ついに2月5日(金)より公開され、好調なスタートを切った“恐怖の村”シリーズ第2弾『樹海村』(配給・東映)。
「cowai」では、日本のホラー映画界をけん引する清水崇監督に単独ロング・インタビューを敢行。撮影の舞台裏からキャスティング、作品に込めた思いまで濃密に語ってもらった。
『樹海村』清水崇監督・単独ロングインタビュー
『犬鳴村』とも違う、樹海を舞台にすることの難しさ
その自然、人間が立ち入るべきじゃない…
―都市伝説を題材に、しかも原作のないオリジナル作品で、本格的な長編ホラー映画を撮るというのは並大抵のことではできないと思いますが。
清水崇監督(以下、清水)「大変なんですよ。たとえば(噂のある場所に)『探検隊行ってみよう!』的な感じのだったら、けっこう出回っているじゃないですか。それなら低予算でもできる。
でも、東映でちゃんと全国区でやるとなったら、見応えがないといけないんですよね。
最初、『犬鳴トンネルだけでどうやって作るんですか』ってよく聞かれました。
でも昔なら、『ノストラダムスの大予言』とか、別に物語はないですよね。でも、ちゃんと成立しているし、当たっている」
―確かに映画の『ノストラダムスの大予言』は、予言書の謎を解明するというノンフィクションの原作とは違って、パノラマ的に世界の破滅へのプロセスを描いていました。
清水「だから、犬鳴トンネルでどう映画を作るのか、大変だなあと思いながらも、創り甲斐はあったし、面白かった。
『犬鳴村』も難しい部分はあったんですけど、ただ、『樹海村』はより難しかったですね。
オカルトライターの吉田悠軌さんからも『犬鳴トンネルの場合は、トンネルの先に村があって帰れないとか、村人に襲われるとか、いろいろ尾ひれがついた噂とかがいくつかあるけど、樹海は特に何もないので、どうやるんだろうと思った』って言われて。確かにそこは難しかったですよね」
―樹海には、“村”にまつわる都市伝説がない?
清水「ええ。ちょうど自粛に入る前、2月だったかな、(次回作の)『ホムンクルス』の撮影が終わって、編集も一区切りがついた段階で、『樹海村』のシナリオ作りのためにシナハン(シナリオ・ハンディング)に行ったんですね、樹海へ。プロデューサーと脚本家と、『犬鳴村』でもお世話になっていた宣伝関係の担当者とか何人かで、お疲れ会も兼ねて。でも実際に行くと……とにかく清々しくて、空気が気持ちいい(笑)。みんなで『マイナスイオン出てるよね』って話をしながら、『でもこれって、映画にしようがないんじゃない?』ってなって。
というのも、そもそも人が住めない場所なんですよね。溶岩石でできた地盤だし、人の歴史というか、匂いがしない。だからこそ自然に任せた森林が生い茂っていて神秘的だし、禁足地たる由縁も実はそこにあって、富士山の裾野ですし、昔から宗教施設などが集まるのも頷けるというか…本来、人が立ち入れない事情があるんです。空気もおいしくて清々しいんですけど。
だから、歩けば歩くほど、《その自然、人間が立ち入るべきじゃない》っていうくらい、人を寄せ付けない雰囲気があったので、人間の悲喜こもごもの物語とか、過去の背景とか作りづらいんですよ。
『これは…樹海を舞台にするのは難しいかもね』って話しながら帰ったんです」
自粛期間に進めた脚本作り
樹海にコトリバコを掛け合わせた理由
―では、そんな逆境から、どう『樹海村』の物語を作っていったのでしょうか。
清水「その後、コロナの噂が立ち始めた時、『せめてもう1回樹海に行っておこう』ってなって。
今回は都市伝説やオカルト系心霊スポットに詳しい、村田らむさんや、TOCANAの編集長の角(由紀子)さん、吉田悠軌さんに取材してお話を聞いて、もう1回行こうって。
すると、村田さんから『自分よりも詳しい、“樹海のKさん”という方がいる』と教えられたんです。『一般人なんですけど、その人は僕より嗅覚がきいて、行けば必ず遺体を見つける、樹海がなんたるかをわかっている』と。そのKさんを紹介してもらってシナハンに行こうということになったんですけど。その矢先にいよいよコロナがやばいってなって、それでもプロデューサーは『いや、何としてももう1回行く』って豪語していたんですが、まわりが懸念し始めて、僕が『やめましょう』って判断しました。結局二度目のシナハンは行けないまま、コロナで緊急事態宣言の自粛に入ってしまったんです。
ただ、撮影の途中で止まってしまうってことじゃなかったから、そこはまだよかったんですけどね。
ちょうどコロナの自粛中に脚本の保坂(大輔)さんと、たまにプロデューサーも入れながらリモートでやり取りしながら、脚本作りを進めていったんです。自粛中のせいもあって、結果的に脚本作りに集中できた面もあります」
―自粛期間の4月から5月くらいに脚本づくりを進めた?
清水「そうですね。基本的には、樹海には人を寄せ付けない雰囲気があるんですけど、たとえば、口減らし的な子供だったり老人だったり、身障者だったり……日本全国にある話ですけど、そういう社会的に弾かれてしまったような人たちを、あそこなら迷って出られないから、座敷牢みたいに閉じ込めたら……そんなことがひょっとしてあったんじゃないか。史実としてちゃんと残っているわけじゃないですけど、僕の中でそういうものが思い浮かんだので、そこをベースにしたらいけるかもしれないって考えたんです。」
―なるほど、人の生活の痕跡がない分、逆に、人知れず樹海に封印されてしまった人々の村があるかもしれない、ということですね。
清水「『犬鳴村』もそうだったのですが、僕が思いついたアイデアとか構成とかストーリーの流れを、保坂さんに伝えて、保坂さんのアイデアも取り入れて、脚本にしていくという作業を繰り返しました。
ただ、それでも、まだまだ物語の要素が足りなかった。
だから、樹海とは全然違うものだけれども、『コトリバコをもってきたらどうだろうか』って保坂さんに提案したんです。
コトリバコはWEBの実話怪談で、とりあえずコトリバコに関する色々なサイトがあるから読んでみてほしいって。
でも仮にコトリバコを映画用にアレンジするとしても、果たして樹海とコトリバコという、全く違った二つが本当にくっつくのかというのは確信無いまま始めてみて…でしたね。
でも、『犬鳴村』の時もトンネルだけでは無理があると思って、現代の若者の物語とどうやって結びつけるかを考えた時、“血筋”にたどり着いたんです。
今回の『樹海村』ではそれがコトリバコになって、引っ越した先にコトリバコが現れて、それをきっかけに物語が動き出すという流れができたんです。」
―コトリバコは怪談ファンやホラーファンの間でも有名です。これを樹海と掛け合わせるというのはとても大胆ですね。
清水「そう、大胆ですよね。樹海が背景なだけでは、あまり絵変わりしないんですよ。映像になったら、森は森ですから。特に樹海のような場所は迷う程どこを向いても森…たぶんお客さんも飽きちゃうんじゃないかな。他の樹海物、ホラーに限らず樹海が絡む映画を見たんですけど、絶賛だって作品に出くわした経験がなかったし、結局カナダとかの森で撮ってたり…難しいなあと。
本来、呪いや祟りとか見えないものを扱うことがホラーだと多いので、その象徴になるのが一つあると描きやすい。それが人形だったり、作品によって違いますけど、今回はそれがコトリバコだったのだと思います。
でも、コトリバコだけでもまた難しいですよね。あれは読み物だから怖いと思うし、コトリバコって聞いて、『おお、あれを使ったんだ』って知ってる通な人もいれば、逆に、『何それ?』って思う一般の人の方も多いと思うので。あんまりコトリバコってどういうものかをグダグダ説明したくなかったんです。すればするほど、やぶ蛇かなって気がして。だから響ってキャラクターはコトリバコを知ってるらしいってことにして、対照的に姉の鳴は全く知らないことにしました」
響は“オカルト版○○○○”みたいにしたかったんです
―主人公の天沢姉妹の存在感やキャラの対比が、この作品の世界観を象徴しているようで面白かったですね。
清水「ありがとうございます。
ちょうど年頃っていうのもあるんですけど、兄弟姉妹とかって、すごく仲が良かったり、そうでもない、全然しゃべらなかったりとか、色々じゃないですか。
そんな中で、いがみ合って、相手がうっとうしくてしょうがないんだけど、全く思ってないわけじゃない…くらいがリアリティがあるかなと。
お互いの存在を意識しているんだけど、関わるとうざったくなる。兄弟姉妹に限らず、家族間や夫婦間もそうなんだけど、そういう距離感をうまく作れる二人がいいなと思いました。キャスティングではその辺りを意識しています。
あのくらいの年の俳優さんだと、もちろん自分なりにキャラクターや人物像を模索してくるんですけど、やっぱりその人の持ってる素の魅力があっての事なので」
―響役の山田杏奈さんはどうでしたか?響をどう演じてほしいとかありましたか?
清水「山田杏奈本人も『私、なんか陰のある役が多いんですよね、なんでだろう』って言ってました。最近はそうじゃないキャラクターも演じてますけど、なんか僕もそれを感じ取っていたので、今回は陰があるとしても、ちょっと違う切り口もほしいなって」
―具体的に何かイメージがありますか?
清水「実は僕の中で、響は《オカルト版ナウシカ》みたいにしたかったんです」
―オカルト版ナウシカ!?その発想はなかったですね。
清水「引きこもりのナウシカですね。宮崎さんのナウシカは活発で空を飛び回って、言いたいことをはっきり言って、すごく優等生ですけど……。現代だったら、リアルにそんなに強く人前で言えないはずだし、自然とか虫とか植物にシンパシー感じてる人だったら、人同士の場合はむしろ主張しづらくて引っ込んでいるんじゃないかなっていうのがあったんです」
―たしかに、今だと響のようなキャラの方が共感できるでしょうね。
清水「撮影の前に、山田杏奈から、『霊感があるってどういうことか感覚的につかめないんですけど』って聞かれて、僕も『霊能者じゃないからわからないけど』と言いつつ、彼女から『おすすめの映画とかあれば見ておきます』って言うので、ちょうど僕、『樹海村』の撮影に入る前に、軽い手術をして1週間くらい入院していたんですけど、入院中、持ち込んだDVDの中に、『ボーダー 二つの世界』という映画があったんです。僕はこの作品になんかすごく信憑性を感じて。不思議な映画なんですよ、日本では絶対発想できないような。その主人公、特別な能力を持っているがために孤独を抱えているのが、すごく“響”かもしれないと思って、その『ボーダー』と、黒沢清さんの『降霊』をお薦めしたんです。あれは配信でも見れないんで。あとは『シックスセンス』とか、メジャーですけど。彼女も勉強熱心で、忙しいはずなのに3本とも次の打ち合わせまでに見てきてくれてて。まあ、ナウシカはその時言わなかったですけど(笑)」
―ナウシカはちょっと意識しちゃいますよね
清水「うん、勘違いしちゃう。完成後、彼女が観た試写には僕は立ち会えなかったんですけど、観た後で彼女と電話で話をした時、『実はナウシカだったんだよ、君は』っていう話をして、『なるほど、そうだったんですね』と納得していましたね。それは観た後で無いと、言われても意味が解らなかったと思いますし」
―今回の山田杏奈さんのキャスティングは清水監督の希望だったんですか?
清水「そうですね。プロデューサーからのお薦めもあったんですけど。『ミスミソウ』だったり、その辺で知ってはいたので」
―『ミスミソウ』も確かにホラーですけど、テイストは全然違いますよね?
清水「ええ、内藤(瑛亮)監督の世界観がバリバリ出てるスプラッターですし。
実は『ミスミソウ』を見て、前作『犬鳴村』から(Youtuberアッキーナ役の)大谷凜香にオファーしていたんですよ。
彼女はポケモン(バラエティ番組『ポケモンの家あつまる?』にレギュラー出演中)のイメージしかなかったんですけど。あの番組をうちの子が見てたんで、この子誰?ってなって。『ミスミソウ』を見たら、ポケモンのバラエティ番組とは全く違ったイメージのいじめっ子の役で、『ああ悪くないじゃん』と思って『犬鳴村』に起用したんです。
内藤監督も知り合いなので、『内藤君、実は大谷凜香、次で出てもらうことにしたんだよ。「ミスミソウ」でいい存在感発してたので』って話をしていたんですよね。
今回、山田杏奈で、『ミスミソウ』を追いかけているような感じになっていますけど(笑)」
最初の二人の掛け合いを見ただけで
一発で『あ、いいね!』って
―『樹海村』は『ミスミソウ』とはまた違った魅力で、山田さんは響という役柄にうまくハマっていました。
清水「若さと、見た目のまだ可愛い子ちゃんな感じとは、ちょっとかけ離れた賢さがあって、役者向きなんだなって思います。たしかモデル出身だけど、明らかに彼女は女優向きですね」
―鳴役の山口まゆさんはいかがでした?
清水「実は彼女は10年前、10歳の時に僕の監督、保坂さんが脚本を書いた映画『ラビット・ホラー3D』に出てるんです、エキストラで。
それ本人から教えられて、最終オーディションの時に。
書類審査とリモート・オーディションで絞り込んでいって、最終に残った山口さんに、『最後くらいは距離おいて直接会いましょう』って面接に来てもらったら、『私、清水組初めてじゃないんです』って。『え、何それ』『10年前、10歳の時に、初めて映画の撮影現場で、エキストラだったんですけど、お母さんと一緒に行って、満島ひかりさんの後ろで、こういうお芝居させてもらった。それが予告編にも使われていて喜んでいたんです』って。
覚えてなかったです、さすがに。その10年後に同じ監督の現場で主役やってる、それって凄い事ですよね?俳優を志す人に夢を与えるような素敵な話です。でも、それを聞いて、ああ、自分も年取るはずだよなって(笑)」
―プレスシートに、清水監督のコメントとして、「W主演を任せた山田&山口の山山コンビは、驚くほど狙い通りの対照的な姉妹を体現し、響と鳴に息を吹き込み、もがいてくれました」とあります。
清水「撮影の初日が、二人が住んでる家からだったんです。そこはやはり何とかスケジューリングしてもらいました。
二人が、姉妹の距離感とか、物腰とか、眼差しとか、間合いをどう捉えてくれているか。
リハーサルとか、事前に僕が説明したりして、僕にも、きっと姉妹はこういう人物、こういう感じだと思うものがあって、それを踏まえて現場でどういう風に二人が芝居を出してくるかって。
彼女たちも自分なりに考えたとは思います。でも、本番の、最初の二人の掛け合いを見ただけで、一発で『あ、いいね!』って。
本当に思い描いた姉妹に見えるし、二人、実は同い年で最近二十歳になったばっかりですけど、山口の方はお姉ちゃんに見えるし、読み通り、想像通りだったなって。
二人とものみ込みが早いというか、自分なりにちゃんと考えて役柄を作って来てるところと、だけど、こういったホラーのような状況に戸惑いながらもフレキシブルに対応できる力を持っているので、本当に安心しました」
―ホラーって、俳優によっては状況や設定に悩んでしまうこともありますからね
清水「そうなんです、俳優さんからすると、『ここでそれは無理じゃないですか』って思いを抱えながら、でもそれを言わずにやっちゃう人が多いと思うんですよ。
そういうのは僕は言ってほしいんです。無理があったら言ってほしい。『なんでわざわざ行くんですか、この暗闇に』とか、けっこうありますからね。でも、そこを(ホラーだし、いいか…)っておざなりに演られると腹が立ちます。自分の役や気持ち、強いてはこの映画をバカにしてんのか?って。たまにそういう俳優さんもいますから。そういう方には出て欲しくないし」
買い込んだ大量の抗体検査キットが
いまだに残っていますから
―ホラーの視点で言えば、今回の『樹海村』は「禍々しい」。前作『犬鳴村』よりも禍々しい怖さに満ちていると思います。
清水「同じことを吉田悠軌さんにも言われました。エグイって。禍々しくてエグイって」
―その辺りは狙っていました?
清水「いや、特に狙ってないですけど……たぶん、最終的には“自然への畏怖の念”にテーマを繋げて考えていたので、物語や描き方も自然とそうなったのでしょうし、ドラマ部分で言うと、ホラーって、人が亡くなって悲しむ間もなく次に平気でいってしまう作品が多いと思うんですけど、今回はそれをしたくなかったんです。
姉妹や家族との関係性とか距離感、あるいは、その背後にある樹海やコトリバコといった呪いの要素の一つ一つを踏みしめて描いているから、禍々しいものになったのかもしれませんね」
―作品の象徴となる樹海のロケについて
清水「大変でした。樹海のロケは色々スケジュールが合わなくて、二回に分けて行ったんですよ。
緊急事態宣言が解除されて、すぐに準備を始めたので、映画業界内どころか一般的な社会的生活においても、まだきちんとした対策もできていない中で、自分たちでルールを作って、リモート説明会を開いてスタッフ、キャストに納得の上でサインしてもらい、参加してもらいました。
もう、買い込んだ大量の抗体検査キットがいまだに残っていますから。スタッフキャストがもし熱が出たり、兆候が見えた場合すぐPCR検査でしてもらえるように病院に登録しました。最初はみんな、『こうなったらどうする』『ああなったらどうする』ってことばっかり話していたんですけど、みんなやっぱり溜まっているんですよね、どこかにぶつけたいとか。でも、そんなの誰かにぶつけたって、誰にも正解は出せないし、何の保障もない。それはいまだにそうですし、世界中どこでも一緒ですよね」
―凄いですね。監督はもちろん、キャストとスタッフが一丸にならないと無理です。
清水「ええ、一人も感染者が出なくて、ほっとしました。
しかもホラーって社会的に見たら、そんなもの世の中に必要かっていうくらいやり玉にあげられるジャンル映画だから、コロナ明けのこのタイミングでわざわざホラー映画を急いで撮影する必要があるのか?みたいなことを言われかねないと思ったんですよ。
樹海って聞いただけで、みんなが思い浮かぶのは自殺者なので、自殺者の呪いの話だろう的になると不謹慎だっていう。もちろん最初は猛反対されましたよね、抗議文が届くくらい。
でも蓋を開けたら、『あ、そういう話じゃなかったのね』っていうことが多くて。過去にもありましたけど。勝手に先行してるイメージって強いんだなあって思います。
逆に、僕は、コロナっていう状況になる前から、無責任で身勝手な人間のエゴとそこが生み出した結果や自然の脅威を背景に描きたかったことがあったんです。東日本大震災の時にも、人間って自分で元に戻せない、浄化しきれないものを作っては、自然を脅かして、自分たちの首を絞めている、あとは放置して自然が戻してくれるのを待つしかない、なんて無責任な、エゴの塊の生き物なんだろうって思いがあって。
このままだと自分たちで『便利になる』『便利になる』って言いながら、首を絞めて、もう滅亡するんじゃないかっていう。人同士の怖さにばかり目を向けがちな僕らの狭い感覚こそが何かを引き起こしている…そういう“怖さ”ってできないのかなって思っていたんです」
―『樹海村』プレスシートの清水監督のコメントにも「排他的な人間が生み出した“目に見えない”歪んだ恐怖」について書かれています。
この作品を通じて、監督が描きたかった“怖さ”の真意は伝わっているのではないかと思います。
清水「よかったです。樹海が怖いってイメージも、結局は人間が勝手にそうしているだけなんです。自分たちでコントロールできず、立ち入っても迷ってしまうような場所だからってだけで…本来はそれほど神秘的で鬱蒼とした素晴らしい生命力に満ち溢れた森なのに。
その辺りのことは、実は撮影に入る直前までホン(脚本)で悩んでいて、ラストをどうするか決めていないまま、準備をしていた。保坂さんが書いてくれたラストがあったんですけど、『もうひとつ何か欲しいよね』っていうのがあったんですよね。僕が色々セリフとしてそのテーマを書いた時、保坂さんが『監督、そのテーマをストレートに言うとか表現するのは避けて、それを感じさせる方向にもっていきたい、もっていくべきだ』って言ってくれて。確かにその通りだって、その部分を切ったんですけど、切ってよかったなって。そのラストは、実はチーフ助監督をやってくれていて、ご自身も監督をしている毛利さん(※毛利安孝監督ドキュメンタリー作品『けったいな町医者』2月13日~全国で随時公開)の提案とアイデアを頂いたものです。すごくいいと思うけど、このラスト、どうするこんなの。どうやったらこれが実現できるんだって(笑)。現場ではCGは当然ないわけですから、画コンテは描きましたけど……イメージは僕の頭の中か、CG担当の鹿角さんってスタッフしか理解できない状態でやってましたからね」
何か不気味にエロイんですよね
あれは綺麗だしいいなと思ってます
―クライマックスからラストは、清水さんのイメージですか?
清水「そうですね。文字上では毛利さんのアイデアをいただきつつ、具体的な仕上がりの映像としては僕が画コンテを描きました。ドラマ撮影との縫いスケジュールで疲れ果てていた山田杏奈が、撮り終えた部分の画コンテ用紙を剥がし破いていたのを目の当たりにした時は腸煮えくり返る程かなり頭にきましたけど…(苦笑)…「誰のために…」って。ま、彼女も疲れ果てていたので。
洞窟はセットを作ったんですけど。早めにラストの絵を描いて、イメージを撮影の福本さんや照明の市川さん、演出部、スタッフ各位とCG担当:鹿角さん、山山コンビの二人の俳優陣と演出を共有して進めました」
―個人的には、冒頭の樹海の道での、不穏な空気が好きですね。
清水「あれは、車が走ってたら何かに出くわして…っていう始まり方のホラーとか、ホラーじゃないものを、けっこう海外の作品で見ていて好きだったんですよ。
だから自分もやってみたかった(笑)」
―ほかに、おすすめのシーンがあれば教えてください
清水「山田杏奈演じる響が病院に入れられて、入院してお姉ちゃんと初めて面会した後で、一人もんどり打って、うなされている。そして樹海へ誘われていくような夢か幻かに苛まれている……あそこは切ない怖い感じを狙おうと思ったんですけど……思いのほかエロスも感じるんですよね。何か不気味にエロイんですよね、おじさんの僕が言うと勘違いされそうだけど、あれは綺麗だしいいなと思ってます。正直、彼女の役にエロスを求めていなかったんですよ。それが色気が出たって思ったので、現場で見てて、これはエロい、美しいし、いいなあと。やっぱり…こういうこと言うと、オヤジが…と思われるかもしれませんが(笑)、実際映画で観ていただけたら女性でも理解していただけるかと。」
―ホラー演技として艶っぽいですね
清水「そうですね、彼女は顔も童顔ですからね。アンバランスな感じで」
―病室の響は、予告編の冒頭のシーンもそうですが、印象に残りますね。
清水「響が宙に浮いてとか、叩きつけられてとかは、あの辺りは保坂さんのアイデアですね。
“まるで大きな手に叩きつけられたような”っていう表現で書いてて、『これって、どういうこと?』って、保坂さんに聞いたのを思い出しました」
―あれは実際に山田さんを浮かせている?
清水「そうです。もちろん一部のカットはスタントマンの女性ですが、大半は本人を実際に吊って浮かせています。あれはセットですね。どこからどう映って、どういう動きで、どこへ叩きつけられるか。だからこの壁はクッション状にしておいてとか、けっこう細かい計算のもとにセットを組んで撮影しています」
―『犬鳴村』『樹海村』と続きましたが、当然、ファンの興味は“恐怖の村”シリーズ第三弾ですが。
清水「まさに今それを進めています。今日の夜、その取材をする予定です」
―楽しみですね!
最後に、今後やってみたいことは?
清水「ホラーも、やっていないジャンルがあるので。また違うことができそうってなれば、今後もやっていきたいですね。
でも、今はコメディーやりたいんですよ、実は。
シュールなやつをやりたい。幽霊とか宇宙人とか出てこなくてもいいんで(笑)」
Profile
監督・脚本 清水崇
1972年7月27日群馬県出身。ブースタープロジェクト所属。
大学で演劇を専攻し、演出家・大橋也寸氏、脚本家・石堂淑朗氏に師事。同郷の小栗康平監督作『眠る男』(96)の見習いスタッフで業界入り。小道具、助監督を経て、自主制作した3分間の映像を機に黒沢清、高橋洋監督の推薦を受け、98年、関西テレビの短編枠で商業デビュー。東映Vシネマで原案・脚本・監督した『呪怨』シリーズ(99)が口コミで話題になり、劇場版(01,02)を経て、サム・ライミ監督によるプロデュースの下、USリメイク版“The Grudge”:邦題『THE JUON/呪怨』(04)でハリウッドデビュー。日本人初の全米興行成績№1を獲得。続く“The Grudge 2”:邦題『呪怨パンデミック』(06)も全米№1に。その他、『稀人』(04)、『輪廻』(05)、『ラビット・ホラー3D』(10)、『魔女の宅急便』(14)、『ブルーハーツが聴こえる/少年の詩』『こどもつかい』(ともに17)など。本作の前身となる『犬鳴村』(20)では、興収14億円、動員数110万人を記録。ホラーやスリラーを中心に、ファンタジーやコメディ、ミステリー、SFなど様々なジャンルに取り組んでいる。3Dドームによる科学映画『9次元からきた男』(16)では、理論物理学の最先端“ひも理論”にエンタメ要素を用いて、国内外で様々な賞を受賞。現在も日本科学未来館にて連日上映中。最新作『ホムンクルス』が2021年4月2日(金)公開。
清水崇監督のサイン入り『樹海村』特製プレスシートを抽選で三名様にプレゼント!
インタビュー後に、清水崇監督よりサインをしていただいた、マスコミ向けプレスシートを抽選で3名様にプレゼント!
インタビュー中にもあった監督のコメント・メッセージなど、貴重な資料が詰まっている非売品です。
ぜひご応募ください。
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※当選者の発表は、賞品の発送をもってかえさせていただきます。
※非売品につき転売目的のご応募は禁止とさせていただきます。
WEB映画マガジン「cowai」公式 Twitter https://twitter.com/cowai_movie
応募締切 2021年2月20日(日)
【インタビューで紹介された作品】
ノストラダムスの大予言 迫りくる1999年7の月人類滅亡の日 (ノン・ブック) Kindle版
※Kindle Unlimited 会員は追加料金なしで読めます
<解説>
「1999年7月、空から降ってくる恐怖の大王によって、世界は滅亡する!」というノストラダムスの予言書をめぐるノンフィクションで、1974年に刊行されるや、空前のミリオンセラーに。多数の類似本が生まれ、オカルトブームの先駆けとなった。同年、東宝映像の製作、東宝の配給で映画化され、邦画部門の興行収入第2位のヒットとなる。諸般の事情から国内ではソフト化されていない。
『降霊』
DVDは廃盤だが、一部でレンタルが可能。
https://tsutaya.tsite.jp/item/movie/PTA00007YY5M?sc_int=tsutaya_search_image_201610
【作品紹介】
昨年2月に公開し、コロナ禍にもかかわらず、異例の興収 14 億円超えという大ヒットを果たした清水崇監督作品、『犬鳴村』。SNS で話題となり、高校生を中心にたくさんの人が劇場に足を運び、なんと動員数は 110 万人を突破。そんな「恐怖の村」シリーズの第 2 弾となる『樹海村』が2月5日(金)より全国公開中だ。
400館以上の超拡大上映、公開記念スペシャル・イベント(LINELIVE) 開催やバーチャルシアターアプリ smash.での特別動画が配信されるなど、前作以上の話題を振りまいている。
421の上映館はこちらのURLからチェック!!
【上映館一覧】 http://theaters.toei.co.jp/TheaterList/?PROCID=02700
『樹海村』本予告編
【作品情報】
出演:山田杏奈 山口まゆ
神尾楓珠 倉悠貴 工藤遥 大谷凜香
監督:清水崇
脚本:保坂大輔 清水崇 企画プロデュース:紀伊宗之
『樹海村』公式サイト https://jukaimura-movie.jp/
©2021 「樹海村」製作委員会
2021年2月5日(金) より公開中
【清水崇監督関連情報】
『樹海村』の2月公開に合わせ、清水崇監督の傑作ビデオオリジナル『呪怨』『呪怨2』がデジタルリマスター版でBlu-ray 1枚に収録され、2021年2月10日(水)にリリース 決定!また『戦慄迷宮』【8Kリマスター2K特別版】Blu-ray、『呪怨 白い老女』『呪怨 黒い少女』DVDも同日発売!
『呪怨』『呪怨2』<デジタルリマスター版>[Blu-ray]
『戦慄迷宮』【8Kリマスター2K特別版】Blu-ray
『呪怨 白い老女』DVD
『呪怨 黒い少女』DVD
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『樹海村』<小説版>
『犬鳴村』Blu-ray特別限定版
『犬鳴村』Blu-ray
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