水木しげる生誕 100 周年記念作品
運命の出会いが血塗られた扉を開く―
55年に渡って愛され、もはやカルチャーとなった国民的アニメ「ゲゲゲの鬼太郎」。子供から大人まで人々が、妖怪や怪奇な現象に怯えながらも、一度は友達になりたいと願った鬼太郎とその仲間たち。2023年、水木しげる生誕100周年記念作品として、初めて語られる鬼太郎の父たちの物語―かつての目玉おやじと水木の出会い、そして鬼太郎誕生へと続く二人の運命を描く、映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』が11月17日(金)より公開された。(配給:東映)
初週では、『ゴジラ-1.0』に次ぐ、興行成績2位を達成。この映画の大ヒットを記念して、「cowai」では古賀豪監督への単独インタビューを敢行した。
監督は『劇場版 ゲゲゲの鬼太郎 日本爆裂!!』の監督を務めた古賀豪、脚本はTVアニメ「マクロスF」などで知られる吉野弘幸、キャラクターデザインを『シン・エヴァンゲリオン劇場版』で副監督を務めた谷田部透湖が担当。
キャスト陣は、TVアニメ「ゲゲゲの鬼太郎」(第6期)で鬼太郎を演じた沢城みゆき、目玉おやじを演じた野沢雅⼦に加え、おなじみのあのキャラクターに似た謎の少年役として古川登志夫のほか、かつての目玉おやじを演じるのは「鬼滅の刃」で鬼舞辻無惨を演じ日本中を震えあがらせた関俊彦。今回、初めて「ゲゲゲの鬼太郎」シリーズに参加する関は「まさか、鬼太郎の父で参加することができるとは!この仕事をやっていて良かった」とコメントを寄せている。水木を演じるのは「テニスの王子様」シリーズの忍足侑士役の木内秀信。関と同じく本シリーズ作品への参加は初めてとなるが「水木しげる先生生誕100周年の記念に制作される映画だと知り、そのような大きな節目の作品に、大役を演じさせて頂くことに背筋が伸びる思い」とコメントをしている。さらに種﨑敦美、小林由美子、白鳥哲、飛田展男、中井和哉、沢海陽子、山路和弘、皆口裕子、釘宮理恵、石田彰、庄司宇芽香、松風雅也、といった、豪華声優陣の出演も発表されている。
『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』大ヒット記念!
古賀豪監督単独インタビュー
「一番重視したのは、大人向けのホラーとして作ること」
――『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』、とても面白かったです。ホラーファン、映画ファンも楽しめるクオリティの高いホラー映画であると同時に、最終的には鬼太郎の映画としても、美しくまとまっており、非常に見ごたえがある作品と思いました。
古賀豪監督: ありがとうございます。
――監督はテレビの第六期や映画版の前作『劇場版 ゲゲゲの鬼太郎 日本爆裂!!』なども手掛けられています。そんな中で、従来の鬼太郎の映画とも異なる本作はどのような経緯から生まれたのでしょうか。
監督: まず僕がこの企画に参加した時点で、すでに決まっていたのは、「鬼太郎の誕生を描く」という映画のタイトルと、「大人向けのホラーとして作る」ということですね。あとは鬼太郎の父や、(原作に登場する、作者の分身的な)水木のキャラを出すこと。そして「水木先生の生誕100周年記念作品」として公開するということでした。
その中で、個人的に一番ウェイトが大きかったのは「大人向けのホラーとして作る」ということですね。
――鬼太郎で本格ホラーを作る、というのは、確かに今までにない試みと思います。
監督: 映画として、従来とは違う、新たなお客さんに来てもらいたいという思いがあって、そこに鬼太郎の持つポテンシャルがうまく応えられたら、面白いんじゃないかと。そもそも、「ゲゲゲの鬼太郎」というのは、「少年マガジン」(講談社)に子供向けの漫画として描かれたもので、それをテレビアニメ化したものです。それを改めて今、貸本時代の「墓場鬼太郎」のイメージに沿って、「大人向けのホラー」として鬼太郎を再構築するのはある種の新しい挑戦になるだろうと思いました。
――特に前半は、『犬神家の一族』のような、横溝正史シリーズを思わせる、おどろおどろしい世界観で、大人も十分怖いですね。鬼太郎でここまで本格的なホラーにこだわるのは、作り手にとっても相当な覚悟があったかと思います。
監督: 最初に鬼太郎で大人向けホラーをやるとしたら、それはスラッシャー物とかスプラッターではないだろうって話になって。その際、プロデューサーが「一番怖かった映画は『八つ墓村』だ」と言いまして。いわゆる閉鎖的な因習の村で、血縁が絡んでドロドロとした人間関係が浮き彫りになる、みたいな、ああいうのが結局一番怖いという話になった。そうした世界と、鬼太郎って意外と親和性があるような気がしました。
監督: 映画の昭和31年という設定も、(原作が始まった)時代の独特の雰囲気を生かして、そこに風格みたいなのを持たせたら、新しい恐ろしさを生み出せるんじゃないか。そういうものを追求してみました。最近、レトロな昭和30年代ブームがあって、あの時代は「みんな優しかった」みたいに言われるんですけど、実際、あの時代の映画を見ると、全然そんなことはなくて(笑)、戦後の混乱期から立ち上がっていく中で、弱いものはどんどん削ぎ落とされていくっていう、ある種の恐ろしかった時代の雰囲気を反映させていますね。
――事前の噂では、今回の映画の原作は、貸本時代の「墓場鬼太郎」の「幽霊一家」をモチーフにされていると耳にしましたが、実際には、“帝国血液銀行のエピソード”や“水木が調査に行く”という部分が主に引用され、それ以外はほぼ映画のオリジナルのストーリーになっています。
監督: 仰る通り、今回の脚本は、「幽霊一家」の前の部分、いわゆる前日譚がメインとなっていて、それは水木先生の漫画では描かれていません。もちろん水木先生の漫画はかなり読み込み、特に今回は大人向けなので、例えば水木先生の「昭和史」や自伝なども参考にしています。当然、連載開始当時の若い水木先生をモデルにして、水木先生が伝えたかったことはこういうことじゃないか?というのを、脚本家と話し合い、作品に込めていきました。
監督: それでも難しかったのは、最終的に「幽霊一家」につながるお話にしなくてはいけないこと。水木と鬼太郎の父とのバディものとして、猟奇的な事件を解いていきながらも、いかにして「鬼太郎誕生の物語」に繋げていくか。それが作品のテーマにも関わるところですね。
――同時に、先ほどもお話に出た猟奇的なホラー・ミステリーの要素もあります。ポスターや予告編も大人向けを強調されていますね。
監督: 正直、大人のお客さんが劇場で切符を買う時、やっぱ「鬼太郎1枚」って、ちょっと恥ずかしくて言いづらいと思うんですね(笑)。
でも、中身はホラー好きや映画ファンにも十分楽しんでもらえるような作品にしたつもりなので、恥ずかしさがないビジュアルを全面に押し出したんです。「子供向けじゃないな」って思ってもらえるように。たしかに会社から「大人向け」のオーダーがあったとはいえ、僕自身もアニメで本格的なホラーをやってみたかったので、そこは願ったり叶ったりで、趣味と実益を兼ねて楽しかったですね。
「鬼太郎のアニメ初のPG12指定。
大人の観客相手に、画でどこまで怖さを表現できるか」
――大人向けというと、木のてっぺんに死体が突き刺さるとか、目玉を食いちぎられるとか、けっこうグロテスクな描写も印象に残ります。
監督: まあ、鬼太郎のアニメ初の「PG12」(映倫指定※保護者の助言・指導で12歳未満も鑑賞可)ですから、そうした部分は手を緩めていません。確かに今回の企画を最初立ち上げる時に、「アニメでホラーって難しいんじゃないか」「もうちょっと冒険ものに寄せた方がいいんじゃないか」みたいな声はあったんです。でも、そこは「大人の観客相手に、画でどこまで怖さを表現できるか」という課題を設けて、それをいかに克服できるか、常に考えていました。それでも、あくまで「鬼太郎」なので、じゃあ、なんでもグロテスクな描写ばかりをバンバン出せばいいって話でもないわけですから、その辺りのバランスのとり方が非常に難しく、とにかく「知恵を絞ってやりましょう」という感じでしたね。
――人間的な恐ろしさも際立っていました。
監督: 特に前半は登場人物がいっぱい出てくるものの、これは子供向けじゃないから、そこまで一人一人丁寧に説明はしていないんです。でも、一見、普通の人に見えるけど、実は裏に闇を抱えていて、その闇の根元がどこにあるのか、そういう部分が明かされた時の恐ろしさ…みたいなものはしっかり見せたいなと思いました。
――ストーリーも二転三転しながら、多彩な見せ場があって、とても見ごたえはあるんですけど、脚本は時間がかかったんでしょうか。
監督: (脚本は)すごい苦労しましたね。ほとんど村の中で起きる話なので、どう持たせるのか、村のデザインの設計段階から、(脚本のことを)意識して頑張りました。脚本作りはライターさんと丁々発止をやりながら、1年ぐらいかかったのかな。作っている時はもう五里霧中で、試行錯誤の連続でした。ただ、中途半端になるより、やれるやることはアクセル踏み込んで全力でやっちゃおうという思いがありました。うちの会社自体、あまり大人向けでこういう映画を作ったことなかったんで(笑)、なんか今までの子供向けの基準だと「ここでやめとこう」っていう部分はあったんですけど、今回は「いや、もっと先に行っちゃおう」って。
「音でびっくりさせるホラーではなく、
しみじみと静かに染みてくる恐ろしさを」
――ホラーのせいかもしれませんが、音へのこだわりも強く感じられました。
監督: 今回は(劇場の音響が)5.1チャンネルで、お客さんの周囲から聞こえてくるという特性を生かすと、やっぱり音でびっくりさせるホラーではなく、逆にしみじみと静かに染みてくる恐ろしさみたいなものを、客席を包み込むような音で表現できるといいなと思ったんですね。あと、舞台がすごく田舎の山の中なんで、夜の木々のざわめきとか、鳥や虫、水の音みたいな、昔の日本の自然に潜んでいる、静かな音の怖さが出せるといいなと思いました。
――ほかに監督がこだわった部分はありますか。
監督: 音楽ですかね。内容はドロドロとしてるんですけど、音楽は美しく作ってほしいってオーダーしました。おどろおどろしい恐ろしさに、繊細で美しい音がかかるみたいな、ギャップでしょうか。私自身、そういうスタイルが好きなんです。
――監督自身はホラー映画ではどんな作品が好きなんですか。
監督: 日本的な怪談映画も好きなんですが、ホラーとなると『エルム街の悪夢』とか(笑)。夢うつつに、夢みたいな所で恐ろしいことが起きるものが好きですね。
――アフレコはいかがでしたか。
監督: やはり鬼太郎の父役の関(俊彦)さん。誰もが知っている目玉おやじなのに、誰も知らない若い頃っていうのはすごくプレッシャーがあったと思うんですけど、そこはもう関さんの声であればやってくれると、あの声のカリスマ性にお客さんも絶対に納得してくれると自信がありました。まだ鬼太郎が生まれる前で、父親になってないので、そこまで目玉おやじらしい芝居は意識しなくても、あくまで一人の人間として、まあ人間じゃないんですけど(笑)、観客が共感できる普通の男としてお芝居していただきました。
監督: 水木役の木内(秀信)さんも美しい声の方なんですが、ここは対比として、もっと非常に人間っぽい芝居、例えば息遣いみたいなものを入れて、人間らしい弱さだったり、思いの強さだったりを表現してもらいました。お二人の声のおかげで、とてもバランスの取れた、魅力あるバディになったんじゃないかなと思います。
――では、最後にメッセージをお願いします。
監督: 昭和の昔の時代を舞台にした、すごく恐ろしい話ではあるんですけど、やっぱり今の令和にも通じる部分も少なからずあると思います。そこはフックとして混ぜ込んでいますので、今のお客さんが見てもちょっと胸に刺さるものがある映画になってると思います。ぜひ劇場でご覧になって、愛していただけると嬉しいなと思います。
――ありがとうございました。
【ストーリー】
廃墟となっているかつての哭倉村に足を踏み入れた鬼太郎と目玉おやじ。
目玉おやじは、70年前にこの村で起こった出来事を想い出していた。
あの男との出会い、そして二人が立ち向かった運命について…
昭和31年―日本の政財界を裏で牛耳る龍賀一族によって支配されていた哭倉村。
血液銀行に勤める水木は当主・時貞の死の弔いを建前に野心と密命を背負い、また鬼太郎の父は妻を探すために、それぞれ村へと足を踏み入れた。
龍賀一族では、時貞の跡継ぎについて醜い争いが始まっていた。
そんな中、村の神社にて一族の一人が惨殺される。
それは恐ろしい怪奇の連鎖の本当の始まりだった。
鬼太郎の父たちの出会いと運命、圧倒的絶望の中で二人が見たものはー
【作品概要】
【タイトル】 鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎
【公開表記】11月17日(金)公開
【コピーライト】 ©映画「鬼太郎誕生ゲゲゲの謎」製作委員会
【原作】 水木しげる
【キャスト】 関俊彦 木内秀信 種﨑敦美 小林由美子 白鳥哲 飛田展男 中井和哉 沢海陽子 山路和弘 皆口裕子 釘宮理恵 石田彰 古川登志夫 / 沢城みゆき 庄司宇芽香 松風雅也 / 野沢雅子
【スタッフ】 監督:古賀豪/脚本:吉野弘幸/キャラクターデザイン:谷田部透湖/美術監督:市岡茉衣
色彩設計:横山さよ子/撮影監督:石山智之/製作担当:澤守洸 堀越圭文
【配給】 東映
【制作】 東映アニメーション
【作品公式サイト・SNS】
■映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』公式HP:https://kitaro-tanjo.com/
■映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』X:@kitaroanime50th
11 月 17 日(金)より絶賛公開中
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