【連載再開!】OV版『ほんとにあった怖い話』の記念すべき1作目の発売日30周年に連載再開!「Jホラーのすべて 鶴田法男」第五回「OV版『ほん怖』撮影秘話①」 秘蔵資料と共に明かされるJホラー誕生の真実!

pick-up オススメ 連載・Jホラーのすべて 鶴田法男



Jホラーはいかにして生まれ、世界的に注目されるようになったのか?
“Jホラーを知り尽くした男”が明かす、Jホラーの知られざる舞台裏!



『リング0』「ほんとにあった怖い話(ほん怖)」『おろち』などで知られる映画監督、鶴田法男
最近も、4年がかりで取り組んだ100%中国資本の新作ホラー・スリラー映画『ワンリューシュンリン(原題)』(网络凶鈴/網絡凶鈴)が10月30日より中国全土約5,000館で公開されるなど、精力的な活躍を続けている。
手掛けた映画、ドラマ、ビデオ、小説は優に200本は超え、その多くが高い評価を得ている。
中でも、90年代初頭のオリジナルビデオ映画版『ほんとにあった怖い話』(現在は稲垣吾郎ホストでTVシリーズ化)などが、後の黒沢清監督(『CURE』『回路』『スパイの妻』)、中田秀夫監督(『リング』『事故物件 恐い間取り』)、清水崇監督(『呪怨』『犬鳴村』)らの作品に影響を与えたことで“Jホラーの父”“Jホラーの先駆者”と呼ばれている。
この連載企画「Jホラーのすべて」は、そんな彼の作品を中心に、創作の舞台裏や、演出の秘密に迫りながら、今一度、「Jホラーとは何か?」を検証し、その全貌を明らかにしていく。



<バックナンバー>

序章「監督引退」
第一回「原点① …幽霊を見た… 」
第二回「原点② 異常に怖かった」
第三話「オリジナルビデオ版『ほん怖』誕生」
第四回「幻の『霊のうごめく家』初稿」



鶴田法男監督









連載企画「Jホラーのすべて 鶴田法男」

第五回「OV版「ほん怖」撮影秘話①」



※記事中でもご紹介した、オリジナルビデオ版『ほんとにあった怖い話』全三巻を世界で唯一配信しているビデオマーケットより、各巻の場面写真をご提供いただきました。
また、鶴田監督より、フジテレビ版「ほん怖」で後にリメイクされた「赤いイヤリングの怪」の、セットなどの貴重な撮影現場の写真をご提供いただきました。記事中の該当部分で掲載しておりますので、ぜひご覧ください。





■鶴田法男監督(以下、鶴田)、聞き手・福谷修(以下、福谷) ※は注釈





OV版『ほん怖』記念すべき第一作目の発売より30周年!


福谷「いよいよ、オリジナルビデオ版『ほんとにあった怖い話』の撮影に入る話ですが……その前に、連載が途切れてしまい、半年以上間が空いてしまったことをお詫びします。変失礼しました。
言い訳になりますが、私が製作している新作ホラー・アニメ映画などが諸般の事情からスケジュールがかなり押してしまい、調整に追われていました。
この「Jホラーのすべて」という企画は中途半端な形で取り組みたくありませんでしたので、タイミングを見ていたのですが、間が空いてしまい、申し訳ありません」


鶴田「いえ、私もこの機会にしっかり自分の過去の作品について記録しておきたいと思ってますから問題ないです。
それに、オリジナルビデオ版『ほんとにあった怖い話』の記念すべき1作目は1991年7月5日発売なんですよ。だから本日7月5日にこの記事が再開されたら、それはそれで験が良いのではないですかね(笑)」




記念すべき第一作・オリジナルビデオ(OV)版『ほんとにあった怖い話』VHSジャケット1991年7月5日発売。現在は廃盤。




福谷「おおお!これはぜひ再開しないとダメですね。30周年おめでとうございます!」


鶴田「ありがとうございます」


福谷「今後は途切れないように全力を尽くします。」


鶴田「はい、よろしくお願いします(笑)」






【OV版『ほん怖』を鑑賞する方法】


福谷「今回紹介するオリジナルビデオ版『ほんとにあった怖い話』はビデオ(VHS、DVD)が廃盤で、レンタルも現在ほとんど流通していません。
配信もAmazonなど主要なメディアは無く、なかなか見る機会は少ないと思われがちですが、なんと唯一、ビデオマーケットでのみ好評配信中です。
ビデオマーケットは国内最大級のマルチデバイス動画配信サービスで、マニアックな作品が多いことでも有名です。
の傑作『霊のうごめく家』を含む、全三巻(各三話、全九話)がいつでもすぐ鑑賞できます!
一部タイトルはサブスクにも対応し、単品レンタルも比較的低価格(実質100円ちょっと)と思いますので、未見の方はこの機会にぜひ!」



<ビデオマーケットのOV版『ほん怖』ページ(一作目から一巻ずつ紹介)>

ほんとにあった怖い話(一作目)

ほんとにあった怖い話 第二夜

新ほんとにあった怖い話 幽幻界(三作目)




そして、今回





映画監督になるための新しい方法とは?




福谷「では話を戻しましょう」


鶴田「それで、こちらからも、OV版『ほん怖』の資料を用意しました」



1991年7月5日発売『ほんとにあった怖い話』VHSビデオソフトのビデオレンタル 店向けに配布された注文書。(鶴田法男所蔵)



鶴田「これは当時のビデオレンタル店向けの注文書ですね。リリースの前に配布されます」


福谷「≪注文書≫とは超レアですね。VHSのジャケットはまだ見かけますが、OV版『ほん怖』一作目の発注書なんて見たことがないですよ(笑)。
今でも注文書自体はあると思いますが(当然ネットで発注)、当時は町中にチェーン店以外の(個人経営などの)ビデオレンタル店がたくさんあって、この注文書で店ごとに予約締切日までに発注して入荷していたんですよね」


鶴田「そうですね」


福谷「この注文書が出回るころには、すでに撮影は終わっているわけです。
そして、どれだけ注文が入るかで、売り上げがほぼ見えてきて、シリーズ化になるか、打ち切りになるかが決まると思います。
その結果はまずは置いといて……。
前回のお話では、OV版『ほんとにあった怖い話』の企画書がJHVに採用され、具体的な制作に入ります。
いよいよクランクインです。
鶴田監督は自主映画の出身で、それまで助監督やプロの映画監督のご経験はありませんよね?」


鶴田「ないですね。ただ、当時はオリジナルビデオが大流行し始めていたから、(ビデオ)会社の社員が監督を始めちゃったりってことが結構あったんですよ。だから今から考えるとそれほど不思議ではなかった。」


福谷「ビデオメーカーに勤めていた知り合いも、『鶴田さんのようにメーカーの営業や宣伝から映画監督デビューできる道筋ができた』と言っていました。その分野でも有名人と言うか先駆者ですからね」


鶴田「1996年に私のオリジナルビデオ『亡霊学級』発売に併せてアップリンクで『鶴田法男監督特集上映』があったのですが、その時に、パイオニアLDCの営業だったか、宣伝職の会社員だった柴田一成さんが訪ねてきて色々と質問を受けました。
彼も監督をやりたいということで、私が憧れの存在だったようです。その後、パイオニアLDCが電通に吸収されてジェネオンエンタテイメントになって柴田さんもそこに移ったわけですが、ジェネオンに勤めたままで、『リアル鬼ごっこ』を監督してヒットさせたのはご存じと思います」




福谷「そうですね、まさしく私の知り合いは、柴田です。
最近は、ゾンビのコミックの実写映画版『がっこうぐらし!』も監督しています」


鶴田「あ、柴田監督でしたか(笑)。でも、当時は自社のオリジナルビデオ作品の監督をしていた社員さんは他にも居ましたね。
ま、とにかく、私は制作会社ではなくてビデオソフト会社の営業や宣伝職から監督業を始めた先駆者でもありましたね。」







一番撮りたかった『霊のうごめく家』が、
OV版『ほん怖』の一作目から消えた理由



福谷「ちなみに『ほん怖』の企画書を通すために書かれた最初の脚本は、後の『第二巻(第二夜)』の二話目となる、あの傑作『霊のうごめく家』です。
企画書の冒頭には『※本作はOV版「ほん怖」一作目の二話目に当初は予定されていた』とあります。
企画書に添える程のタイトルですから、当然、一番映像化したかったと思います。なぜ、第一巻から第二巻に移動したのでしょうか」


鶴田「OV『ほん怖』シリーズはジャパンホームビデオ製作ですが、1作目は小椋悟プロデューサーに現場を任せたんですね。
小椋さんは後に『下妻物語』、『姑獲鳥の夏』、『蟲師』などをお作りになるプロデューサーです。
で、小椋Pと準備を進めていたら、ある日、『この「霊のうごめく家」は登場人物が多くて予算にはまらないから、これに変更しなよ』って、原作コミックの中の一遍だった『幽体飛行』を渡されたんですよ。
『霊のうごめく家』は幽霊役を含めて5~6人のキャストが必要だけど、『幽体飛行』は小学生の少女の主人公が居れば、後はエキストラ的な台詞のない役ばかりなのでキャストでお金が掛からない(笑)。
当時は右も左も分からなかったから、言われるがままに変更することになったんです」


OV版「ほん怖」第二話「幽体飛行」




福谷「そういう事情があったんですね。監督の意思ではなかった」


鶴田「ええ」


福谷「結果、最初のOV版『ほん怖』は、第一話が、スイミングスクールの更衣室で女高生が怪異に襲われる『ひとりぼっちの少女』、第二話が『幽体飛行』、第三話が、落ちていた赤いイヤリングを拾ったばかりに、女子高生とその友人が自宅でおぞましい現象に見舞われる『赤いイヤリングの怪』となりました。
第一話と第三話を選ばれた理由は?」


鶴田「『ひとりぼっちの少女』は主人公の女の子が更衣室のドアの下の隙間に白い足を見たという記述が凄くリアルに思ったんですね。それにプラスして、怖い目に遭ったのに、更衣室でひとりで泣いている幽霊の子が可哀想だと最後に結ぶ一言にぐっときてしまったんです。
リアルで怖い上に、それだけでは終わらない切なさがあるのでドラマ向きだと判断したんです。
『赤いイヤリングの怪』は、天窓に何度も女がぶつかってくるのがとにかく怖いと思ったんです。」


OV版「ほん怖」第三話「赤いイヤリングの怪」より、天窓を見上げるヒロイン。“天窓の血まみれ女”の場面写真は記事後半に掲載




福谷「企画書の段階では、ご自身で脚本を書かれていましたが、作品のクレジットでは、小中千昭さんとの共同脚本です」


鶴田「脚本も最初はすべて自分で書いてました。でも見よう見まねで書いていたので、小椋プロデューサーが『やっぱりベテランに任せた方がいいよ』ってなって。
それで、前回もお話しした通り、小中さんを紹介されました。
でも、小中さんも『邪願霊』ではじめて脚本家デビューした人で全然ベテランじゃなかったんですよね(笑)。小中さんも突然、小椋プロデューサーに『「ほんとにあった怖い話」を手伝ってくれ』と振られてビックリしていたらしいです」


邪願霊




福谷「で、鶴田さんの書いた脚本を小中さんが直して決定稿になった?」


鶴田「そうですね。僕がもともと書いてた脚本を手直ししてもらって。
実は、記念すべき第1作の第一話『ひとりぼっちの少女』っていうのは、僕が書いた脚本に、ほとんど小中さんは手を入れていないですね。セリフをちょっと、当時の女子高生風の言い回しに変えましたけど、全体としては何も変えてないですね」


福谷「脚本は原作の漫画に忠実なのでしょうか?もちろん実写の演出を想定してある程度脚色されたと思いますが」


鶴田「先にお話をしたとおりで、原作を読んだ時、プールの更衣室で、誰もいないはずなのに、更衣室の扉がひとつ閉まっちゃっていて、下の隙間が見えたので、主人公がそこをふっと見たら、女の子の足先がちろっと見えたんだけど、すぐ暗闇の方に引っ込んで……っていう描写が漫画にあったんですよ。
それを読んだ時、『うわあ、怖え』と思って、それをひたすらやりたかっただけです。あとは実写を意識して、多少アレンジして膨らませています」


福谷「実は原作の雑誌『ほんとにあった怖い話』(現「HONKOWA」) を手掛けた編集者、長谷川まち子さんのご厚意で、漫画版『ひとりぼっちの少女』のスキャン原稿をお借りしています。
超貴重資料です!」


©瀧清流/朝日新聞出版




鶴田「わぁぁあ! 懐かしいです!」



©瀧清流/朝日新聞出版



鶴田「(原稿をじっくり閲覧しながら)そうそう、この後の……“足先だけ見える”、この絵を見たときに『映像化したら絶対に怖くなる!』って確信したんですよ!」



©瀧清流/朝日新聞出版




福谷「さらに第二話『幽体飛行』も!」


©南地ゆうこ/朝日新聞出版
©南地ゆうこ/朝日新聞出版



鶴田『原稿を見てると、いろいろ思い出しますね』


福谷「著作権の都合上、ここでは全部をお見せできないのは残念ですが、長谷川さんによると、昔の読者体験談作品はコンビニ版『HONKOWA』で再録しているそうです。コンビニ版をチェックしていると、昔の作品に出会えるかも?」


鶴田「それはいいですね」


福谷「それにしても、今の『HONKOWA』もかなり怖くて面白いのですが、創刊間もないこの頃の『ほん怖』は強烈ですね。
なるほど鶴田監督が書店で見かけて『これだ!』と思ったのも納得です」


鶴田「コミック『ほんとにあった怖い話』に出会ったのは1989年のはずなんですが、出版社も雑誌名も変わったけど、内容的にはほぼ同じで、いまだに続いているのが嬉しいですよね。」




■雑誌「ほんとにあった怖い話」創刊号(朝日ソノラマ)。1987年1月発行(実際の発売日は1986年12月)
「月刊ハロウィン」の増刊号として朝日ソノラマより創刊





「幽体飛行」「霊のうごめく家」掲載号。1989年秋の増刊『ハロウィン』秋の増刊vol.7





「ひとりぼっちの少女」掲載号。1989年『ハロウィン』冬の増刊vol.5






鶴田「長谷川さん、ありがとうございました!」


福谷「貴重な資料、深く感謝いたします。
ご存知の方も多いとは思いますが、雑誌『HONKOWA 2021年7月号』がkindle版より好評発売中。
そして最新号『HONKOWA 2021年9月号」も7/20に発売されます(予約受付中)。
相変わらず超怖くて面白いので、ぜひお買い求めください!」


HONKOWA 2021年7月号


HONKOWA (ほん怖) 2021年 09 月号 [雑誌]






鶴田「そう言えば、絶版になってるけど東日本大震災を1999年に予言していたという『ほんとにあった怖い話コミック 私が見た未来』(作:たつき諒)が今は話題になってますしね。まあ、ほかの出版社から再販されるらしいですけど」



「ほんとにあった怖い話コミック 私が見た未来」(朝日ソノラマ・刊)※現在は絶版。中古の流通のみ。



【飛鳥新社からの再販版】

私が見た未来 完全版(仮)









【OV版「ほん怖」撮影秘話】
監督としてプロの撮影現場いきなり飛び込んで……




福谷「他に脚本で印象に残っている点はありますか?
例えば第二話『幽体飛行』は原作とちょっと雰囲気が違いますね。
映像では浮遊する主観ショットがメインですが、原作は女の子の客観ショットが中心です。
小中さんとはどのような形で進められましたか?」


©南地ゆうこ/朝日新聞出版



鶴田「先にお話をしたように『幽体飛行』は、『霊のうごめく家』を撮るつもりだったのに、小椋プロデューサーに『コレに変えろ!』といきなり言われた作品で、私は面食らってしまって(笑)。
それで、『心の準備が出来てないから自分には本は書けないから、プロデューサーと脚本家で進めてください』と脚本をお願いしたんです。
で、あがってきた脚本を読んだら、主観ショットでほとんどが構成されていて、つまり、役者を使わないからカメラさえあれば撮れる。これは安く出来ると思いました(笑)。
でも、所々で主人公の女の子が飛んでいる客観ショットの描写を、小中さんは書いていた。
しかし、こういう内容なら主観ショットで押し通した方が良いだろうと思って、客観ショットの要素を脚本から全部排除しましたね」


福谷「後から触れますが、映像版の『幽体飛行』は浮遊する主観ショットがかなり不気味でした。
原作の『幽体飛行』は奇妙で不思議ではあるけど、そこまで怖くはない。やはり怖さにこだわってこその鶴田監督の演出だと思います。
そして、いよいよ監督デビュー作であるOV版『ほん怖』の撮影、クランクインです。
オムニバスですが、撮影は一話から行ったのでしょうか」


鶴田「こんな資料が出てきたのですが、これによると1990年11月15日クランクインですね。
『ひとりぼっちの少女』、『赤いイヤリングの怪』、そして『幽体飛行』の順で撮ったようですね。それぞれ、撮影は2日撮り」





福谷「これも凄い資料だなあ。
トータルで実質、六日間の撮影……。なかなかタイトなスケジュールです。
当時はVシネがバブル並みの人気だったと思いますが、予算的には、当時のビデオ作品としてどうなんでしょう」


鶴田「かなりの低予算だと思います。当時は70~80分の東映Vシネマが、5,000万円位で作られてましたからね。『ほん怖』は45分ですが1,000万円位だったはずです」


福谷「脚本も決定稿が上がり、監督として撮るイメージは出来上がっていたと思いますが、初めての現場はどうでしたか?」


鶴田「イメージは出来上がっていましたが……。正直全く現場経験がなかったのと、あとカメラマン含めスタッフと連携が取れないというか、うまくイメージを伝えることができなかったんです」


福谷「ああ、まわりはプロに囲まれて、ただ一人、自主映画出身の新人で…」


鶴田「それもありますし、あと、当時、ホラーって聞くと『サスペリア』とかああいうものをイメージしちゃったりするんです」


福谷「また、そっちですね(笑)」


鶴田「僕は、中川信夫とアルジェントって同じラインにいると思っている」


福谷「わかります」


鶴田「以前にお話しした通り、僕はもともとそうじゃない。『世にも不思議な物語』だから、むしろカラーでさえなくてモノクロの世界なので、(『サスペリア』や『東海道四谷怪談』のように)どぎつい色がついていることはない。
でも、当時、『世にも不思議な物語』のビデオも出てないから、説明がうまくできないんですよね。こういうふうにしたいんだって、うまく伝えられない。
で、みんなホラーって聞いた瞬間に『サスペリア』とか思っちゃうもんだから」


福谷「どぎつい感じになりますよね」


鶴田「そうなんですよ。で、『違う違う』って言うんだけど、なかなか伝わらなかった。
だから1作目に関してはそこにものすごく不満があって、だから2やるときにまず、スタッフを総入れ替えして、今度は僕の話をちゃんと聞いてくれる人にスタッフをお願いしたんです」


福谷「なるほど、だから第二巻は傑作が生まれたのですね」


鶴田「たぶん、そうだと思います」


福谷「当時はJホラーなんてものは存在しないわけですからね。
メーカーから制作を依頼された会社やスタッフからすれば、未知の新人監督に好きなように撮らせて万が一大失敗したら、自分たちのキャリアに傷がつくわけですから、相手も『ホラーといえばこうだろ。後はまかせろ』みたいになっちゃいますね」


鶴田「スタッフに加えて、役者もそうなんですけど、自分の中のイメージをスタッフ、キャストに伝えることがものすごく大変で難しい」


福谷「絵コンテは描かなかったんですか」


鶴田「1作目の時に描いたんですけど、『こんなの要らねえよ』って話になって(苦笑)。あんまり意味なくなっちゃって」


福谷「なるほど。あの時代は体育会系ですからね。それにしても残念な話です」


鶴田「なので2の時は絵コンテを描いて、それをもとにして撮っていったんです。スタッフも絵コンテの通りに合わせてくれた。だから納得がいくものが撮れた。
DVDが発売された時に、当時の2の絵コンテを特典で入れたんです」


福谷「それは素晴らしい。DVDが廃盤なのがもったいないですね。ぜひ再販してほしいです。
では、2の話は次回じっくり伺うとして……この前、改めて、今回の第一巻を見直したのですが、当時見たよりも、ずいぶんプロっぽい作りに思えました。しかし鶴田さんのホラーの匂いがあまりしないのは、そういう現場の事情があったんですね」


鶴田「そうですね。当時はいきなり現場に放り込まれて、訳が分からない状態でした」


福谷「特に第一話『ひとりぼっちの少女』はライティングもカメラワークも編集もすごく西洋ホラーっぽいですね」


鶴田「撮影の方がミュージックビデオの方だったんですよ。で、そうなっちゃった」


福谷「『赤いイヤリングの怪』では、前半でご指摘の通り、クライマックスの天窓の女の霊がとても怖かったです」


OV版「ほん怖」第三話「赤いイヤリングの怪」



鶴田「あの天窓に落下してくる女については、ロバート・ワイズ監督『たたり』の影響は否めないですね。あの天窓のショットはお金が無いから、児童遊園のジャングルジムで撮ってるんですよ(笑)」


福谷「! 児童遊園のジャングルジムですか?」


鶴田「ええ。ロケ場所の部屋の天窓を撮影したんですが、その天窓に落ちてくる女に関しては、ジャングルジムの天辺に透明のアクリル板を敷いて、そこに幽霊役の女優さんに倒れ込んでもらったんです。
上から落ちたのではなくて、机に突っ伏す要領で上半身を倒したわけです。
でも、セットを組む予算がないのでロケ場所の家の近くにあった児童遊園のジャングルジムの天辺にそのアクリル板を設置したのです。
で、その真下にカメラをおいてレンズを真上に向けた。そこに倒れ込む女優を撮る。そして、その映像を天窓の映像に合成ではめ込むわけです。お金が無いからそんな撮り方をしたんです。
で、私としては不満が残ったので、2010年にフジテレビでリメイクすることになったときに、『リメイクするなら、一部屋全部セットを組まないと無理です』って言ったらすんなりOKが出て、あの時は感動しましたね。

セットを組んで、しっかりスタントの女性に来てもらって操演チームに操作してもらって実際に高い所から天窓に落ちてもらった。
それを更にデジタル合成で細かく修正してリアル感を構築した。
大島優子さんと共演の山本ひかるさんの芝居も抜群に上手くて素晴らしいリメイクになったと思って、完成したときは涙が出ましたね。
ただし、子供達にはかなり怖かったらしくて、天窓に女が落ちてくるショットを境にして視聴率が下がっちゃったんですよね(笑)。
これがテレビでホラー物を放映する難しさですね。
怖くないと観てくれないけど、ショッキングすぎるとチャンネルを変えられてしまう。」



(追記)
鶴田「それと、フジテレビ版『赤いイヤリングの怪』のセットと操演の撮影風景の写真が見つかりました。」

福谷「おお、早速、掲載します!」

フジテレビ放映『ほんとにあった怖い話/夏の特別編2010』の『赤い イヤリングの怪』のセット。写真提供:鶴田法男


同じくフジテレビ放映『ほんとにあった怖い話/夏の特別編2010』の『赤い イヤリングの怪』より、天窓に落ちてくる女幽霊の撮影風景。写真提供:鶴田法男。



福谷「さすがテレビらしい凝ったセットと仕掛けですね。とはいえホラーのショートドラマでここまでちゃんと作り込むのは、やはり当時ブームになるほどの人気だったドラマ版『ほん怖』だからでしょうね。
鶴田監督、本当に貴重なお写真ありがとうございました!!」



大島優子版『赤いイヤリングの怪』撮影風景、鶴田法男websiteより

http://www.howrah.co.jp/tsuruta2/?p=674










幽体離脱の不気味な主観映像の秘密



鶴田「あ、話をオリジナルビデオ版に戻しますね。
『ほん怖』1作目は各話ごとにキャメラマンが違ったので、『赤いイヤリングの怪』に関しては、映画キャメラマンの須賀隆さんだったので、そこはやりやすかったです。河崎実監督と組んで『日本以外全部沈没』とか『地球防衛未亡人』とかをお撮りになっている方ですね」


福谷「とても貴重なエピソードをありがとうございます。
昔見た時は、天窓が別の場所で撮られていたことにも全く気づきませんでした。
フジテレビ版もセットのお話も興味深いです。お金をかけるかけないの違いはあれど、個人的には、どちらも大変魅力的な撮影だったと思います。
ただ、怖すぎる視聴率が下がるというのは、すべてのホラー監督の悩みの種ですね。頑張りすぎると敬遠されてしまう。
そして、次の第二話『幽体飛行』はどうなんですか?いわゆる臨死体験というか幽体離脱で、夜の外の世界を小学生のヒロインが浮遊する話です。
先ほどの話では、小中さんの脚本では幽体離脱する少女の姿を客観的に見せるト書きを鶴田監督は全部カットしたということでしたが?」


鶴田「そうですね。以前、幽体離脱の体験者さんから聞いた話なんですけど、ある夜、体調を崩して寝込んだそうなんです。で、夢の中で自分の視点が部屋から抜け出して、家の周囲を飛んで上空から様々な風景を見たという。道を歩いている人の近くに下りていったけど誰も自分に気づかなかったそうなんです。それまで、家の周囲を上から見たことなんて無かったから、単なる夢だと思った。でも、気になったので具合が良くなってから、近くのマンションの最上階に上がったそうなんです。昔だからセキュリティがしっかりしてないので簡単に入れたんですね。で、見おろしたら夢で見たのと同じ風景があったと言う。でも、自分が飛んでいる姿は誰にも見えなかった。その話を聞いた印象が強かった。
その他の幽体離脱体験談では、自分が宙に浮いているのを人々が気づいていないことが多いんですよね。
だから、客観的に人が浮いている描写は映画的説明にしかならないと思って切ったんです 」


福谷「あの浮遊シーンは非常に印象に残っています。薄気味悪く、どこか死の匂いが漂う。昔見た時、墓地が現れるシーンで『おおっ』と息をのんだのを思い出しました。撮影はかなり苦労されたと思いますが、第一巻屈指の名シーンと思います」


鶴田「思い出してきましたけど、主観映像だけで撮ることになったら、小椋プロデューサーは『カメラとレコーダーは延長して押さえるから、クランクアップ後に助監督と2人で好きなだけ撮影しなよ』って(笑)。映画の撮影は人件費が一番掛かりますからね。そういう話だったので助監督と三日間くらいあっちこっちで撮りましたね。あ、一日は風船会社に協力してもらって大きな風船というか、小型の気球にカメラを付けて町中を飛ばしたんですよ。」


福谷「風船ですか!あの独特の浮遊感は」


鶴田「当時、リカちゃんの玩具タカラの契約社員としても働いていたので、風船専門会社さんとお付き合いがあったんです。
で、風船にカメラを付けて飛ばしたら幽体離脱が映像化できると思ったんですね。
今だったらドローンで撮ろうとなるでしょうけど、当時はそんなものは無いですからね。それに、無許可だったから今なら警察に掴まりますね(笑)。
でも、風任せでコントロール不可能で適当に回しているからドローンの映像とも違うし、今見ても面白い映像になったと思います」

福谷「ぜひビデオマーケットの配信でこのシーンを見てほしいですね。
それにしても、第一巻から苦労の連続というか……でもこの第一巻を乗り越えた先に、傑作揃いの第二巻が生まれるわけですね。
結果的に『霊のうごめく家』も第二巻にスライドして正解だったわけですね」


鶴田「そうですね」


福谷「次回はその辺りをじっくり伺えればと思います」


鶴田「了解しました。でも、今度は半年後にならないようにしてください(笑)」






次回へ続く






【鶴田法男プロフィール】

鶴田法男監督


1960年12月30日、東京生まれ。和光大学経済学部卒。
「Jホラーの父」と呼ばれる。大学卒業後、映画配給会社などに勤務するが脱サラ。
1991年に自ら企画した同名コミックのビデオ映画『ほんとにあった怖い話』でプロ監督デビュー。本作が後に世界を席巻するJホラー『リング』(98)、『回路』(01)、『THE JUON/呪怨』(04)などに多大な影響を与え、‘99年より同名タイトルでテレビ化されて日本の子供たちの80%が視聴する人気番組になっている。
2007年には米国のテレビ・シリーズ『Masters Of Horror 2』の一編『ドリーム・クルーズ』(日本では劇場公開)を撮り全米進出。
2009年、「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」コンペティション部門審査員。
2010年より「三鷹コミュニティシネマ映画祭」スーパーバイザーを務める。
角川つばさ文庫『恐怖コレクター』シリーズ他で小説家としても活躍中。


【主な映画】

『リング0~バースデイ~』(東宝/00)

『案山子/KAKASHI』(マイピック/01)

※ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2001、ファンタランド国王賞受賞

『予言』(東宝/04)

※ニューヨークトライベッカ映画祭正式招待作品

『ドリーム・クルーズ』(KADOKAWA/07)

※『Masters Of Horror 2』の一編として全米テレビ放映。

『おろち』(東映/08)

※釜山国際映画祭正式招待作品

『POV~呪われたフィルム~』(東宝映像事業部/12)

※2011南アフリカホラーフェスタ公式上映作品

   2011ブエノスアイレス・ブラッドレッド映画祭公式上映作品

『トーク・トゥ・ザ・デッド』(ダブル・フィールド/13)

『Z~ゼット~果てなき希望』(SPO/14)


【主なTV】

『ほんとにあった怖い話』シリーズ(フジテレビ/99~)

『スカイ・ハイ』シリーズ(テレビ朝日/03、04)

『ウルトラQ dark fantasy』(テレビ東京/04)

『ケータイ捜査官7』(テレビ東京/08)

『怪奇大作戦 ミステリーファイル』(NHK-BSプレミアム/13)


【主な書籍】

「知ってはいけない都市伝説」(KADOKAWA/監修/13)

「恐怖コレクター」シリーズ(KADOKAWA/監修&共著/15~)


鶴田法男website
http://www.howrah.co.jp/tsuruta/

twitter
https://twitter.com/NorioTsuruta








【最新情報】

中国映画『ワンリューシュンリン(原題)』10月30日中国公開!








(鶴田法男監督関連作品)

リング0 ~バースデイ~ [Blu-ray]



予言 [DVD]



おろち [DVD]


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怪狩り 巻ノ四 希望の星(4) (角川つばさ文庫)

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『みんなから聞いた ほっこり怖い話(1)/幽霊の道案内』絶賛発売中!
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鶴田法男Presents、サウンド・ホラー『THE PARANORMAL TELLER』無料配信中!

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: spinner-1024x1024.jpg

https://spinear.com/shows/the-paranormal-teller/









【福谷修プロフィール】

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「DVD&ビデオでーた」(角川書店)などの映画雑誌のライターや、構成作家を経て、2000年に自主製作したオカルティック・ラブストーリー『レイズライン』にて、みちのく国際ミステリー映画祭オフシアター部門グランプリ受賞。2003年、プロ映画監督デビューした日本香港合作ホラー映画『最後の晩餐-The Last Supper』(加藤雅也主演)でスコットランド国際ホラー映画祭準グランプリ受賞。その後、『こわい童謡 表の章/裏の章』(多部未華子、安めぐみ主演)、『渋谷怪談 THEリアル都市伝説』(石坂ちなみ主演)、『心霊病棟 ささやく死体』(芳賀優里亜主演)、『劇場版 恐怖のお持ち帰り』(馬場良馬主演)など、数々のホラー映画を監督する。また、NintendoDSのホラー・アドベンチャーゲーム『トワイライトシンドローム 禁じられた都市伝説』の監督・シナリオを担当するなど、映画以外のホラー作品も手がける。作家としても、『渋谷怪談』(竹書房)でデビュー後、『子守り首』(幻冬舎)、『心霊写真部』(竹書房)、『霧塚タワー』『鳴く女』『怪異フィルム』(TOブックス)など著作多数。

中でも、『心霊写真部』は2010年に中村静香主演でDVDドラマ化され、一度は打ち切られたものの、ニコ生ホラー百物語などで再評価され、人気が沸騰。クラウドファンディングを経て、2015年に『心霊写真部 劇場版』(奥仲麻琴)、2016年『心霊写真部リブート』(松永有紗主演)が製作される。

2018年、アニメーション作家、坂本サクが監督を務める劇場用ホラー・アニメ映画『アラーニェの虫籠』(花澤香菜主演)を製作・監修・プロデュース。本作は、アニメ映画祭の世界最高峰、アヌシー国際アニメーション映画祭にて正式上映された他、四大アニメ映画祭の一つ、ザグレブ国際アニメーション映画祭の長編コンペティション部門にノミネートされるなど、ドイツ、カナダ、台湾など、世界中の国際映画祭で招待上映され、好評を博した。新作はホラー・アニメ映画『アムリタの饗宴』(製作・プロデュース・監修)で2021年公開予定(令和二年度文化庁文化芸術振興費助成作品)。他に実写のホラー映画を準備中。

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(福谷修関連作品)

アラーニェの虫籠 [Blu-ray]

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