×ミア・ゴス 初共演
デヴィッド・クローネンバーグを父に持ち、自身も『アンチヴァイラル』『ポゼッサー』など独特の世界観に溢れた秀作を送り出し、カルト的な人気を誇る鬼才ブランドン・クローネンバーグ監督の長編第3作にして、最大の話題作『インフィニティ・プール』が4月5日(金)より新宿ピカデリー、池袋 HUMAX シネマズ、ヒューマントラストシネマ渋谷他にて全国公開中だ。
この度本作の公開を記念し、ブランドン・クローネンバーグ監督のオンラインQ&A付きの上映が実施された。
取り返しのつかない転落と倒錯、不可思議で恐ろしく、どこかおかしくもある、スタイリッシュでスリリングな唯一無二のクローネンバーグ・ワールドの秘密をたっぷり話してもらった。
裕福な若い夫婦が訪れた美しいリゾート。だが観光地エリアの外では身のケモよだつ奇怪で残酷なルールが存在していた・・・。人気スターであるアレクサンダー・スカルスガルドとミア・ゴスの初共演で話題を呼んだ本作では、2人の熱演&怪演も話題になり全米でスマッシュヒットを記録した。
公開初日に監督がオンラインで登場!
ブランドン・クローネンバーグ監督
オンライン Q&Aイベント・オフィシャルリポート!
封切り初日の夜、満席の場内でスクリーン上に登場したブランドン・クローネンバーグ監督は「日本の皆さん、本日はお越しくださりありがとうございます。日本の皆さんに早く観ていただきたいとずっと思っていました。皆さんとお話しできるのをとてもわくわくしています」と挨拶。
MCを務めた映画ライターのSYOから、「ジェームズは小説家という設定です。そして、本作も元々はあなたが短編小説として物語を書いたことからスタートしているのですよね。僕自身も文章を書く仕事をしているので、劇中でジェームズが“あなたの作品なんて誰も読んでないよ”と言われていて、耐えられなくて落ち込みました(笑)。なぜ小説家の設定にしたのですか?」と質問されると、クロ―ネンバーグ監督は「これは物書きにしか分からないジョークのようなものだと思います。正直に言うと、僕の映画の1作目から2作目までには、8年間もかかっているんです。この間に、本作の脚本を書きました。ジェームズは僕自身ではないですが、1作目『アンチヴァイラル』を世に送り出すことができて以降、当時はなかなか次作が出せない状況になっていました。この気持ちをキャラクターに盛り込んだのです。ですから、SYOさんがジェームズの気持ちが分かると言ってくださってとてもうれしいです」と回答した。
次に質問が客席の方に移ると、来場者からは熱気を孕んだ濃い質問が次々にクロ―ネンバーグ監督に寄せられた。
まず、「ジェームズは自分がクローンにされるシーンで、口を無理やり開けられます。『アンチヴァイラル』でも主人公が口を通気口にさせられていましたが、監督は口にフェティシズムを感じているのですか?ボディパーツを変容されてしまうことで、主導権をコントロールされるような意味がありますか?」という質問に、クロ―ネンバーグ監督は「すべてはフェチと言えると思います。映画は奇抜なアートです。僕が“口を開くことを強いられる”という状況に特にフェティシズムを持っているわけではありませんが、僕はセクシュアリティの変容というものに魅了されていて、それを掘り下げたいと思っているのです」と答えた。
また、「本作では主人公を自身の手や他人を介して殺していきます。それは、マゾヒズムというよりは、自己へのキュートアグレッション(可愛いものを虐めたくなる衝動)だったりするのでしょうか?」と問われると、「皆さんがアレクサンダー(・スカルスガルド)を可愛いと思うかによるかもしれませんね(笑)それは別にして、自分が処刑されるというシーンには2つの見方ができると思います。ジェームズは“こう見られたい”という理想像と、現実の自分の両方を持っています。そして、暴力が自分の内側に向かった時、彼は理想の自分を選び、現実の自分を殺すのです。もうひとつは、死生観を感じさせることだと思います。それは知的な話ではなく、自分を殺すということにマジカルな、五臓六腑で感じるような感覚的なことがキャラクターに起こると思うのです」。
続いて、「前作もそうですが、あなたの作品は自分と他者が他の人の人生をめちゃくちゃにすることの罪悪感と、それに慣れて薄れていく、ある種の万能感を持ってしまうことを描いていると思います。そういった作風に至ったきっかけはありますか?」という質問には、「人間の脳はすごくプラスチックなものだと思いますが、様々な形で解釈できるので、人間の本質や振る舞いはただ一つだと言いたくはないんですね。ただ、暴力に関して言えば、人類史には常に暴力が絡んでいて、我々は獣です。そこにはサディスティックなものがあります。僕が興味を持っているのは、表向きの礼節が崩れ落ちたときに、暴力がどう発現するのか、ふるまいがどうなっていくのか。人間の行動が動物的なふるまいに戻っていくということに興味があります」と返答した。
そして、「登場人物たちは、自分がクローンなのかオリジナルなのかをずっと考えています。それが彼らの行動に影響を及ぼしたのでしょうか?」という質問に、彼は次のように答えた。「自分がクローンかオリジナルか、彼ら自身が知ることは不可能ですね。ですが映画の観点でいえば、どちらでもいいといえる作品になっていると思います。よくあるクローンの物語にはしたくなく、クローンはあくまでストーリーを語る上でのひとつのツールです。描きたかった題材は、アイデンティティと人間の本質です。西洋の哲学者はずいぶん前から、人間が人間であることについて研究してきました。継続する時間の中で、人間であり続けるということとは?行きつくところは、何もないと思います。社会的、個人的なアイデンティティは集約的な、私たちが分かち合っている物語の要素でしかありません。それが人間を人間たらしめている核ではないと思います。ジョークではないですが、自分が誰であるかということは、ポイントではないのだということを描いています」
「お面がすごく怖くて、最初のシーンでぎょっとしました。人の顔が崩れたようになっているのは意味がありますか?」と聞かれると、「仮面の顔が崩れていること自体には意味はありません。カーニバルや東欧のお祭りで、人は仮面をつけることで、2つ目のアイデンティティを得て、普段はできないことができてしまいます。本作の仮面はシンボリズムとして使ったのではなく、こういった伝統にのっとっています。特殊なリ・トルカ島ならではの文化と伝統的な文化を表したいと思い、デザインはリチャード・ラーフォーストにお願いしました。彼はコンセプトアーティストで、映画作家で、漫画アーティストでもあります。映画『武器人間』の監督として知られていますね。最初から、彼は本作の視覚的なイメージの中心人物になると感じていましたし、本当に素晴らしいデザインをしてくれました」と答えた。
劇中に登場する仮面をモチーフにした初日プレゼントをつけた観客たちとクロ―ネンバーグ監督は笑顔で記念撮影し、イベントの最後にSYOから次回作について聞かれたクロ―ネンバーグ監督は「詳しくは言えませんが、2つの企画が動いています。ひとつはスペースホラーです。『イベント・ホライズン』とゲームの「あつまれ どうぶつの森」をミックスしたような作品になりそうです。もうひとつは、J・G・バラ―ドの小説「スーパー・カンヌ」の脚色です」と述べ、「今日は来てくださって本当にありがとうございました!みなさんの質問も本当に素晴らしくて、お話していて楽しくて最高でした。『インフィニティ・プール』が日本で公開されたことは僕にとって本当に重要なことです。改めてお礼を申し上げます」と感謝のメッセージを贈った。
<映画『インフィニティ・プール』ブランドン・クローネンバーグ監督 Q&A 付き上映イベント>
日時:4 月 5 日(金)20:00 の回上映終了後
会場:新宿ピカデリー シアター5(新宿区新宿3丁目 15-15)
登壇者:ブランドン・クローネンバーグ監督(オンライン参加)
M C:SYO(映画ライター)※敬称略
INTRODUCTION
美しい観光地に隠された秘密…
妖しくも不穏❝性癖に刺さる❞リゾート・スリラー
裕福な若い夫婦が訪れた美しいリゾート地“リ・トルカ島”。
その国では、観光客はどんな犯罪を起こしても大金を払えば自分のクローンを作ることができ、そのクローンを身代わりとして死刑に処すことで罪を免れることができるという身の毛もよだつ残酷なルールが存在していた……。
『パラサイト 半地下の家族』の配給会社NEONが製作を手掛けた本作は、クールなルックスで大人気のスカルスガルド兄弟の長男アレクサンダー・スカルスガルド(『ターザン:REBORN』「ビッグ・リトル・ライズ」)とタイ・ウェスト監督作『Pearlパール』で大ブレイクを果たしたミア・ゴスが初共演し、全米スマッシュヒットを記録。
本国ではスランプに陥り徐々に堕落していく作家ジェームズを演じたスカルスガルドの体当たりの熱演と、そんな彼を奇妙で恐ろしい世界に誘う女、ガビ役のミア・ゴスによる怪演が大いに話題になった。
また、『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』のトーマス・クレッチマン、『月影の下で』のクレオパトラ・コールマン、『イヴ・サンローラン』のジャリル・レスペールなど、著名な俳優たちが脇を固めている。
本作は当初、アメリカ映画協会(MPAA)より17歳未満入場禁止映画であるNC-17のレーティングを付けられたがクロ―ネンバーク監督による再編集の結果、北米ではR指定(17歳未満は成人保護者の同伴必須)での公開となった。
取り返しのつかない転落と倒錯。
不可思議で、恐ろしく、どこか可笑しくもある、スタイリッシュでスリリングな唯一無二のクローネンバーグワールドへようこそ!
伊藤潤二、小島秀夫、ヒグチユウコ、竹中直人、
大島依堤亜ら各界クリエイター・著名人らの興奮コメントが到着!
<著名人コメント>※五十音順、敬称略
自分のクローンが処刑されるのを見せられるなんて。ああ、恐ろしい!しかし待てよ?・・処刑されたのは本当にクローンの方か?・・どちらにせよ恐ろしい。
——伊藤潤二(漫画家)
禁忌は厄介なことにすべて魅惑的なのだ。しかし禁忌はやはり踏み込んではならぬ。
この映画でそれを知り、魅惑に浸るだけにしてほしい。
——岩井志麻子(作家)
危ない目に遭いまくったり、自らその危険に身を投じたりする際に“命がいくつあっても足りない”と言いますが、足りないならば足せばいいという発想の転換。ただし足せば足すほど個々の命は軽くなる。そのあたりは監督のお父様が撮られた『クラッシュ』のアンサーだったりするのかな。
——大島依提亜(デザイナー)
オーマイガー!
休暇中の旅行者を地元民が襲う〝辺境の地ホラー〟と思いきや…そうきたか!
中盤で現れるまさかの SF 要素とミア・ゴスのミア・ゴスっぷりを極めた演技に、もうワクワクが止まらない!人間の醜さと狂気を炙り出し、自他の境界線を溶かす〝インフィニティ・プール〟は、血で真っ赤に染まっている!
——こがけん(芸人)
ブランドンは、ジャンル映画の“淵”を破壊し、映画の“インフィニティ・プール”を現出させた。冒頭からラストまで、全く予想がつかない。コークスクリュー・コースターで、嘔吐と依存を繰り返しているようだ。リアルと夢の狭間を往復する酩酊感。何処までも生臭いアナログ感。喪失後に繰り返される、産まれ堕ちる恍惚感。犯罪を犯し、良心を侵し、リプレイする罪悪感。まさに底なし沼から抜け出せないビデオゲームの危うさにも似ている。これは、体と脳の“淵”を取り払った“インフィニティ・ホラー”だ。ブランドンの才能は、“インフィニティ<無限>”だった。
——小島秀夫(ゲームクリエイター)
たまらない映画を観てしまった…。ミア・ゴス!また新たな挑戦をしやがったなっ!!ほとばしるミア・ゴスの邪悪ないざない!堕ちろ!堕ちろ!堕ちろ!潰せ!潰せ!叩き潰せ!恐るべきブランドン・クローネンバーグ!すげ〜映画を観てしまった!!最高だぜっ!!!
——竹中直人(俳優・映画監督)
何がまともか。人間としての形を何が証明するのか。 自分が目の前にいたら、私は何と声をかけるだろう。
——玉城ティナ(俳優)
絶対に先が読めない展開!
全てが想像の斜め上をいく!
これぞクローネンバーグの血脈!!
——永江二朗(映画監督『リゾートバイト』)
万人にはお勧めしませんが
万人には勧められない作品のほうがお好きなひとにはぜひ観てほしい。
——ヒグチユウコ(画家)
クローネンバーグの倅が放った新世紀の阿呆宮!まるでセルロイドの味噌汁を吞まされたような目眩がするぜ!
——平山夢明(作家)
白昼夢の幻想か、二日酔いか。これぞ最低最高な地球の歩き方である!
——皆口大地(「ゾゾゾ」「フェイクドキュメンタリーQ」)
美しいリゾート地を陰惨な暴力が覆い尽くす。R18 も納得しかない悪意の極致。父親のクローンではない、ブランドン監督自身の作風を確立している。
——人間食べ食べカエル(人喰いツイッタラー)
インフィニティ・プールがそうであるように、自己とクローンも境目を失くし融和する。
そうしたアイデンティティの危機がなぜか心地よく、
定期的に自分を手放したくなる私にはあのラストシーンがとても羨ましく見えてしまった。
——野水伊織(映画感想屋声優)
STORY
高級リゾート地として知られる孤島を訪れたスランプ中の作家ジェームズは、裕福な資産家の娘である妻のエムとともに、ここでバカンスを楽しみながら新たな作品のインスピレーションを得ようと考えていた。
ある日、彼の小説の大ファンだという女性ガビに話しかけられたジェームズは、彼女とその夫に誘われ一緒に食事をすることに。
意気投合した彼らは、観光客は行かないようにと警告されていた敷地外へとドライブに出かける。
それが悪夢の始まりになるとは知らずに……。
<CAST・STAFF>
監督・脚本:ブランドン・クローネンバーグ『アンチヴァイラル』『ポゼッサー』 /製作:NEON
出演:アレクサンダー・スカルスガルド『ターザン:REBORN』、ミア・ゴス『Pearl パール』、
クレオパトラ・コールマン『月影の下で』、トーマス・クレッチマン『タクシー運転手 約束は海を越えて』、
ジャリル・レスペール『イヴ・サンローラン』
2023 年/カナダ・クロアチア・ハンガリー合作 / 英語 / 118 分 / R18+
/ 原題:Infinity Pool / 日本語字幕:城誠子 / 配給:トランスフォーマー
© 2022 Infinity (FFP) Movie Canada Inc., Infinity Squared KFT, Cetiri Film d.o.o. All Rights Reserved.
公式 HP:https://transformer.co.jp/m/infinitypool/
X:https://twitter.com/infinitypool_jp Instagram:https://www.instagram.com/transformer_inc/
4 月 5 日(金)新宿ピカデリー、池袋 HUMAX シネマズ、
ヒューマントラストシネマ渋谷他絶賛公開中!
【関連記事】