映画監督、鶴田法男が4年がかりで取り組んだ純中国製の新作ホラー・スリラー映画『ワンリューシュンリン(原題)』(网络凶铃/網絡凶鈴 直訳「ネットワークのリング」)。
当「cowai」でも、本作の中国本国での公開決定などの情報を紹介してきたが、ここにきて続報が入ってきた。
中国での公開館は5,000館。告知通り、ハロウィンウィークの10月30日に公開された。
日本資本は一切入っておらず、日本公開も現在未定ながら、期待は高まるばかりだ。
今や北米マーケットを上回る規模となった中国映画界。
新型コロナウィルスの影響で新作映画の公開が延期され、7月20日から映画館も再開され、通常の興行に戻りつつある。
そんな中、ハロウィンウィークとなる10月30日に中国5,000館で公開された『ワンリューシュンリン』(网络凶铃/網絡凶鈴)は、2016年秋、北京の映画会社から監督・鶴田法男に依頼があり取り組んだ純中国製ホラー・スリラー映画。
中国でも『リング』シリーズをはじめとしたJホラーは大変に人気があり、影響を受けた国産ホラーやスリラーがネット映画を中心に多数作られている。
しかし、本格的なJホラー演出が出来る中国の監督はいないという理由から、90年代初頭のビデオ映画『ほん怖(ほんとにあった怖い話)』(現在は稲垣吾郎ホストでTVシリーズ化)が後の黒沢清監督、中田秀夫監督、清水崇監督らの作品に影響を与えたことで“Jホラーの父”と知られる鶴田法男に白羽の矢が立った。
中国の人気作家マ・ボヨン(马伯庸)のスリラー小説「她死在QQ上」(直訳「彼女はQQで死んだ」、※参照)の映画化で、「呪われたネット小説を読んだ者が、小説と同じ死に方で死んでいく」という物語。鶴田法男が監督だけでなく、中国の作家と共同で脚本を完成させた。オーソドックスなJホラーと中国映画らしさを見事に融合させた新鮮な物語になっている。
主演は中国Diorなど多くの一流ブランドのモデルを務めるスン・イハン(孙伊涵)。撮影当時19歳で役者としては新人。しかし、『リング0』の貞子役に仲間由紀恵が大抜擢された時もやはり19歳だったので、「運命的なものを感じる」と鶴田は語っている。
なお、スン・イハンはコミック『花より男子』の中国実写ドラマ『流星花園2018』で藤堂静役を演じておりNetflixで日本でも鑑賞可能だ。
もう一人の主演は、台湾の人気俳優フー・モンポー(傅孟柏)。ホウ・シャオシェン製作総指揮『范保德』で2018年の台北金馬奨新人賞にノミネートされ、ジャッキー・チェン製作総指揮のドラマ『成化十四年』にも主演。今年、台湾大ヒットの映画『返校 Detention』でもメインキャストとして出演している。
通常では公開前日に鶴田監督が自ら中国で舞台挨拶をする予定だったが、コロナウィルスの状況により渡航を断念。
ホラー・スリラー映画という事で、カップルの客層を中心に(10月30日〜11月1日)3日間で1億円の興行収入となっており、内容の規制が多い中国で、日本式の演出がどのように観客に受け入れられているのか、中国はもちろん、日本や海外からも注目を集めている。
【鶴田法男監督コメント】
中国映画界から私のようなホラー専門監督に声がかかったことにまずは驚きました。一方で、日本と違って様々な制約がある難しさに大いに悩みました。ですが、喜怒哀楽と同様に、恐怖も人間に必要な感情です。そこには国境も民族もありません。日本生まれの良質な恐怖を中国の皆さんに届けることで、両国の更なる交流のお役に立てるならばと全身全霊で挑ませていただきました。自分のホラー作品の中で最高の1本が完成したと思っています。日本の皆さんにも楽しんでいただける日がくればと願っております。
中国のネットに配信中の予告編(日本語字幕付き)
【ストーリー】
女子大生シャオノー(スン・イハン)の従姉が謎の死を遂げた。警察は自殺と判断したが、そこには呪われたネット小説「ザンセイロウ(残生楼)」が絡んでいた。その小説を読み呪われてしまったシャオノーは、記者志望の男子学生マーミン(フー・ムンポー)と共にその恐怖に挑んでいくが……。
【中国の公開劇場の様子】
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