『ACIDE/アシッド』公開記念!ジュスト・フィリッポ監督 単独インタビュー!「もちろん『魔鬼雨』は見ていますよ(笑)」

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⼈も、家も、街も、溶ける
※この夏は、死の酸性⾬にご注意※


死の酸性雨が降り出した世界を舞台に、極限状況に陥った人々の決死の脱出劇を描く極限サバイバル・スリラー『ACIDE/アシッド』が8月30日(金)TOHOシネマズ シャンテ他にて全国公開中だ。
第76回カンヌ国際映画祭ミッドナイトスクリーニング部門やシッチェス・カタロニア国際映画祭に出品され、2024年セザール賞視覚効果賞にノミネートされた黙示録的な衝撃作が日本上陸。

この度、本作を記念して、「cowai」ではジュスト・フィリッポ監督への単独インタビューを敢行。
『屋敷女』の特殊メイクアップアーティストらが参加した、酸性雨で顔が溶ける特殊メイクの裏側や、貴重な撮影秘話を披露してくれた。

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「もちろん『魔鬼雨』は見ていますよ(笑)」
『ACIDE/アシッド』公開記念!

ジュスト・フィリッポ監督 単独インタビュー!



ーー『ACIDE/アシッド』大変面白かったです。『群がり』も素晴らしかったですが、ジャンルとしては、同じディザスター(災害)ムービーとはいえ、なぜ「イナゴ」の次に「酸性雨」をテーマに選んだのでしょうか。

フィリッポ監督 実は、本作を撮る前に、同じタイトルの短編を撮っていて、その脚本自体は『群がり』を撮る前に書き上げていました。だから『ACIDE/アシッド』こそ、念願の企画だったのです。
当時から、私は、“空から舞い降りてくる脅威”にすごく興味があって、それをどう映像化しようか、プロジェクトを頭の中に描いてきました。

© BONNE PIOCHE CINÉMA, PATHÉ FILMS, FRANCE 3 CINEMA, CANÉO FILMS ‒ 2023



でも、それはE.T.やエイリアンのような、地球外から訪れた未知の存在ではありません。
イナゴも雨も元々は身近な存在だったはずが、人間によって変異を遂げ、脅威となってしまった。それを描きたかった。最も大切なのは、それが“人間によって生み出された脅威”であることです。

ーー『群がり』の前から脚本も書いていたということは、『ACIDE/アシッド』の方を先に撮りたかったのでしょうか。

フィリッポ監督 違います。理由として、酸性雨が人間社会を破滅に導く『ACIDE/アシッド』は、技術的にもスケール的にもすごくハードルが高かったからです。何より予算がかかります。だから『群がり』の前に撮ることは不可能でした。まずは比較的低予算で撮れる『群がり』で監督の仕事をマスターし、イメージを具現化するための技術的な課題を克服して、結果を出した上で、本丸の『ACIDE/アシッド』のプロジェクトに取り掛かりました。
良くも悪くも、『群がり』は『ACIDE/アシッド』を撮るための練習だった面があります。

ーー満を持して撮影された『ACIDE/アシッド』は、ハリウッドのディザスター大作とも異なる、リアルで重厚な恐怖感が漂い、独特の魅力があります。

フィリッポ監督 ハリウッドの作品も好きですが、私の描きたいものとは違います。
近年のディザスター・ムービーは、ヒーローのような主人公が巨大な災害に立ち向かう様を描くことが多いと思いますが、私の作品の場合、主人公さえも、いつ死んでもおかしくない過酷な状況を描き、観客がそれを身近な問題として恐怖を共有し、時に勇気を与えられるものにしたかったのです。

© BONNE PIOCHE CINÉMA, PATHÉ FILMS, FRANCE 3 CINEMA, CANÉO FILMS ‒ 2023



ーー映画前半の、酸性雨を浴びて路上でパニックになる群衆を、車の中から目撃する主人公たちの視点を通して、観客は間近で恐怖を体感するわけですね。

フィリッポ監督 そうです。目の前の脅威によって、ありふれた日常がいとも簡単に崩壊し、人間が滅んでいく様をリアルに表現したかった。かなり恐怖をあおるシーンですが、観客が我がことのように反応してくれることが狙いです。

ーー酸性雨など、雨が恐怖の対象となるホラーやディザスター・ムービーは過去にもありましたが、参考にされましたか。例えば、“雨で人が溶ける”作品といえば、ホラーファンなら、『魔鬼雨』を思い出す人もいますが。



フィリッポ監督 もちろん『魔鬼雨』は見ていますよ(笑)。
他にも、多くのディザスター・ムービーや、近いテーマを扱った作品はリサーチしてチェックしました。同じことを避けるためにもね。
でも意外と、ハリウッドの大作よりも、どちらかといえば低予算の、悪く言えばB級映画の方が参考になって、インスピレーションを刺激されましたね。

© BONNE PIOCHE CINÉMA, PATHÉ FILMS, FRANCE 3 CINEMA, CANÉO FILMS ‒ 2023








『屋敷女』などを手掛けた名だたる特殊メイアップアーティストたちが参加してくれた。
橋の崩落シーンでは、350人のエキストラ俳優に特殊メイクを施したんだ。


© BONNE PIOCHE CINÉMA, PATHÉ FILMS, FRANCE 3 CINEMA, CANÉO FILMS ‒ 2023



ーー前半では、人々が路上で初めて酸性雨の脅威に見舞われるパニックシーンがまず印象に残ります。どのように撮影されたのでしょうか。こだわった点があれば教えて下さい。

フィリッポ監督 撮影現場で一番こだわったのは、本物の“雨”を降らせたことです。もちろん酸性雨ではないですが、CGは最小限にして、できる限り、スタッフが放水で大量の雨を現場に降らせました。

ーーCGではなく、本物の雨を降らせた理由は?

フィリッポ監督 やはり臨場感が格段に違います。そして逃げ惑う人々の芝居=リアクションにも生々しい迫力が引き出されました。

© BONNE PIOCHE CINÉMA, PATHÉ FILMS, FRANCE 3 CINEMA, CANÉO FILMS ‒ 2023



ーー人々の顔や皮膚が酸性雨で次々と焼けただれ、おぞましい形相と化していく様も圧巻でしたが、あれは特殊メイクですか?それともCGですか。

フィリッポ監督 全体の80%が現場でのエフェクト(特殊メイク)です。一人一人に丁寧にメイクを施しています。残りの20%はCGで補正しています。

ーー群衆に一人ずつ特殊メイクをしていたら準備だけでも大変でしたね。

フィリッポ監督 前半の路上のパニックシーンは、比較的短いシーンですが、(撮影に)丸二日かけています。

ーー特殊メイクアップアーティストはどんな方が?

フィリッポ監督 まず、ハリウッドでも活躍されているピエール・オリビエ・ペルサン(『ゲーム・オブ・スローンズ』の特殊メイクアップアーティスト。本作ではスーパーバイザー兼任)と出会ったことが大きかったと思います。他にも『屋敷女』のダフニー・ボーリューら、名だたる特殊メイクアップアーティストがこの作品のために集まり、全力で取り組んでもらいました。彼らの頑張り無しでは作品は成立しませんでした。



フィリッポ監督 そして現場では、本物の大量の雨を降らせて、凝った特殊メイクを群衆に施すことで、俳優たちが2000%のエネルギーで迫真の演技を披露してくれました。おかげで斬新かつリアルな恐怖シーンを撮ることができました。

ーー酸性雨で顔が溶けるゴアシーンも強烈ですが、静寂の中に響く雨音など、じわじわと恐怖を高めるサスペンス演出も秀逸でした。

フィリッポ監督 映画では、主人公たちが車に乗って移動することで、八方ふさがりの状況下でも、物語をスリリングに進めることができました。
同時に、車内という、閉ざされた空間を最大に活かして、車外から聞こえ続ける雨音から、酸性雨の静かな攻撃性を敏感に感じ取れるように工夫しています。


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ーー単に人や物を溶かすというストレートな恐怖描写だけではなく、あえて間接的な描写だけで酸性雨のモンスター的な存在感を表現されているのですね。

フィリッポ監督 そうです。空を見上げて、遠くに広がる異様な雲(殺人雲)が、少しずつ近づいてくるのも同様です。
この映画における“雨”とは非常に重苦しい存在ではあるけど、さらにそれを動かすことによって、より複雑で予測できない脅威へと進化していきます。ぽつりぽつりと落ちる小さな雨粒が、やがて車や家、人間をも侵食し、すべてを崩壊と破滅に導く様に、観客は震え上がるのです。

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ーー雨以外では、群衆であふれる橋が崩落し、酸性雨水で満たされた“殺人川”に人々が投げ出される地獄絵図のシーンも凄かった。

フィリッポ監督 このシーンはベルギーで5日間かけて撮影しました。特に雨の多い時期だったんですけど、設定上は晴天だったので、撮影にあたって「とにかく雨が降らないで」と祈っていました。すると奇跡のような晴天が続いて、無事イメージ通りに撮り終えることができました。非常に幸運でしたね。
あと、このシーンを撮影するにあたって、350人のエキストラ俳優に特殊メイクを施しました。その上で長時間に渡り、パニックに陥る群衆を繰り返し演じてもらい、その姿はカオスなエネルギーに満ちていました。まさに彼らは、実際の気候変動の脅威に襲われた人々の絶望感や恐ろしさを見事に表現していたのです。彼らの体を張った熱演が、私のイマジネーションを刺激し、作品世界により深みを持たせることにも役立ちました。



ーー最後に日本の観客に向けてメッセージを。

フィリッポ監督 『ACIDE/アシッド』は映画館で観る価値のある作品だと自負しています。不気味な雨音などの環境音は、劇場の立体的な大音響で、よりリアルに感じられるよう工夫されていますし、特殊メイクは細部までこだわり抜き、俳優たちの熱演と相まって、大きなスクリーンでこそ恐怖感や絶望感が際立ちます。予期せぬ自然の脅威に打ちのめされ、破滅へと突き進む人類に対して、私たちが今一度、社会を見つめ直すきっかけになれば。本作はジャンル映画ですが、地球温暖化や労働社会の困難など、私たちが生きている時代を完全に捉えています。現実的なSF映画とでも言えるでしょうね。ぜひ映画館でご覧ください。

ーーありがとうございました。







清水崇・平山夢明・ヒグチユウコ・相沢梨紗他
ホラー界隈豪華著名人コメント

© BONNE PIOCHE CINÉMA, PATHÉ FILMS, FRANCE 3 CINEMA, CANÉO FILMS ‒ 2023


幽霊、恐竜、モンスター、エイリアンもゾンビも
登場せぬまま襲い来る“恐怖”………
家に染み入る雨の情景だけでこんなに怖いとは!! 

─清水崇(映画監督)


人間なんて金魚すくいのポイ並みに穴だらけにされちゃうんだぜ!

─平山夢明(作家)



さらに、ホラー界隈の超豪華な著名人の面々からも『ACIDE/アシッド』への悲鳴のようなコメントが届いた。『呪怨』『あのコはだぁれ?』のJホラーの巨匠、清水崇監督は「私たちが生み出した“自然の恐怖”は、非情なリアリティで気持ちを鷲掴みにし、“人の繋がり”を浮き彫りにしていく。 幽霊、恐竜、モンスター、エイリアンもゾンビも登場せぬまま襲い来る“恐怖”………家に染み入る雨の情景だけでこんなに怖いとは!!」と、恐怖の声を上げる。作家の平山夢明は「とうとう怒れる星は空から人類を殺しにかかってくるようになっちまった!超高濃度の酸性雨は川も大地も地獄の味噌汁に変えちまう。人間なんて金魚すくいのポイ並みに穴だらけにされちゃうんだぜ!」と平山節炸裂で本作を称賛。画家のヒグチユウコは「死の雨の登場の予兆ともなる雨雲が何とも不安な気持ちにさせてくれるのだが、同時に美しくもある。自然災害への私たちの無力さと同時に、地球上の生き物の1つでしかないことを再認識させられた。 」 と、不穏な天気模様の映像美についても絶賛した。 (コメント全文は下記にございます) この夏、“死の酸性雨“が世界を震撼させるサバイバル・スリラー『ACIDE/アシッド』の続報にぜひ注目したい。






著名人コメント全文(敬称略・五十音順)



地球が生態系の限界を目前に、人類への最終手段を行使した! 
全てを溶かす超高濃度酸性雨が降り注ぐ世界で生き抜こうとする人々の等身大の姿に、 
どうすれば人間らしく生きられるのかを考えさせられた。 


相沢梨紗(でんぱ組.inc) 



***



口をアングリ開けたまま100分が過ぎました。 
リアリズムの勝利。 
近未来ディストピアものなのにですよ! 


荒木伸二(映画監督) 



*** 



私たちが生み出した“自然の恐怖”は、非情なリアリティで気持ちを鷲掴みにし、“人の繋がり”を浮き彫りにしていく。
幽霊、恐竜、モンスター、エイリアンもゾンビも登場せぬまま襲い来る“恐怖”………家に染み入る雨の情景だけでこんなに怖いとは!! 


清水崇(映画監督『呪怨』『あのコはだぁれ?』) 



*** 



死の雨の登場の予兆ともなる雨雲が何とも不安な気持ちにさせてくれるのだが、同時に美しくもある。
自然災害への私たちの無力さと同時に、地球上の生き物の1つでしかないことを再認識させられた。 


ヒグチユウコ(画家) 


*** 



とうとう怒れる星は空から人類を殺しにかかってくるようになっちまった! 
超高濃度の酸性雨は川も大地も地獄の味噌汁に変えちまう。人間なんて金魚すくいのポイ並みに穴だらけにされちゃうんだぜ!


平山夢明(作家)







INTRODUCTION
致死率 100%の高濃度酸性雨が降り注ぐ、世界の終わり。
息をつく間も許さない、極限のサバイバル・スリラー


© BONNE PIOCHE CINÉMA, PATHÉ FILMS, FRANCE 3 CINEMA, CANÉO FILMS ‒ 2023



もしも、ごく平凡な日常生活を営む私たちのもとに、空から硫酸のような雨が降ってきたら……。

人、家、街、すべてを溶かしていく、超高濃度の死の酸性雨が降り出した世界を舞台に、極限状況に陥った人々のこの世の終わりからの脱出劇を描く。

監督は、イナゴの狂気を描いたホラー、Netflix映画『群がり』(21)で長編デビューを果たした新鋭ジュスト・フィリッポ。
2作目となる『ACIDE/アシッド』では、ダイナミックなワイドショットと視覚効果を駆使して迫り来る“殺人雲”から降り注ぎ、人間や動物はもちろんのこと、車や建造物までも溶かす“死の酸性雨”の恐ろしさを生々しく映し出す。
電力や水道などの公共インフラがたちまち無効化され、市民が身を隠せる場所すら失っていく壮絶なストーリー展開に戦慄せずにいられない。

キャストには、フランス映画界の実力派俳優が集結。主人公ミシャルを演じるのは、『冬時間のパリ』(18)『ベル・エポックでもう一度』(19)など数々の話題作に出演し、監督としても評価の高いギヨーム・カネ。
そして2017年の『若い女』でセザール賞有望若手女優賞にノミネートされ、『シンプルな情熱』(20)におけるセンセーショナルな演技でも注目されたレティシア・ドッシュが、ミシャルの妻エリースを熱演している。






STORY
あらゆるものを浸食し、どこまでも襲ってくる。
想像を絶する死の雨から、あなたは逃げられるか?


© BONNE PIOCHE CINÉMA, PATHÉ FILMS, FRANCE 3 CINEMA, CANÉO FILMS ‒ 2023



異常な猛暑に見舞われたフランスの上空に不気味な雲が現れる。
それは南米に壊滅的な被害をもたらした酸性雨を降らせる危険な雲だった。
北部の地方都市に住む中年男性ミシャルと元妻エリースは、寄宿学校に預けていた十代の娘セルマをからくも救出するが、あらゆるものを焼き尽くすように溶かす強酸の雨は、容赦なく大勢の市民の命を奪っていく。
フランス全土が大混乱に陥るなか、安全な避難場所を探し求めてあてどなく歩き続ける親子の行く手には凄まじい群衆パニックと、あらゆるものを溶かす高濃度酸性雨のさらなる恐怖が待ち受けていた……。





監督・脚本:ジュスト・フィリッポ

ギヨーム・カネ、レティシア・ドッシュ、ペイシェンス・ミュンヘンバッハ

2023年/フランス/100分/フランス語/4K/シネスコ/カラー/5.1ch/原題:ACIDE/日本語字幕:星加久実/配給:ロングライド

公式サイト:longride.jp/acide/

© BONNE PIOCHE CINÉMA, PATHÉ FILMS, FRANCE 3 CINEMA, CANÉO FILMS – 2023




8 月 30 日(金)TOHO シネマズ シャンテ他全国公開







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