大切な過去を映画撮影セットに再現する<タイムトラベルサービス>。体験した男がたどる運命は『ゲーム』か?『ある日どこかで』か?藤子・F・不二雄風の展開も興味深い『ベル・エポックでもう一度』6/12公開

映画


第 72 回カンヌ国際映画祭正式出品作品、フランス映画界のトップに立ち続けるダニエル・オートゥイユ主演最新作『ベル・エポックでもう一度』が、6月12日よりシネスイッチ銀座ほかにて公開される。




2019 年のカンヌ国際映画祭で上映されるや、「甘くて独創的なリチャード・カーティスのような、観客を楽しませるロマンチック・コメディーだ。」(Screen Daily 誌)と評され、その後のフランス公開時には当時全世界でスーパーヒットを記録していた『ジョーカー』から興行ランキングの首位を奪って初登場第 1 位を記録。国内最高峰の賞となるセザール賞 3 部門受賞&8部門ノミネートも果たした大注目の作品が、ついに日本にも温かな旋風を送り込む。


©2019-LES FILMS DU KIOSQUE-PATHÉ FILMS-ORANGE STUDIO-FRANCE 2 CINÉMA-HUGAR PROD-FILS-UMEDIA



監督・脚本・音楽は、『タイピスト!』などに俳優として出演し、本作が監督2作目となるニコラ・ブドス。

主人公のヴィクトルには、長きにわたってフランス映画界のトップに立ち続けるダニエル・オートゥイユ。妻のマリアンヌには、国民的大女優ファニー・アルダン。フランス映画界の至宝と称えられる二人の共演が実現した。
フランスが誇る名優と若き才能のハーモニーで紡ぐ、今を生きるすべてのひとを応援する人生讃歌。















このたび、解禁となった予告篇は、職を失い妻に疎まれ、最新のデジタル機器にも対応できず、時代にも取り残されてしまった元売れっ子イラストレーターのヴィクトル(ダニエル・オートゥイユ)が、息子から“あるプレゼント”を受け取るシーンから始まる。

そのプレゼントは、戻りたい時代を完璧に再現してくれるという、体験型のエンターテインメントサービス<タイムトラベルサービス>だった。

戻りたい時代についてヴィクトルは、「1974 年。運命の女性に出逢った日だ」と、妻を目の前にして平然と答える。そして、映画撮影セットに登場した 1974 年のフランス・リヨンの街並み。


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廃業したはずのホテルやカフェが完璧に再現され、「まるで本物のようだ」と驚くヴィクトル。運命の女性と“あの日のあの場所”で再会を果たし、「出逢った日、君は落ち込んでた」と当時を振り返りながら、大切な過去を再体験していく様子が映し出されていく。全財産を注ぎ込んで延長を希望するほどサービスに夢中になり、「毎日が楽しい」とまるで生まれ変わったかのように生き生きとしていくヴィクトルに対して、「一体何が起きてる?」と予定とは違う流れに困惑するサービス業者。

再現された過去と変化していく現代で様々な思いが交錯し、順調だったはずの体験サービスは思いもよらない方向に進んでいく―!?

このサービスが迎えるエンディングが気になるだけでなく、レトロなセットや 70’s ファッションの再現度にも期待が膨らむ予告篇となっている。

さらに、運命の女性に妻の姿を重ねるシーンや、「妻のおかげで生きてこれた」というセリフから察するに、よい夫婦関係を築くヒントがありそうな映画だ(ちなみに本日は4/22、良い夫婦の日)。














【考察】
『ゲーム』?『ある日どこかで』?それとも『やすらぎの館』?
様々な名作のエッセンスが注がれた<オーダーメイドの時間旅行>


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筆者はまだ本作の試写を鑑賞していないので、あくまで予告編からの検証となる。

元売れっ子イラストレーターの主人公が、息子から、体験型のエンターテインメントサービス<タイムトラベルサービス>のプレゼントを受け取るシーンは、デヴィッド・フィンチャーの『ゲーム』を彷彿させる。
サービスにのめり込む主人公が財産を投げ打つほど、サービスには巨額の費用がかかる点も似ている。




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また、過去の衣装や小道具、シチュエーションを再現することでタイムトラベルを体験するのは、ヤノット・シュワルツ監督、リチャード・マシスン原作の『ある日どこかで』テイスト。


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全体的にほのぼのとしたロマンチック・コメディでありつつ、けっこうシビアで不穏な雰囲気が漂ったり、行き詰まった主人公が特異な体験から人生をやり直そうとする話は、藤子・F・不二雄の短編っぽくもあり。
思えばF先生の作品にも、仕事に疲れた会社社長が会員制クラブで、セットを通して少年時代を疑似体験する『やすらぎの館』という短編がある (母親に見立てた巨人症の女に抱っこされ、少し大きめの母屋のセットで少年の日々にさかのぼっていく)。

もちろんニコラ・ブドス監督がF先生の短編コミックを読んでいる可能性は低いものの、インスパイアを受けた同系統のSF作品があったかもしれない(奇しくも『やすらぎ館』が発表されたのは、『ベル・エポックでもう一度』の過去の設定と同じ1974年)。



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他にも、様々な過去の時代が再現されるサービスや、それを裏側からモニターで指揮するスタッフ、そして彼らが予期せぬ展開が始まるくだりは、『ジュラシック・パーク』のマイケル・クライトンの原作・監督による『ウエスト・ワールド』、疑似体験サービスを受けた主人公の秘められた過去がよみがえるのは、ポール・バーホーベンの『トータル・リコール』や、アニメの『コブラ』っぽい点も興味深い。


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予告編では、“意外な結末”も暗示されているだけに、いろいろ推理や考察をしてみるのも楽しいだろう(そうは言っても、結局はロマンチック・コメディなのかもしれないけど)













≪STORY≫


職を失い妻にも見放された、元売れっ子イラストレーターのヴィクトル。ある日、映画撮影セットに過去を再現する、体験型エンターテイメントサービス〈タイムトラベルサービス〉をプレゼントされた彼は、「1974年5月16日のリヨン」の再現をリクエストする。完璧に蘇った”あの日のあの場所“で〈運命の女性〉と再会した彼は、輝かしき日々の再体験に夢中になり、延長のために妻に内緒で全財産を注ぎ込んでしまう。
しかし、そんな彼を思いがけない出来事が待ち受けていた―


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監督・脚本・音楽:ニコラ・ブドス
出演:ダニエル・オートゥイユ、ギョーム・カネ、ドリア・ティリエ、ファニー・アルダン、ピエール・アルディティ、ドゥニ・ポダリデス
2019年|フランス|カラー|シネスコ|DCP|5.1ch|115分|字幕翻訳:横井和子|原題:LA BELLE ÉPOQUE|R15|
配給:キノフィルムズ 提供:木下グループ
©2019-LES FILMS DU KIOSQUE-PATHÉ FILMS-ORANGE STUDIO-FRANCE 2 CINÉMA-HUGAR PROD-FILS-UMEDIA

公式サイト:https://www.lbe-movie.jp




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