鬼才ジョン・カーペンターד恐怖の工場”ブラムハウス製作
全米 No.1 ヒットシリーズ待望の新作
『ハロウィン KILLS』本日10/29(金)公開!
全米で No.1 ヒットを記録した映画『ハロウィン』の続編となる『ハロウィン KILLS』がついに本日10 月 29 日(金)のハロウィンシーズンに TOHO シネマズ日比谷、渋谷シネクイントほかにて公開された。(配給:パルコ ユニバーサル映画)。
今回は作品のレビューをご紹介する。
日本での公開に先駆け、10 月 15 日(金)よりついに全米での公開がスタートした『ハロウィン KILLS』。
公開 3 日間で 5,035 万ドルと日本円にして 50 億円超えとなる驚異的なオープニング成績を叩き出し、『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』を抑え首位デビューを飾った。
2021 年公開のホラー映画としては『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』の 4,754 万ドルを超え、ナンバー1 ヒットのホラー映画となった。(数字は Boxofficemojo 調べ)
公式サイト:HALLOWEEN-MOVIE.JP / 公式 Twitter:@HALLOWEEN_MOV
【レビュー】
もはや一作目を超えたシリーズ最高傑作。
文句はない。スラッシャー映画とは何か、すべてが語られる。
今の時代、こんな映画をスクリーンで見られるホラー・ファンは幸せだ。
過去のシリーズを見てない人も心配なし。いや、むしろ全く見ていない人の方が衝撃度が高まるだろう。
内容は「マスクをかぶった殺人鬼が記念日に人々を次々と襲い惨殺する」という『ハロウィン』の第一作(1978)が確立した“スラッシャー映画”の基本フォーマットさえ覚えていればいい。あとは何もない。ほんとに何もない。ただひたすら殺戮があるのみ。この見事な潔さがこの映画を圧倒的に面白いものにしている。
そうだよ、ヒロインの苦悩とか、殺人鬼の生い立ちとか、過去のトラウマとか、三枚目がひどい目に遭うとか、そんなのいらないよね(一応、お約束だから、ある程度は入っているけど、もはやオマケにすぎない)。
とにかくハロウィンの夜、“伝説の怪物”ブギーマンと化したマイケルが無差別に殺しまくる。マイケルと対決する街の連中もいかれた奴らばかりで「悪魔を殺せ!殺せ!殺せ!」とタイトル通りにハロウィン・ナイトにエスカレートする。
前作ではただ一人、いかれたオバサンだったジェイミー・リー・カーティスの妄執が、町全体に伝染して、娘や孫娘はもちろん、もはや全員が基地外状態。
そして肝心の殺しの描写はどれも一工夫あって、すべての演出に一ひねり加えられている。所々に妙なカットつなぎや編集の間の悪さもあるのだが、それさえも違和感を持たせるためにわざとやっているのではないかと疑いたくなるほどだ。
ドラマはマイケルと街の住人の全面対決に収れんされ、すべての人物、すべてのエピソードが殺戮を引き立てるように巧妙な仕掛けがなされている。だからシンプルな物語なのに緊張感が持続して最後まで飽きさせない。
なぜマスクをかぶったマイケルが不死身なのか。その不気味さ、訳の分からなさ、(伝説のブギーマンが心霊的な怪物であることを匂わせるように)得体の知れない怖さもまたホラーとして際立つ。
実はこの独特の雰囲気、オリジナルの第一作を初めて見た観客が多くが感じたこと。結果として、前作にも増して、一作目のリメイク的なイヤ~な雰囲気がじわじわと漂う。
まあ、シリーズのファンとしては、いきなり前作の続きからスタートする物語は、まんま「ハロウィンⅡ」(1981)からのオマージュだろうし、オリジナルの登場人物が年齢を重ねて再登場するなど、前作同様に嬉しいサプライズはある。しかし、それらはあくまでサービスに過ぎない。
作品としては、誰もがあっけにとられる程の、ずっしり重量級に満ちた、それでいて麻薬のような中毒性のある、見ごたえ満点の傑作スラッシャー・ホラーに仕上がっている。これ単体の作品としても高く評価したい。
第一作からヒロインを続ける、ジェイミー・リー・カーティスによれば、監督は今回の40年ぶりの続編を三部作で構想し、二作目はあえてドラマ性を排除して、派手な見せ場をこれでもかと盛り込む方針だったそうで、その戦略が見事にハマったわけだ。
彼女はインタビューで「続編として、とてもエキサイティングだと私は思う。これは退屈させない。退屈ではなく、強烈」と答えている。まさにその通りだ。
この監督って、こんなに巧かったっけ?と思うぐらい前作とは比較にならないぐらい出来が良い。
いや、ぶっちゃけ言うけど、そもそも『ハロウィン』のオリジナル第一作(1978)って、そこまですごいわけじゃないよね?ジョン・カーペンターなら、もっとすごい作品、好きな作品はいっぱいあるんだし。スラッシャー映画の定義を確立した功績は素晴らしいけど、地味と言えば地味。
まあ、怒られてもいいから、「この『ハロウィンKILLS』こそ、シリーズ最高傑作!」と声を大にして言っておきたい。
ちなみにジェイミーは、今年の第78回ヴェネチア国際映画祭での本作のワールドプレミアに登壇し、金獅子生涯功労賞を受賞したんだけど、筆者も見る前は「スラッシャー映画がヴェネチアだと!?」と目を丸くしたが、本作の、暴力と殺戮の純度を芸術レベルにまで研ぎ澄ました出来は、いかにもヴェネチア映画祭好みか。
もちろん「出来が良い」というのはあくまでホラー映画としてだから、間違っても、カップルや普通の映画ファン、ホラーがダメな人にはお勧めしない。カップルなら黙って『死霊館 悪魔のせいなら、無罪』を見に行った方がいい。あっちは人に優しいホラーだ。
しかし、あなたが人外のホラー映画ファンを自負するなら本作は劇場でしっかり見るべきだ。
このがんじがらめの規制だらけのご時世に、これほどの突き抜けた狂気がほとばしる作品が上映される奇跡。そして、それをスクリーンで楽しめる幸せをホラー・ファンはかみしめるべきだ。こんな機会はめったにない。筆者も試写で鑑賞したが、ぜひ劇場でも何度か見ようと思う。とにかく劇場に急げ!
【作品情報】
監督:デヴィッド・ゴードン・グリーン
脚本:スコット・ティームス、ダニー・マクブライド、デヴィッド・ゴードン・グリーン
製作総指揮:ジョン・カーペンター、ジェイミー・リー・カーティス、デヴィッド・ゴードン・グリーン
製作:マレク・アッカド、ジェイソン・ブラム、ビル・ブロック 音楽:ジョン・カーペンター、コーディ・カーペンター、ダニエル・デイヴィス
出演:ジェイミー・リー・カーティス、ジュディ・グリア、アンディ・マティチャック、ウィル・パットン、トーマス・マン、アンソニー・マイケル・ホール
配給:パルコ 宣伝:スキップ
2021 年/アメリカ/カラー/デジタル/英語/原題:HALLWEEN KILLS/106 分/R-15