【今週のオススメ/レビュー】『岬の兄妹』を超えた、異才ならではの、えげつなくも圧巻の超重量級エンタテインメント。『さがす』本日1/21(金)より公開!

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衝撃作『岬の兄妹』で一躍脚光を浴びた新鋭、片山慎三の長編2作目にして、商業デビュー作となる注目作『さがす』が本日1月21日(金)よりテアトル新宿ほかにて公開された。
主演の佐藤二朗をはじめ、伊東蒼、清水尋也、森田望智ら豪華で個性的な顔ぶれがそろう。

今回は本作のレビューと共に、作品の魅力や見どころを紹介する。















【今週のオススメ/レビュー】本日1/21(金)より公開『さがす』
『岬の兄妹』を超えた、異才ならではの、えげつなくも圧巻の超重量級エンタテインメント



©2022『さがす』製作委員会




正直、何を書いてもネタバレになりそうなので、「大阪の下町で、行方をくらました父親を捜す中学生の娘」という基本のあらすじだけ知っていれば、あとは予備知識なしで楽しんでほしいのが本音だ。が、それではレビューにならないので、最低限のことだけここに書かせていただく。

前作『岬の兄妹』で衝撃を受けた映画ファンや、筆者のようにただならぬ可能性を感じた人は、黙っても劇場に見に行くだろうが、本作や『岬の兄妹』の予告編を見た人で、何か少しでも引っかかったり、引きつけられるものがあったのなら、絶対に見に行った方がいい。あなたの直感は間違っていない。非常に癖の強い、ある意味でいわくつきの作品ではあるので、好みは分かれるが、少なくとも昨今巷にあふれる腑抜けたエンタテイメントとは一線を画す出来である。

助監督出身の片山慎三監督が自腹でプロ・スタッフを使って撮り上げた『岬の兄妹』は、いわぱ“営業用”の自主製作映画であり、才気みなぎる意欲作として、作り手の狙い通りに大きな反響を呼んだ。
それを受けての、本作『さがす』が満を持しての商業映画デビュー作となった。

記事後半の片山監督のコメント「よりエンターテイメントな作品にしたい」「自問自答し、自分が作家として試されているような、良い意味での気合いと思いが入っています。」という言葉の通り、本作において、監督は己の持ち味とオリジナリティをいかに独自のエンタテインメントとして昇華できるかに苦心し注力している。
だから脚本の構成から、セリフ、ライティング、カメラワーク、美術の細部に至るまで、仕掛けと伏線が無数に散りばめられており、練りに練られたストーリーと演出は、123分の尺で片時も緊張が途切れることなく、どのシーンも新鮮で見ごたえがある。
もちろん下記のあらすじにも触れられている通り、「連続殺人犯」がキーワードになっているため(現実の某二つの猟奇事件がベースであるのは明白)、グロテスクな描写も多々あるものの、それ以上に『岬の兄妹』を超える、えげつない人物描写の交錯が圧巻で、猟奇的な見せ場と相まって、全く予測不可能な展開が生まれ、監督の意図通り、独自のエンタテインメントにまで昇華されている点は、特筆に値するだろう。

まあ、あまりに濃すぎる内容で一般観客ドン引きすれすれの際どい面白さなだけに、それをほどよく中和しているのが、豪華で個性的な俳優陣だ。
佐藤二朗、伊東蒼、清水尋也、森田望智と、映画ファンならずも注目すべき才能を集め、「こういう役に挑戦してほしいなあ」と思わせるほどの、良い意味でのあざとい、ハマり役のキャスティングと、安定した芝居の競演が絶妙なバランスで作品の完成度を支えている。

そんな稀有な魅力と個性あふれる作品なだけに、できればメイン館のテアトル新宿のような個性的な劇場で鑑賞することをお薦めしたい。それでこそ作品の真価が発揮できるはずだ。

それにしても長編監督二作目にして、ここまでの超重量級エンタテインメントをオリジナルで作り上げた片山監督だけに、今後のさらなる飛躍にも注目していきたいところだ。









解説


見つけたくないものまで見えてくる。
異才 片山慎三があなたに問う
唯一無二の衝撃作。


©2022『さがす』製作委員会




国内外の錚々たる著名人から激賞を受け、映画ファンに衝撃を与えた映画『岬の兄妹』。今後の映画界を担う新たな才能として“片山慎三”の名を知らしめた。あれから3年、彼の長編2作目にして、商業デビュー作が満を持して誕生。

主演を務めるのは佐藤二朗。幅広い活躍を続ける彼が、監督からの熱望を受け、オファーに応えた。指名手配犯を見かけた翌朝に姿を消した父・原田智役として、彼の苦悩や矛盾を説得力たっぷりに表現。底知れない凄みと可笑しみがせめぎ合う演技はまさに佐藤二朗の真骨頂だ。

消えた父をさがす娘・原田楓役には次世代を担う女優・伊東蒼を抜擢。『湯を沸かすほどの熱い愛』で映画賞レースを席巻し、主演作『島々清しゃ』で毎日映画コンクール スポニチグランプリ新人賞を受賞。21年には、NHK「ひきこもり先生」「おかえりモネ」、映画『空白』など話題作への出演が続く。オーディションで驚くべき対応力と演技力を見せた気鋭の女優が、人として強く、正しくあろうとする姿と等身大の弱さを繊細に表現し、見るものすべてを驚嘆させる。

指名手配中の連続殺人犯・山内照巳を演じるのは清水尋也。『渇き。』『ホットギミック ガールミーツボーイ』『東京リベンジャーズ』「おかえりモネ」など数多くの話題作で独特の存在感を放ち続ける“カメレオン俳優”が本作では狂気に満ちた殺人衝動と普通の青年らしさを共存させ、リアリティたっぷりに演じ切る。

自殺志願者・ムクドリ役には森田望智を起用。全世界同時配信されたNetflixドラマ「全裸監督」で一躍注目を浴び、第24回釜山国際映画祭アジアコンテンツアワード最優秀新人賞を受賞。死を切望しつつもどこかあっけらかんとした複雑な役どころを多彩な演技で表現する。

さらに、本作は、映画配給会社アスミック・エースと、インディペンデント映画シーンを支援し続けているDOKUSO映画館のタッグによる次世代クリエイター映画開発プロジェクト「CINEMUNI」の第一弾作品にも選出。商業性と作家性を兼ね備え、国際展開までを見据えた作品として、アジア最大規模を誇る第26回釜山国際映画祭ニューカレンツ部門に正式出品。世界初上映となるワールドプレミアでは韓国の観客から大絶賛を浴びた。

見る者の価値観を覆し、すべての予想を裏切るストーリー。多彩なキャストによる繊細で、リアリティあふれる演技。

片山慎三監督が自問自答を繰り返して作り上げた物語は、観客自身の心の奥底にひそむ苦悩や矛盾をあぶり出していく。日本国内のみならず、世界に放つ“唯一無二の衝撃作”が遂に公開!










監督・脚本 片山慎三

【コメント】


大阪に住む父が指名手配犯を見かけた、という実体験から生まれたオリジナル作品です。商業デビュー作ということもあり、よりエンターテイメントな作品にしたいという気持ちがありました。オリジナルだからこそ立ち帰る場所が常に自分自身でした。自問自答し、自分が作家として試されているような、良い意味での気合いと思いが入っています。本作のワールドプレミアが釜山国際映画祭で迎えられることとなり嬉しく思います。映画を観てどういう反応が返ってくるのか非常に楽しみに思います。ぜひ日本での公開も心待ちにしていてください。




1981年2月7日生まれ、大阪府出身。中村幻児監督主催の映像塾を卒業後、『TOKYO!』(08/オムニバス映画 ポン・ジュノ監督パート)、『花より男子ファイナル』(08/石井康晴監督)、『母なる証明』(09/ポン・ジュノ監督)、『山形スクリーム』(09/竹中直人監督)、『マイ・バック・ページ』(11/山下敦弘監督)、『苦役列車』(12/山下敦弘監督)、『ヨコハマ物語』(13/喜多一郎監督)、『味園ユニバース』(15/山下敦弘監督)、『はなちゃんのみそ汁』(15/阿久根知昭監督)などの作品に助監督として参加。自費で製作した『岬の兄妹』(18)で長編映画監督デビューを果たし、映画界を席巻。全国6館から50館以上へ拡大公開され、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2018国内コンペティション長編部門優秀作品賞・観客賞、第41回ヨコハマ映画祭新人監督賞、第29回日本映画批評家大賞新人監督賞などを受賞。そのほかの監督作品として、『そこにいた男』(20)や「さまよう刃」(21/WOWOW)など。本作が商業映画デビュー作であり、長編映画監督2作目となる。









コメント

佐藤二朗(原田智)

ある日突然、手紙が来た。長文のその手紙の差出人は片山慎三。19年前のドラマで制作だった男だ。制作とはいえ、当時彼は21歳の右も左も分からぬ、いわゆる「使い走り」だった。でも発想や言葉が面白く、「君、オモロイな」と声を掛けたのを覚えている。そのあと彼は、数々の現場で鍛練し、感性を磨き、自腹で「岬の兄妹」という映画を監督した。その彼からの手紙には「自分の商業作品監督デビューとなる次作の主演を是非、二朗さんにやって欲しい」と書いてあった。手紙に添えられた、彼の商業デビューとなる「さがす」という妙なタイトルの脚本を読んでみた。「よくぞ俺のところに話を持ってきた」と思った。ちょっと凄い作品になると思う。ご期待を。




伊東蒼(原田楓)

初めて台本を読んだとき、難しそうだけどこの役をやりたい、この機会を逃したくないと思いました。
撮影中、片山監督が「もう一回、もう一回」と何度も同じシーンを繰り返されるので、はじめは不安が大きかったのですが、楓と私の境目がわからなくなるくらい、思い切って、がむしゃらに頑張りました。
楓の抱える悲しみや不安がどのように変化していくのか、是非劇場でご覧頂きたいと思います!




清水尋也(名無し/山内照巳)

山内照巳役を演じさせて頂きました清水尋也です。
片山監督・佐藤二朗さんをはじめとした素晴らしいキャスト・スタッフの方々と共にこの作品に参加できた事、光栄に思います。
台本を読ませて頂いた時、ページを捲る手が止まらなかったと共に、山内という印象的なキャラクターを演じる事への不安と興奮が入り混じった気持ちを抱きました。
また、現場では監督と日々ディスカッションを重ね、不穏で底の見えない山内の空気感を丁寧に作り上げました。
決して妥協せず、より良いモノを追求する監督の気持ちに応えられるよう、一層気持ちに熱が入りました。
目の背けられないリアルな温度感のストーリーを映像に落とし込む事が出来たと思います。
皆様にお届け出来る日が大変楽しみです。




森田望智(ムクドリ/内藤あおい)

初めて脚本を読んだ時、これはすごい話だと衝撃を受けました。
粛々と不穏な空気が漂う中に、見過ごせない何かを感じました。
それが何か知りたくて、私が演じるムクドリさんと共に撮影期間を過ごした気がします。
片山監督の丹念で奇抜な演出は、役の着地点がどんどん変化していくので、想像を超える発見があり、とても楽しかったです。
コロナ禍で、なかなか思うように作品作りが出来ない今、キャスト、スタッフさん、それぞれの濃密な想いが各シーンに刻み込まれています。
そんな色濃いこの作品が早く皆さんの元に届くといいなと心から待ち遠しく思います。











STORY

「お父ちゃんな、
指名手配中の連続殺人犯見たんや。
捕まえたら300万もらえるで」


©2022『さがす』製作委員会




大阪の下町で平穏に暮らす原田智と中学生の娘・楓。「お父ちゃんな、指名手配中の連続殺人犯見たんや。捕まえたら300万もらえるで」。いつもの冗談だと思い、相手にしない楓。しかし、その翌朝、智は煙のように姿を消す。

ひとり残された楓は孤独と不安を押し殺し、父をさがし始めるが、警察でも「大人の失踪は結末が決まっている」と相手にもされない。それでも必死に手掛かりを求めていくと、日雇い現場に父の名前があることを知る。「お父ちゃん!」だが、その声に振り向いたのはまったく知らない若い男だった。

失意に打ちひしがれる中、無造作に貼られた「連続殺人犯」の指名手配チラシを見る楓。そこには日雇い現場で振り向いた若い男の顔写真があった――









【作品情報】

タイトル『さがす』

第26回釜山映画祭ニューカレンツ(コンペティション)部門正式出品

佐藤二朗
伊東蒼 清水尋也
森田望智 石井正太朗 松岡依都美
成嶋瞳子 品川徹

監督・脚本:片山慎三
共同脚本:小寺和久 高田亮 音楽:髙位妃楊子
エグゼクティブプロデューサー:豊島雅郎 仲田桂祐 土川勉
プロデューサー:井手陽子 山野晃 原田耕治 ラインプロデューサー:和田大輔
撮影:池田直矢 録音:秋元大輔 編集:片岡葉寿紀
装飾:松塚隆史 衣裳:百井豊 ヘアメイク:宮本奈々
カラリスト:大西悠斗 音響効果:井上奈津子 キャスティング:田坂公章
助監督:相良健一 スケジュール:山田卓司 制作担当:姫田伸也
音楽プロデューサー:安井輝 宣伝プロデューサー:中島航
製作:アスミック・エース DOKUSO映画館 NK Contents
製作協力:埼玉県/SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ
制作協賛:CRG 制作プロダクション:レスパスビジョン 制作協力:レスパスフィルム
製作幹事・制作・配給:アスミック・エース 映倫PG-12
©2022『さがす』製作委員会

公式サイト:https://sagasu-movie.asmik-ace.co.jp/
公式Twitter:@sagasu_movie





2022年1月21日(金) テアトル新宿ほか全国公開










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