「僕を突き抜けて紙の上に出だがっているんだ」―ロバート・クラム
強烈な性へのオブセッション、兄チャールズとの関係…いかにしてクラムはクラムとなったのか?
テリー・ツワイゴフ監督によるカルト・ドキュメンタリー映画『クラム』が、2022年2月18日(金)より新宿シネマカリテほかにてリバイバル公開される。一般公開は1996 年の初公開以来。この度、予告編が解禁された。
ロバート・クラムはアメリカのアンダーグラウンド・コミックを代表する漫画家、イラストレーターである。
カウンターカルチャーを象徴するキャラクター「フリッツ・ザ・キャット」、「ミスター・ナチュラル」を生みだし、またジャニス・ジョプリンのアルバム「チープ・スリル」のジャケットを手掛けるなど、60年代後半のアメリカにあって、一躍脚光を浴びる存在となった。
本作は、風刺に富み、過激で辛辣、ときに性的なオブセッションをあらわにしたコミックを描き続けたクラムにカメラを向けたドキュメンタリーである。
2/18(金)公開!映画『クラム』予告編
この度、解禁された予告編では、冒頭に「クラムは現代の(ピーテル・)ブリューゲルだ」「20世紀の(オノレ・)ドーミエ」「(フランシスコ・デ・)ゴヤだ」と、ロバート・クラムを高名な画家に口々になぞらえる人々の言葉が被さるタイトルバックで幕を開ける。
続けて、とある講演会で、クラムが喋っているところによると、過去に書いたコミックの原画が、かなりの高値な額で取引されていることを伝えている。
ただ、自身の手元にはたいしたお金は入ってきていないと言う。
「悪党どもめ」と吐き捨てるクラム。続けて、あるインタビューで答えている様子では、「現代人は何のコンセプトもない。あらゆるものが金儲けの道具だ」とその苛立ちを語っている。
そんなクラムの、コミックを書き続けるモチベーションはどこにあるのか。
クラムの絵には、しばしば、性への強烈な執着をみることができる。
クラムの絵についての印象として、「女への敵意、それも性的な」「嫌気がさして、気分が悪くなる」とある女性は予告編でも語っている。
それでも描き続けるクラムは、自身の中に内在するキャラクター達が「僕を突き抜けて紙の上に出だがっているんだ」と語る。
現実社会では許されない欲望を具現化するキャラクターを世に送り出していることに対して「僕は監禁されるべきかもしれない」と自身のことを語っている。
そして、クラムが絵を描くことになったのは、兄チャールズの影響だと言う。
予告編でも、チャールズが描いたというコミックをみることができるが、ページをめくるにつれて、絵と文字の比率が逆になり、文字がどんどん増してくる。
そして、最終的には細かい文字の羅列にだけになるのはかなり異様だ。
劇中では、そのチャールズも登場する。
一生のうちの大半を、家に引きこもっていたチャールズだったが、クラムが有名になった後でも、それは変わることがなかった。
「若返ってもう一度やる直すためには、精神病院で過ごすしかないかも」と自身のことを語るチャールズ。
クラムの人格形成に大きな影響を与えたチャールズの自室での姿は、身に迫るものがある。
監督は、クラムとともにストリングス・バンド「チープ・スーツ・セレネーダーズ」で活動し、のちにアメリカの人気コミック作家ダニエル・クロウズ原作の『ゴーストワールド』(2001)を撮ったテリー・ツワイゴフ。
1995年にはサンダンス映画祭グランプリ(ドキュメンタリー部門)、ナショナル・ボード・オブ・レビュー・ベスト・ドキュメンタリー賞、全米監督協会賞等数々の映画賞を受賞。
また、アメリカの映画批評サイトであるロッテントマトでは95%、オンラインデータベースIMDbでもスコア8.0と高い評価を得ている。
日本では1995年の山形国際ドキュメンタリー映画祭での上映、1996年の一般公開以来の劇場公開となる。是非、公開を楽しみにお待ち頂きたい。
監督:テリー・ツワイゴフ
プロデューサー:リン・オドネル
共同プロデューサー:ニール・ハルフォン
エグゼクティブ・プロデューサー:ローレンス・ウィルキンソン、アルバート・バーガー、リアンヌ・ハルフォン
撮影:マリーズ・アルベルティ/録音:スコット・ブラインデル/編集:ヴィクター・リヴィングストン
音楽:デイヴィッド・ボーディングハウス
出演:ロバート・クラム チャールズ・クラム マクソン・クラム エイリーン・コミンスキー
原題:CRUMB 配給:コピアポア・フィルム オープンセサミ Lesfugitives
1994 年/アメリカ/カラー/ヨーロピアン・ビスタ(1.66:1)/モノラル/120 分
©1994 Crumb PartnersⅠALL RIGHTS RESERVED