「やっぱり“見たことのない何か”を作りたいなというのはありましたね」絶賛公開中のホラー映画『N 号棟』後藤庸介監督インタビュー

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実際の幽霊団地事件を基にした
“考察型”恐怖体験ホラー映画『N 号棟』絶賛公開中!


2000 年に実際起きた都市伝説にもなっている幽霊団地事件を基に、気鋭の実力派女優・萩原みのりが主演した、“考察型”恐怖体験ホラー映画『N 号棟』が4 月 29 日(金・祝)より絶賛公開中だ。

「cowai」でも一押しの作品として紹介し、高橋洋、清水崇ら数多くの著名人が絶賛した本作。ホラーとして様々な可能性を秘めた作品であると同時に、一方で、“考察型ホラー”と銘打っているだけあって、その謎めいた不気味なストーリーには賛否両論・様々な声が寄せられている。
ますます作品への注目度が高まる中、「cowai」では後藤庸介監督への単独インタビューを敢行。作品を生み出した意図や経緯、制作・撮影の舞台裏をうかがった。

前回の萩原みのり&山谷花純インタビュー記事とあわせて、映画『N号棟』の禍々しくも奥深い魅力に触れていただけたら幸いだ。






©「N 号棟」製作委員会
















「やっぱり“見たことのない何か”を作りたいなというのはありましたね」
『N 号棟』公開記念 後藤庸介監督インタビュー





――『N 号棟』とても面白かったです。Jホラーの可能性と、その先の怖さを見たような気がします。

後藤: よかったです。特にJホラーを意識したというわけじゃないですけど。

――たしかに作品の雰囲気は、Jホラーっぽい部分もあれば、そうでない部分もあります。例えば、幽霊の見せ方も、従来のパターンを踏襲している部分もあれば、そこから一歩踏み込んだ独特の怖さが感じられます。

後藤: 脚本自体はあまりセオリーに則らず、感覚で書いている部分があって、ただただ(怪異に立ち向かう)主人公に乗っかっていくような話にしてる分、ちゃんと見せるべきところは見せていこうと思いました。観客を飽きさせないように様々な仕掛けを施して作っている部分はあったと思います。

――ホラーの場合、観客が怖がってくれることが一番のサービスと思います。ただ、最近は観客も慣れてしまって、髪の長い女の幽霊が出てくるだけで、ちょっとコントっぽく見えてしまうことも。

後藤: 幽霊や心霊現象も、見せるところと、見せないところのバランスがとても難しいですね。基本的には映画ですし、できるだけ長回しでリアルに撮りたいとは思ったんですが。

――リアルといえば、団地内でのラップ現象などもリアルで不気味でした。

後藤: ありがとうございます。ああいうシーンでは絶対、特殊効果を使いたくなかったんです。だから、いわゆるラップ現象などの描写は全部アナログでやっています。

――CGや特殊造形、VFXも全く使っていない?

後藤: 使ってないですね。その分、団地の奇妙な空気感を出すのは苦労しました。アナログですし、恥ずかしながら低予算なんで。下手にやると、ただただチャチくなっちゃう。その辺の塩梅ですかね、難しかったのは。ラップ現象も、実際にはもっと派手な事例はあったんですが、それをそのままやると失敗しそうだなと。結果的にものすごくシンプルな現象を扱うことになりました。最終的には、“音”の力で何とかなりました(笑)。


©「N 号棟」製作委員会




――団地の異様な情景をダイナミックにとらえたカメラワークや作りこまれたライティングなど、限られた予算の中でも、邦画ホラー映画離れした映像センスが随所に感じられました。

後藤: その分、時間がかかったというか、よくやったなっていう。
あまりジメジメした雰囲気だけで見せるのはやめたいっていうのは確かにありましたね。








映画美学校では、
「それホラーしか教わってないんじゃないの」っていう講師陣で(笑)。





――最近の邦画では、本作のようなオリジナルの企画がなかなか通らないと思いますが、この作品が作られた経緯を教えて下さい。

後藤: もちろん低予算という枠組みの中で、ですが、プロデューサーの菅谷さんと「どういうものを作りたいのか」という所から企画をスタートできたのは恵まれていたと思います。
そこから二人で話し合って、もしホラーをやるなら、こう…何だかわからないもの、わからないものが一番怖いじゃないか。そういうのをやりたいねって。「わからせないこと」とか、「はっきり見せないこと」とか、そういう要素が元にあったんです。

――具体的に意識した作品はありますか

後藤: 黒沢清さんの『CURE』が大好きなんですけど。




――ああ、なるほど。わからない不気味さという意味では共通していますね。

後藤: そういう肌感を目指しているのはあります。

――確かに『CURE』も考察型ホラーの面はありますが、でも『N 号棟』は『CURE』ともまた違うというか。

後藤: もちろん。そうですね。

――そこは監督のオリジナリティ?

後藤: いやあ、予算の限界じゃないですか?(笑)
でも、幸いものすごくいいロケ場所が見つかったので。ここで何かをシンプルにやってみようって、そこからスタートしました。

――例えば、団地の撮り方一つとっても、Jホラーらしい、じめっとした静的な怖さが漂うシーンもあれば、対照的に西洋ホラーっぽいダイナミックで躍動感のある動的な怖さもあります。その辺りはやはり既存のJホラーとは違ったものを目指したのでしょうか。

後藤: そうですね。意識していないと言ったらうそになるかもしれません。僕も昔、映画美学校に行っておりまして、黒沢さんだったり、高橋洋先生だったり、清水(崇)さん、中田(秀夫)さんも先輩なので。ちゃんと全部(作品を)見てきた上で、あえてというわけではないですけど、やっぱり“見たことのない何か”を作りたいなというのはありましたね。

――やはり、その系統なんですね。

後藤: そうです。皆さんの薫陶を受けて。

――清水監督とも年齢が近いですが、映画美学校では交流があったんですか。

後藤: 僕は脚本コースの第二期生でして、(清水監督のいた)監督コースじゃないので、交流はないですね。

――脚本を勉強されていたのですか。この作品のオリジナル脚本もご自身で書かれて、なおかつ内容や構成もしっかりしていることに納得しました。

後藤: 映画美学校では、高橋洋さんが先生でしたし。あと、小中(千昭)さんとか三宅(隆太)さんに教わりました。って、よく考えたら、それホラーしか教わってないんじゃないのっていう講師陣ですね(笑)。まあでもそういう影響をめちゃくちゃ受けてると思いますね。
ただ、諸先輩方のJホラーも見てますけど、西洋ホラーが好きなのかもしれません。

――具体的に西洋ホラーで好きな作品は?例えば、著名人のコメントでは『ミッドサマー』に触れる人が多いのですが。

後藤: 好きなのは『遊星からの物体X』『ジェイコブスラダー』とかですかね。『ミッドサマー』ももちろん影響を受けています。






――バリバリの心霊ホラーはあまり興味がない?

後藤: 嫌いではないですが、僕自身 (幽霊が)見えていないからかもしれませんけど、人間であるとか、出来事であるとか、手触りとして“そこにあるもの”が好きなんだと思います。“そこにあるけど、それが何かわからない”というのが好きなのかもしれません。

――それは監督の過去の作品にも反映されているのですか?

後藤: 『世にも奇妙な物語』をしばらく担当していたんですけど、その中の「ががばば」っていう作品は、なんだかよくわからないけど検索すると……って話ですね。

――「ががばば」は見た人の間でかなり話題になりました。たしかに、よくわからないけど得体のしれない不気味さというか、じわじわと後を引く怖さがあります。

後藤: ただ、怖いという意味では、僕自身あんまり怖いって思わないたちで。
僕が一番怖かった体験は何かなって思い返した時に、「ひらかたパーク」という遊園地がありまして。岡田准一さんがいつもふざけたパロディーポスターを披露している、大阪の枚方市にあるとても個性的な遊園地なんですけど。僕が言うのもおこがましいですけど、いい感じにサブカルといいますか、非常にユニークな場所で。学生時代、関西にいた時、何気なく入った「ひらパー」が今までで一番怖かったんです。

――それはお化け屋敷か何かですか?

後藤: はいそうです。比較的広い屋敷の中に入っていくという。当時、大学生男子、三、四人とかで。中の、細くて暗い通路をひたすら歩いていく。もちろんそれなりに雰囲気があったり、おどろおどろしい音楽がかかってたりしたと思うんですけど……しばらく何も出てこないんですよ(笑)。するとその内に、「次、この角を曲がったら絶対何かが出る」と勝手に恐怖していくんですよね。ところが、次の角も何も出ないんです。そう、次の角も、その次の角も……。それを繰り返して、なんと最後まで何もなかったんですよ(笑)。

――ええっ(笑)、覚めない悪夢のような…それをアトラクションで体験できるのは、ある意味で画期的ですね。

後藤: 「ひらパー」さんが狙って作ったんだとしたら、すごいなと。一回でも何か出てきたら、その瞬間は驚くけど、後はもう怖くない。
そういう原体験もあって、確実にわからない何かっていうものにひかれて、今回のようなホラーを作りたいと思いましたね。


©「N 号棟」製作委員会












みのりちゃんって、すごく生き急いでる感じがしたんですよ。


©「N 号棟」製作委員会




――幽霊の見せ方もそうなんですけど、主人公の史織というキャラにも、普通のJホラーのヒロインとも異なる、監督の意図や視点が反映されているように思います。幽霊を信じないとか、でも死は怖いとか、あとJホラーのヒロインとしてはたくましすぎる面もあると思います。そうした難しいキャラを、観客の共感を得ながら、ホラー映画の中でしっかり成立できたのは、監督や脚本の力と思いますが。

後藤: それはもうみのりちゃんの芝居によるところが大きいと思います。
ああいうキャラクターが、ああいう場所に行くと、いい化学反応を起こすんじゃないかなって狙いはありましたけど。
僕自身を投影してるところも大きいので、そこがもしかしたらうまくハマったかもしれないです。でも説得力を出してくれたのは、お芝居の力だと思いますね。

――史織は萩原さんありきのキャストだったんですか?

後藤: なんか(彼女の)普段のお芝居を見ていて、いい意味ですけど、すごく生き急いでる感じがしたんですよ。

――ああ、なるほど。

後藤: みのりちゃんのあのエネルギーっていうか、生きざまっていうか、絶対生き急いでる人だなと。
僕もそういうタイプなんで。同類なんじゃないかと思って。会わせてもらったら、もう見事にそんな感じだった。どこまでご本人が意図しているかわかりませんけど、そこはうまくハマったと思います。

――現場では何か芝居についてお話をされたんですか。

後藤: いや、最初に話し合えたんで、現場ではもう何も話す必要がなく、やっていただけたって感じです。

――朝も夜もずっと団地にこもって撮影して、萩原さんも「もう頭おかしくなる」っておっしゃってました。

後藤: 制作側としては本当すみませんとしか言いようがないんですけど。さっきも言いましたけど、(団地の)物件が素晴らしかった分、場所も遠くて、環境が良くなかったといいますか。本物の廃団地なので、電気も水もない中で、そこから出ずにずっと撮っていました。

――撮影は何日ぐらいかかったんですか?

後藤: 11とか12日ぐらいですね。仕掛けも多いですから時間は全然足りないですね。
とにかくキャストとスタッフの皆さんの頑張りで、なんとか撮り終えることができました。

――最後に観客にメッセージをお願いします。

後藤: 僕自身、死が怖い。死が怖いがゆえに、普段生きづらい。そういう思いをかなり投影して作っているところがあります。そう思われない人もいるでしょうし、“生きる”“死ぬ”に対しての思いって、別々かと思うんですけど、でも絶対、誰しも必ず死ぬ、というところに何か意識があると思うんです。「どう死にたいか」、もしくは「どう生きたいか」という想いと共に見ていただけると、その人次第の解釈が生まれますし、それによってすごく楽しんでもらえたら嬉しいなと思います。
ちなみに僕が死を怖がらなくなるなら、これしかないという自分に対する答えというか、救いみたいなものを映画のラストで表現しているつもりです。

――ありがとうございました。






後藤庸介 (Yosuke Goto/脚本・監督)

1977年11月21日生まれ、神奈川県出身。
「世にも奇妙な物語」で数多く監督・プロデュースを務める。放送25周年を記念したホラー作品「ががばば」は、怖すぎて1日で14万ツイートされるほどの大きな話題となる。その他ドラマでは、「禍話」(’21)「未解決事件SP 世田谷一家殺人事件」(’20)「ボイス 110緊急指令室」(’19)などを手掛ける。映画作品としては、ヴィレッジヴァンガードを舞台としたドラマシリーズ「ヴィレヴァン!」を映画化した『リトル・サブカル・ウォーズ 〜ヴィレヴァン!の逆襲〜』(’20)がある。
最新作は、同時複数恋愛を題材とした恋愛サスペンスホラー「ラブシェアリング」。




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INTRODUCTION

「これは夢か、幻か、現実か、それとも…」

実際の幽霊団地事件を基にした“考察型”恐怖体験ホラー映画


©「N 号棟」製作委員会




心霊現象、超常現象…実際に起きた幽霊団地事件を基に生まれた超体験型・都市伝説ホラー映画『N号棟』。

夜中、誰もいない部屋から響く音…勝手に開閉を繰り返すドア…チャンネルが勝手に切り変わるテレビ…とある団地の一棟で数多の怪奇現象が報告される。現地には大勢の警察やマスコミ、霊能者が押し寄せ、大パニックとなった怪事件だが、“建て付けの問題など、欠陥住宅であることに起因する現象だった”として、ある日突然事態は収束する。

驚くことに、その怪奇現象の発信源は他でもない住人たちだったとも言われる。
が…その裏で本当は何が起きていたのか?真実を知る者はだれ一人としていなかった…。

2000年、岐阜県富加町にて実際に起きた幽霊団地事件を基に、「世にも奇妙な物語」を数多く演出およびプロデュースした奇才・後藤庸介監督による解釈で、実際の事件を超える未知の“考察型”恐怖体験ホラーが誕生した。

©「N 号棟」製作委員会



主演には、昨年末公開の主演作『成れの果て』での好演も記憶に新しい、近年話題作への出演が相次ぎ作品ごとにその表情を大きく変え、観る者を魅了してやまない、いま業界で最も注目される女優のひとり萩原みのり。

共演には、子役時代から数々の作品に出演している実力派の山谷花純。『夏、至るころ』(20)、『衝動』(21)と主演作が続く倉悠貴、国内外問わず多くの賞を受賞している名女優筒井真理子ほか、超個性派バイプレイヤー岡部たかし、諏訪太朗、赤間麻里子などが脇を固める。









STORY

©「N 号棟」製作委員会



とある地方都市。かつて霊が出るという噂で有名だった廃団地。

女子大生・史織(萩原みのり)が同じ大学に通う啓 太(倉悠貴)・真帆(山谷花純)と共に興味本位で訪れると、なぜかそこには数多くの住人たちがいる。

3人が調査を進めようとすると、突如激しい<怪奇ラップ現象>が起る。そして、目の前で住人が飛び降り自殺をしてしまう・・・。

驚く3人だが、住人たちは顔色一つ変えない。
何が起きているのか理解できないまま、その後も続発する、自殺とラップ現象……住人たちは、恐怖する若者たちを優しく抱きしめ、仲間にしようと巧みに誘惑してくる。

超常現象、臨死浮遊、霊の出現…「神秘的体験」に魅せられた啓太や真帆は洗脳されていく。
仲間を失い、追い詰められた史織は、自殺者が運び込まれた建物内へ侵入するが、そこで彼女が見たものは、思いもよらぬものだった…!



©「N 号棟」製作委員会
©「N 号棟」製作委員会











<キャスト>
萩原みのり 山谷花純 倉悠貴 / 筒井真理子

<スタッフ>
監督・脚本:後藤庸介
プロデューサー:菅谷英一
制作会社:MinyMixCrieati 部
配給:SDP

<作品概要>
製作年:2021 年
上映時間等:103min/カラー/シネスコ/5.1ch ©「N 号棟」製作委員会


◆『N 号棟』公式 HP ◆
https://n-goto.com




絶賛公開中



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