ロカルノ映画祭 2022 年金豹賞受賞
シッチェス・カタロニア映画祭
2022 年最優秀長編ヨーロッパ映画賞受賞
現代の《魔女狩り》フォークホラー『ナイトサイレン/呪縛』が、OSOREZONE、エクストリームの配給で、2024年8月2日(金)より、ヒューマントラストシネマ渋谷、池袋シネマ・ロサ、シネマート新宿 他にて全国ロードショーされる。
この映画の公開を記念して、「cowai」では、テレザ・ヌヴォトヴァ監督への単独インタビューを敢行!
また、読者プレゼントとして、映画ポスターを抽選で3名様にプレゼントする。
(締め切りは8/16(金)。応募方法は記事の後半にて掲載)
『ナイトサイレン/呪縛』公開記念!
テレザ・ヌヴォトヴァ監督 単独インタビュー!
「驚くべきことに、こうした村は今でもあるんです」
ーー『ナイトサイレン/呪縛』、新たなフォークホラーの秀作であるばかりでなく、ヒューマンサスペンス、心理ミステリー、夢幻的な映像美など、様々な要素が複雑に絡み合って一言では言い尽くせない、独特の魅力があります。監督としては、どのような意図で作品を撮られたのですか。
ヌヴォトヴァ監督 いい質問ですね。まず、田舎の村を舞台にしたのは、単にフォークホラーをやりたかったわけではなく、テーマとして「現代の社会における女性のあり方」や、「男女の置かれた立場の違い」などを明確化して、探求できると思ったからです。
ただ、こうした話をすると、どうしても「女性はつらい」といったテーマに偏りがちですが、私はそうしたくなかった。この作品を通して、どうやったら「女性である」というしがらみから解放され、最終的に満足がいく幸せな人生を送れるのか、その希望みたいなものを表現したくて、この映画を作りました。
ーー女性の社会問題をフォークホラーの中で描くというのは斬新でユニークですね。
ヌヴォトヴァ監督 ありがとう。(主人公の)シャロータには、私が考える「現代の女性の問題」を全て詰め込んだキャラクターにしました。
ーーシャロータは複雑な過去はもちろん、これでもかと様々な困難が降りかかり、苦悩や葛藤を乗り越え、物語を牽引します。
ヌヴォトヴァ監督 彼女が「どうすれば幸せになれるのか」は、ぜひ本編を見てほしいんですが、ヒントとしては「他者との繋がり」そして「自然との共生」でしょうか。
ーー現代の女性の問題に、<魔女狩り>という古典的な題材を絡める辺りも面白いですね。
ヌヴォトヴァ監督 この作品のために、様々な魔女の映画を観ました。しかし多くの映画では、魔女とは人間がコントロールできない、人間の人生や生活を破壊する、恐ろしいものとして描かれています。私はそうしたイメージを変えたいと思いました。なぜなら、現実に魔女と呼ばれた女性たちは、単に社会に反抗的な存在だったと思うんです。ヨーロッパでは特に。彼女たちは社会に反発することで殺されたり、迫害を受けてきました。私の国(スロヴァキア)でもそうでした。社会に迎合して生きるのではなく、ただ自分の思うように生きたかっただけ。だから映画では、そうした魔女と呼ばれた女性たちに対するリスペクトを込めています。
ーー日本では魔女=ファンタジーのイメージが強いだけに勉強になります。では、本作で、森が重要な舞台になっているのも、魔女ありきなんでしょうか。
ヌヴォトヴァ監督 そうです。人間の社会から追放された魔女たちは、結果として、森など、自然の中に身を潜めました。森は全てを受け入れてくれる優しい場所だと思っています。人間社会の方がよっぽど野蛮なことがあると思うんですね。
フォークホラーですが、
撮影はむしろ村人から歓迎されました。
ーー映画のような、魔女信仰の村は、21世紀の現代でも存在するのでしょうか。それとも監督の想像で作られたフィクションなんでしょうか?
ヌヴォトヴァ監督 驚くべきことに、こうした村は今でもあるんです。私がこの映画を作るために文献を調べていたら、ある人類学の本で、スロヴァキアのある村が紹介されていました。村にはインターネットや車もあって、一見、ごく普通の生活をしているのですが、魔女を信じているんです。すごくびっくりして、この村をはじめ、色々な村を訪れました。調べると、村の人たちにとって、魔女とは“距離のある隣人”なんです。村人同士の間で、ちょっと雰囲気や行動が違う人が魔女だと考えられていました。もちろん、村を初めて訪れた人に魔女の話なんてしないんですけど、付き合いを深めていくと、(魔女のことを)こっそり話し出す。それはキリスト教とか、カトリックと非常に繋がりがあって、教会に行く人たちが秘密の信仰みたいに魔女を信じているようなんですね。ただ、これは田舎の村に限らず、街とか、世界中にあると思います。信仰ですから。程度の違いはあるとはいえ、この魔女信仰は今でも消えていないのです。
ーー映画に出てくる村、ロケ場所にも魔女信仰はあったんでしょうか。
ヌヴォトヴァ監督 うっすらとありましたね。そんなに過激ではないですが。
あの村を撮影場所に選んだのは、単に私が好きだからです(笑)。私のコテージが近くにあるぐらい、あの村が気に入っています。だから撮影に使いました。
ーー魔女信仰の村を題材にしたホラーだけに、撮影は嫌がられませんでしたか。
ヌヴォトヴァ監督 むしろ歓迎されましたね(笑)。よく知っている村だったせいもあるかもしれませんが、皆さん喜んでロケ場所も提供してくれました。村人も大勢出演しています。例えば、冒頭の市長のオフィスにいる2人の女性も村人です。あと夏至祭の焚き火を囲んでいるのも村の人たちです。皆さん非常に協力的で、撮影を楽しんでくれました。
ーー日本では『〇〇村』じゃないですけど、なかなかホラーは撮影許可が下りない。
ヌヴォトヴァ監督 実際、村でプレミア上映をやったんですよ。それはとても大きなイベントになって。会場の広場で炊き出しというか料理が作られたり、伝統的なダンスを踊ったり、歌を歌ったり、大いに盛り上がりました。村の人たちも映画を観ましたが、彼らには「この村を舞台にしているけど、この村の実際の話ではない」ということをちゃんと言ってありましたので、全く大丈夫でした。
ーー監督自身がコテージを持っているということは、映画のような怖いことが起きなければ、とても住みやすい村なんでしょうね。
ヌヴォトヴァ監督 はい、素晴らしい村です。村の人たちも引っ越しせずにずっと暮らしている人ばかり。映画のように雄大な自然もあります。ただ一つ問題は野生動物もたくさんいること。オオカミとかクマとか、身近にいますので、彼らとどう共生していくかが課題ですね。
たくさんのヌードが出てくる理由
ーー映画の中でも、オオカミや白蛇、毒ヘビ、羊など、動物が効果的に登場します。これらは何かの象徴ですか?
ヌヴォトヴァ監督 そうです。ただ、それが何の象徴であるかという説明は控えたいと思います。やっぱり観客には、映画を見ていろいろ想像力をかき立ててもらって、それぞれの意味を見つけ出してほしいんです。
ーー先程、監督は「シャロータは現代の女性の問題が全て詰め込んだキャラクターにした」と話されました。主人公はもちろん、登場人物一人一人が複雑な背景や過去を持ち、演じる側も大変だったと思いますが、監督から何かアドバイスや演技指導をされたんでしょうか。
ヌヴォトヴァ監督 仰る通り、この映画に単なる良い子・駄目な子は一人も出てきません。映画が進むにつれて、その複雑な心の内が見えてくるという演出を意図していましたので、入念に準備しました。役者とも本当に長いプロセスを経て撮影をしました。
シャロータを演じたナタリア(・ジェルマーニ)とは毎日ミーティングをして、一つ一つのセリフ、一つ一つのシーンに対して意見を聞いて、どうすれば役になりきれるか話し合いました。シャロータとナタリア本人は全く別人なぐらい違うんですが、「自分自身の中のシャロータっぽい部分を見つけてうまく表現してほしい」と話しました。
私の作品には、俳優にとってチャレンジングなキャラクターが多いんですけど、みんな、そうした心に葛藤を抱えた深い役柄に惹かれて、「やりがいがある」と言ってくれます。
ーー俳優の熱演と共に、夢幻的な映像美も本作の大きな特徴だと思います。夜の森で裸体が発光するシーンや、大勢の裸の男女が蠢くように絡み合うシーンなど、おぞましくも鮮烈な印象を残します。
ヌヴォトヴァ監督 やはり魔女の物語だけに、観客はどうしてもファンタジーの要素も期待します。観客にこの物語により深くハマってもらうために、こうした幻想的な見せ場にも力を入れました。
確かに、様々なヌードが出てきますが、あれは主人公が見た、森の一部、いや、森そのものなんです。服を着ていない裸というのは、“自由”を表しているんですね。
ーー先程おっしゃった「森は全てを受け入れてくれる優しい場所」につながるわけですね。
ヌヴォトヴァ監督 そうです。ネタバレになるので、詳しくは言えませんが、そこには主人公の視点、彼女の妄想、トラウマや怖れ、セクシャルな欲望の具現化という解釈も含まれています。
つまり自分が森で“それ”を目撃し、体感することで、彼女自身が変化していくきっかけになるのです。
観客が「息をのむ」映像に没入しながら、様々なメッセージを受け取れるように細部まで工夫しました。ぜひ大きなスクリーンで観てほしいですね。
ーー夜の森のシーンは非常に芸術的で独創的なイメージですが、何かインスパイアされたものはありますか。また、どのように撮影されたんでしょうか?
ヌヴォトヴァ監督 私の好きなアーティストに、ヒエロニムス・ボスというオランダ人の画家がいて、「快楽の園」という作品が自宅に飾ってあるんですけど、これが人間の体が重なって、動物とかも一緒になって絡み合っている、変な絵なんですね(笑)。でも私はこの絵にとてもインスピレーションを受けました。
ヌヴォトヴァ監督 森のシーンをクリエイトする際に、スタッフにこの絵のことを話して、イメージを共有して作っていきました。
例えば、衣装デザインの方とは…まあ、裸なので衣装は着ていないんですけど(笑)、裸体の動きと言うか振り付けのアイデアをもらい、カメラマンには、裸体に蛍光のペイントやUVライト使ったらどうか、みたいな案を出してもらいました。あとは(撮影後の)ポスプロのVFXに時間をかけたつもりです。
ーーでは、最後に日本の観客に向けてメッセージをお願いします。
ヌヴォトヴァ監督 作品を見てくれて、ありがとうございます。
スロヴァキアから日本はとても遠いので、この映画がどう見られるか、ちょっと想像もつかないのですが、本当にわくわくしています。
『ナイトサイレン/呪縛』は“女性らしさ”にまつわる神話や慣習を払拭しようとする作品です。女性の解放というテーマは世界共通です。この作品を通じて、自分が自分自身でいることを恐れない大切さを知ってほしい。そしてそれぞれが何かを感じ取ってくれたらと思います。
ーーありがとうございました。
【読者プレゼント】
『ナイトサイレン/呪縛』公開記念!
映画ポスターを抽選で3名様にプレゼント!
<応募方法>
応募締め切りは2024年8月16日(金)
応募方法は、WEB映画マガジン「cowai」twitter公式アカウント(@cowai_movie)をフォローし、該当するプレゼント記事ツイート( https://x.com/cowai_movie/status/1819238928874197387 )をリポスト(RT)してください。
<抽選結果>
締め切り後に抽選を行い、当選された方に「cowai」公式TwitterアカウントよりDMで通知させていただきます。当選品は郵送する予定です。(諸般の事情や、災害、キャンセル発生等やむを得ぬ事情で遅れる場合があります)
皆様のご応募お待ちしています!
【応募の注意点】
〇当選後に住所の送付が可能な方のみご応募ください(日本国内のみ有効)。個人情報につきましては、プレゼントの発送以外には使用いたしません。
〇当選品は映画配給会社よりご提供いただいたプロモーション目的の非売品扱いとなります。このため、傷や汚れ等があっても交換はできませんので、ご了承ください。
※非売品につき転売目的のご応募は禁止とさせていただきます。
〇当選のキャンセルが発生した場合は再度抽選を行う場合があります。
〇抽選結果や抽選経過に関して個別のお問い合わせには応じられませんので、あらかじめご了承ください。
STORY
人里離れた村で暮らす姉のシャロータと妹のタマラは母親の虐待から逃げ出すことを決意したが逃げ込んだ森の中で恐ろしい事故に遭ってしまう。
事故から20 年、消息を絶っていたシャロータがある出来事をきっかけに村に戻るも受け入れる者はいなかった――。村が夏至祭に近づく中、彼女が過去のトラウマと対峙するほどに人々は疑念を募らせてゆくが……。
遠い故郷の、その秘密。
監督は本作が長編2作目となるテレザ・ヌヴォトヴァ。1 作目の『Filthy(英題)』はロッテルダム映画祭に正式出品され、本作ではロカルノ映画祭 2022 年金豹賞、シッチェス映画祭 2022 年最優秀長編ヨーロッパ映画賞を受賞した。
主演は『プリンセス:ルーパー』(2020)などで知られるナタリア・ジェルマーニ、シャロータに唯一心を開くミラにエヴァ・モーレス、『アウシュヴィッツ・レポート』で主演を務めたノエル・ツツォルが脇を固める。
『ナイトサイレン/呪縛』 nightsiren.jp
監督:テレザ・ヌヴォトヴァ
出演:ナタリア・ジェルマーニ、エヴァ・モーレス、ノエル・ツツォル、
ジュリアナ・ブルトフスカほか
2022 年/スロヴァキア、チェコ共和国/スロヴァキア語/109 分/カラー/スコー
プ/5.1ch/PG12 配給:OSOREZONE、エクストリーム
©︎BFILM s.r.o., moloko film s.r.o., Rozhlas a televízia Slovenska 2022
2024年8月2日(金) ヒューマントラストシネマ渋谷、池袋シネマ・ロサ、
シネマート新宿 他 全国ロードショー!
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