アイズナー賞受賞、アングレーム国際漫画祭グランプリ獲得など、世界中で絶大な人気を誇る大友克洋氏の代表作『AKIRA』第1巻が、講談社コミック史上初の100刷に到達した。1984年の発売から版を重ね続け、2020年9月25日、100度目の重版の出来となる。
『AKIRA』の作中舞台は、2020年の東京オリンピック開催を機に、再開発が進められていた「ネオ東京」。現実の2020年・東京と重なる表現がいくつもあり、「予言の書」として現在も話題が沸騰している。
凝った造本で製造費のかかる単行本が、長らく定価据え置きのまま、同じ仕様で増刷され続けてきたのは、驚異的なこと。ただ100回も増刷していると、いくつか問題も生じる。
一つは製版フィルムの劣化。60刷を超えたあたりから、版が荒れだしたため、製版フィルムを高解像度でスキャンしてデータ化した。
もう一つは、カバーの色の変化。前の刷り色に色味を合わせていたのだが、わずかな色の違いが、増刷を重ねるごとに大きな変化になって、70〜80刷の頃には、海賊版のような装丁になっていた。そこで、3~4年前から、発売当時の色に戻している。
さらに、漫画本文の用紙が生産中止になったのだが、これはどうしようもなく、100刷から用紙を変更した。
『AKIRA』はなぜ、これほどまで時代を超えて、読み続けられるのか? それは、著者・大友克洋氏が、徹底して「読み手」と「普遍性」を意識しているからだ。
大友氏は、「漫画なんて所詮、娯楽なんですよ。パラパラ読んでおもしろいと思ってもらえないとダメなんです」と言う。映画的なコマ割りや写実的でシャープな筆致に目が行きがちだが、大友氏は普遍的なおもしろさを人に伝える、ということを第一に漫画を制作しているのだ。
100刷目の第1巻は、10月上旬頃から店頭に並ぶ予定。いよいよ時代が『AKIRA』に追い付いた2020年、今後もぜひ、本作にご注目ください。