第76回ベルリン国際映画祭コンペティション部門選出
神秘の森で産まれた我が子、そこから始まる悪夢…
『ハッチング -孵化-』のハンナ・ベルイホルム監督最新作『NIGHTBORN』が邦題を『ナイトボーン -夜哭-』とし、2026年8月28日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開中だ。
北米最大級のジャンル映画祭、第30回 ファンタジア国際映画祭にて最優秀作品賞&最優秀演技賞(セイディ・ハーラ)をW受賞した注目作。
「cowai」ではハンナ・ベルイホルム監督に単独インタビューを敢行。特殊造形、SFXを駆使した、おぞましい赤ちゃんの制作・撮影の舞台裏などを語ってもらった。

【PR】
ホラー映画祭の最高峰、シッチェス国際映画祭でも話題を集めた新作ホラーアニメ映画『ナイトメア・バグズ』の応援クラウドファンディングが、世界最大規模のKICKSTARTERでスタート!

【本予告】
その産声は、祝福ではなく”災い”。
北欧・フィンランドが産んだ異才ハンナ・ベルイホルム監督(『ハッチング-孵化-』)最新作
子供を望む新婚夫婦サーガとジョンは、理想の子育てを夢見て、サーガの故郷であるフィンランドの森深い田舎町へと移り住む。北欧神話の気配が今なお息づく、神秘的な森に抱かれながら結ばれた二人は、やがて待望の子供を授かる。愛する夫と我が子との幸せな暮らし――サーガは、その未来を信じて疑わなかった。 あの産声を聞くまでは――。
「この子は、“何かがおかしい”」生まれた我が子に拭いきれない違和感を覚えるサーガ。不安は次第に恐怖へと姿を変え、やがて狂気へと暴走していく。そしてサーガが辿り着く、恐るべき真実とは――。
第76回 ベルリン国際映画祭 コンペティション部門でワールドプレミア上映されるや、「何一つとして型にはまらない予測不能な展開」、「『ローズマリーの赤ちゃん』の再来」と観客・批評家共に鮮烈な衝撃を与え会場を騒然とさせた『ナイトボーン -夜哭-』。
監督は、『ハッチング-孵化-』で、美しくもおぞましい世界観と独創的なストーリーテリングで世界的注目を集めたハンナ・ベルイホルムが再び静謐な自然と神秘性を背景に、理想の家族という幸福の内側に潜む恐怖と、人間の深層心理をえぐり出す。
母親サーガを鬼気迫る怪演で体現したのは、『コンパートメントNo.6』のセイディ・ハーラ。その夫ジョンを、『ハリー・ポッター』シリーズのルパート・グリントが演じる。
深い森に囲まれた古い屋敷。蝕まれていく母親の精神。そして最後まで闇夜に隠れて明かされない赤ん坊の姿――。母親は、一体何を産んでしまったのか。フィンランドの異才が放つ、戦慄の北欧チャイルド・スリラー。解禁。

『ナイトボーン -夜哭-』公開記念、
フィンランドの異才ハンナ・ベルイホルム監督(『ハッチング -孵化-』)インタビュー。
【CHAPTER1】「出産シーンは黒澤明の『乱』の血しぶきを参考に」

ーー『ナイトボーン -夜哭-』とても面白い作品でした。ホラー映画ファンやダークファンタジーのファンは必ず見るべき作品です。
ハンナ・ベルイホルム監督: ありがとうございます。日本の観客にも受け入れられることを願っています。
ーー“赤ちゃんや出産のホラー”といえば、『ローズマリーの赤ちゃん』や『悪魔の赤ちゃん』『マニトウ』『イレイザーヘッド』『ザ・フライ』『エイリアン』など、ぱっと思いつくだけでも無数にありますが、本作を制作するにあたって、意識された作品があれば教えてください。
ベルイホルム: 残念ながら、映画を制作する際、私は他の映画のことをあまり意識しないようにしています。
もちろん、今出てきた作品はすべて見ていますし、無意識のうちに影響を受けているかもしれません。『ローズマリーの赤ちゃん』や『ザ・フライ』といった作品も素晴らしいですし、尊敬もしていますが、それらを直接的な参考にはしたくなかった。なぜなら、それらの作品はすでに完成された世界観を持っていますから。同じ題材でも、私は私なりの、全く違う作品にしたかったんです。

ベルイホルム: だから実際に映画を作り始める段階では、現実の生活からインスピレーションを得ることが多いですね。具体的には、人々の会話を書き留めたり、自分自身の人生や経験を振り返ったり、あるいは他の母親たちの体験談に耳を傾けたりして、それを映画という形に落とし込んでいったのです。
実は、参考にした映画を一つ挙げるなら、ホラーじゃない、全く毛色の違う作品になりますね。ジャン=ジャック・アノー監督の『子熊物語』です。ロッキー山脈を舞台に、母親を失った子熊と、手負いの大きな熊が交流する物語で、動物の身体性や本能的な側面を巧みにとらえながら、大自然への畏敬の念を色濃く描いています。私にとって一番参考になった作品です。
ーーなるほど。『子熊物語』ですか。ドキュメント・テイストの素晴らしい作品です。
ベルイホルム: そうです。あと、シーンで意識した…というのなら、私が最も憧れる一人、黒澤明監督の、『乱』で、女性の首が斬り落とされ、血が壁に飛び散る、血しぶきの描写ですね。
ーー原田美枝子が演じた「楓の方」が斬られるシーンですね。
ベルイホルム: 私はそのカットを撮影監督に見せて、「出産シーンでも、あんな感じで血が飛び散るようにしたい!」と伝えました(笑)。
ーー『乱』の芸術的に美しいスプラッタ描写は確かに監督の作品にも通じるものがありますね。

【chapter2】
前作『ハッチング』との映像のアプローチの違い
不気味な赤ちゃんの特殊造形には、『ジュラシック・ワールド』の技術が。

ーー日本では『ハッチング―孵化―』を見て、監督のファンになった人、監督に興味を持った人が多いと思います。『ナイトボーン -夜哭-』は、『ハッチング』と似ている部分、違う部分があります。二つの作品で似ている部分は、監督のこだわりたいテーマ、題材なのでしょうか。また、違う部分という意味で、『ナイトボーン』ならではの見どころ、魅力を教えていただけますか。
ベルイホルム: 今回は、『ハッチング -孵化-』(以下『ハッチング』)とは映像的なアプローチを変えたいと思いました。
『ハッチング』は子供の視点で描かれ、母親がある種「悪役」のような存在でしたが、『ナイトボーン -夜哭-』では「もう一つの側面」、つまり「母親側の物語」を語る必要があると感じていました。もちろん『ナイトボーン -夜哭-』は単なる母親の物語というわけではありませんが。
それに、『ハッチング』はソーシャルメディアを題材にしていたため、全体的に無機質で、ある種、殺風景とも言えるようなルック(映像の質感)でした。
それに対して、本作『ナイトボーン -夜哭-』は、森からインスピレーションを得て、森の色調を全面的に取り入れたいと考えました。
テーマの面でも、少なくとも今は親子の関係を描くことに強く惹かれます。親子とは人生で最初に築く関係であり、非常に奥深いものですから、もっと深く掘り下げてみたいと思ったのです。
一方、二つの作品に共通するテーマもあります。
それは「外の世界」と「内なる世界(感情などの)」の対比です。
外の世界には当然、他者が存在します。彼らとどう関わり、どう振る舞うか、あるいは彼らが自分にどう接してくるのか。相手が自分に何を期待し、その期待が自分にどう影響を与えるのか。自分自身の内面にある感情や思考、想像力とはどのようなものか。そうした対比やコントラストは、常に私を惹きつけてやまない要素なのです。
ーーホラー・ファンとしては、赤ちゃんの不気味な演技や撮り方がとても印象に残ります。また、赤ちゃんの動きの演技はどのように作りましたか。イメージボードやイラスト、ストーリーボード(絵コンテ)などはありましたか。
ベルイホルム: 赤ちゃんに関しては、そのすべてにおいて、ある種の「異質さ」を表現したいと考えていました。
見た目が少し奇妙で、体毛が濃かったり、尾てい骨や爪が普通より長かったりするのですが、それらはすべて正常の範囲内ギリギリのところに収めています。実際に、体毛の濃い赤ちゃんや、尾てい骨の長い赤ちゃん、あるいは動物の赤ちゃんの写真などの資料を数多く集めてストーリーボードを作成し、パペットを制作する特殊効果(SFX)チームに見せました。
狙いは、見る者に「居心地の悪さ」を感じさせることでした。奇妙ではあるけれど、完全な異形ではない。ただ、おとぎ話のような「心地よい世界」には決して入り込ませないようにしたかった。そうした得体のしれない不安感をあの赤ちゃんで表現したかったわけです。
制作にはロンドンの素晴らしいSFXチームが参加してくれました。アニマトロニクス・デザイナーのグスタフ・ホーゲンは『ジュラシック・ワールド/炎の王国』や『プロメテウス』などのアニマトロニクスを手掛けた人物です。また、SFXメイクアップ・デザインのコナー・オサリバンは『オデュッセイア』や「ゲーム・オブ・スローンズ」『プライベート・ライアン』『ダークナイト』などの名手です。本作でも力を発揮してくれました。
ーーお二人とも『ハッチング』にも参加されていますね。
赤ちゃんの描写は特殊造形のパペットで作られたのでしょうか。

ベルイホルム: 劇中の赤ちゃんは、パペットと本物の赤ちゃんを組み合わせて表現していますが、実際にはパペット(の使用)がメインでした。本物の赤ちゃんでは不可能な動きが多かったからです。
この作品では、何よりも赤ちゃんに奇妙で独特な動きをさせたかったのです。リアルだけど、常に「何かがおかしい」と感じさせるような。そのため、腕や顔の筋肉などがリモコンで動く、アニマトロニクス(ロボット技術を用いたパペット)を採用しました。
撮影時は5人のパペティア(操演者)が俳優の周囲に配置され、それぞれ異なる位置からパペットを操作しました。想像していただければ分かると思いますが、非常に狭い場所で、互いに重なり合うようにしながら、どう動かすかを模索しました。だから技術的な面も含めて、すべてを綿密に計画する必要がありました。
撮影中は、一つの動作がほんの一瞬しか持続しなかったり、特定の角度からしか機能しなかったりするため、何度もテイクを重ねる必要があったのです。それは非常に専門的な作業でしたが、興味深いものでした。

【CHAPTER3】
赤ちゃんのおぞましい泣き声に隠された秘密
北欧の精霊・怪物トロールが登場する理由

ーーさらに赤ちゃんの泣き声、うめく声もかなりおぞましいです。あの声はどのように作られたのですか。
ベルイホルム: 声に関して何度も検討して、本物の赤ちゃんの声を使うことになったのですが、赤ちゃんの機嫌は予測できませんから、勝手が違いましたね。
あの印象的な「声」を作り上げるプロセスは、とても長い時間がかかりました。
サウンドデザイナーには、男の子のキャラクターにはヘヴィメタル的な「唸(うな)り」や「咆哮(ほうこう)」のような声が欲しいと伝えました。私自身ヘヴィメタルが好きで、マックス・カヴァレラのような声をイメージしていたんです(笑)。そこでサウンドデザイナーが様々な赤ちゃんの泣き声のアーカイブを探し、最も力強く唸(うな)っているような声を選び出しました。そして、その中から「カッコいい唸(うな)り」の部分だけを切り出し、ライオンの赤ちゃんの鳴き声などをブレンドして作り上げていきました。私自身が声を当てている部分も少しあります。
実に様々な音が使われていて、非常に丁寧に構築されています。面白いですよね。
ーーホラー的な見せ場がどれも凝っていて素晴らしいのですが、他にも撮影で大変だったシーンがあったら教えて下さい。
ベルイホルム: 赤ちゃんの操演など、技術的な面も大変でしたが、演出として、全体を覆う、不気味な雰囲気をどう印象的に作り出すかという点にも苦心しました。
例えば、赤ちゃんが少し成長して、彼女の方へ歩み寄ってくるシーンがあります。あれは本当に(撮影が)大変でした。あのシーンでは、本物の赤ちゃんを使っています。しかも3人の赤ちゃんを交代で。でも、思っていたのとは違う方向へ歩いて行ってしまったり、途中でフレームアウトしてしまったり、なかなか思うようには撮らせてくれませんでした。そもそも普通に撮ったら赤ちゃんというのは全く怖い存在ではありません。いかにして自然に不気味な雰囲気を醸し出すのか。赤ちゃんのシーンはすべて重要で、慎重に演出する必要がありましたから、とにかく試行錯誤の連続でした。
ーー『ハッチング』に続き、本作も森を絡めながら、神秘的、スピリチュアル(心霊)的な現象を描いていますが、監督ご自身はスピリチュアルな体験、不可思議な体験はありますか。
ベルイホルム: 実は私、すごく想像力が豊かなんです。子供の頃から、あちこちに「空想の友達」がたくさんいたんですが、それは単なる想像にすぎないことは、ずっと分かっていました。ですから神秘的、心霊的な体験に惹かれる気持ちはありますけど、実際にはそういう経験はないですね。
ーー本作『ナイトボーン -夜哭-』では、北欧の有名な精霊・怪物であるトロールが登場します。監督はトロールの存在について信じていますか。また、トロールを物語に絡めた理由を教えてください。
ベルイホルム: トロールはフィンランドの古い神話において非常に重要な存在です。
私は母からトロールの物語を読み聞かせられて育ちました。トロールが登場する素晴らしい古い絵本が家にあり、それらに親しんできました。こうした古い神話には、自然と深く関わるための知恵が詰まっています。だからこそ、この映画にそれらを取り入れたかったのです。
また、神話は「未知への恐れ」についても語っています。トロールは私たちにとって未知の存在であり、人々は彼らを恐れます。私はこの物語にトロールという生き物を登場させたいと思いました。そして彼らは物語の重要なカギを握ります。
個人的にトロールを100%信じているわけではありません。しかし、彼らはある意味で私のDNAの一部になっていると言えます。その物語を聞いて育ちましたから。自然を尊重し、私たちが自然のほんの一部に過ぎないことを理解するのは、とても大切なことだと思います。


ストーリー

子供を望む新婚夫婦サーガとジョンは、理想の子育てを夢見て、サーガの故郷であるフィンランドの森深い田舎町へと移り住む。北欧神話の気配が今なお息づく、神秘的な森に抱かれながら結ばれた二人は、やがて待望の子供を授かる。愛する夫と我が子との幸せな暮らし――サーガは、その未来を信じて疑わなかった。 あの産声を聞くまでは――。
「この子は、“何かがおかしい”」生まれた我が子に拭いきれない違和感を覚えるサーガ。不安は次第に恐怖へと姿を変え、やがて狂気へと暴走していく。そしてサーガが辿り着く、恐るべき真実とは――。

【作品概要】
■監督:ハンナ・ベルイホルム 『ハッチング -孵化-』
■出演:セイディ・ハーラ 『コンパートメントNo.6』 、ルパート・グリント 『ハリー・ポッター』シリーズ
配給:NOROSHI、ギャガ
英題:NIGHTBORN/2026年/フィンランド、フランス、イギリス、リトアニア/カラー/ビスタ/5.1chデジタル/4K/92分/字幕翻訳:稲田嵯裕里/R15+
© 2025 Elokuvayh/ö Komee4a Oy, Filmai LT, Bluelight, Getaway
公式HP https://gaga.ne.jp/nightborn_NOROSHI/
X、IG : @noroshi_gaga
【WEB映画マガジン「cowai」】https://cowai.jp/
ホラー、SF、スリラーなどのジャンル映画の最新情報を紹介すると共に、著名人インタビュー、プレゼント、特集連載記事などを掲載。
【記事編集者】
福谷修/「cowai」編集長、映画監督、ライター。新作は総監督を務めたホラー・アニメ映画『ナイトメア・バグズ-心霊蟲-』(花澤香菜CV)。シッチェス・カタロニア国際映画祭ほかに選出。KICKSTARTERにてクラウドファンディング実施中。応援よろしくお願いします。ライターとしては「DVD&ビデオでーた」「ザテレビジョン」などで千人以上の著名人インタビューや、特集を担当。その後、多部未華子主演の映画『こわい童謡』やNintendoDSゲーム「トワイライトシンドローム 禁じられた都市伝説」などのホラー作品を監督・脚本。作家では『渋谷怪談』『心霊写真部』『子守り首』『怪異フィルム』『霧塚タワー』ほか著作多数。近作は製作・プロデュースを務めたホラーアニメ映画『アラーニェの虫籠』『アムリタの饗宴』。他にオンライン講座「AI時代に収益につながる文章術&アイデア出し講座」の講師も務める。
『ナイトボーン -夜哭-』
8月28日(金) ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開
【関連記事】



-305x207.jpg)
