【後編】人気連載企画「Jホラーのすべて 鶴田法男」第7回「誕生!“赤い服の女の霊”の真相(後編)OV版『ほん怖』撮影秘話③」 秘蔵資料と共に明かされるJホラー誕生の真実!

pick-up オススメ 連載・Jホラーのすべて 鶴田法男



Jホラーはいかにして生まれ、世界的に注目されるようになったのか?
“Jホラーを知り尽くした男”が明かす、Jホラーの知られざる舞台裏!

第7回は、有名な“赤い服の女の霊”の真実(後編)です!



(2021年9月17日掲載)

人気連載企画『Jホラーのすべて 鶴田法男』第7回「“赤い服の女の霊”の真実<後編>~OV版『ほん怖』撮影秘話③~」を掲載します。








イントロダクション


『リング0』「ほんとにあった怖い話(ほん怖)」『おろち』などで知られる映画監督、鶴田法男

最近も、4年がかりで取り組んだ100%中国資本の新作ホラー・スリラー映画『ワンリューシュンリン(原題)』(网络凶鈴/網絡凶鈴)が2020年10月30日より中国全土約5,000館で公開されるなど、精力的な活躍を続けている。

手掛けた映画、ドラマ、ビデオ、小説は優に200本は超え、その多くが高い評価を得ている。

中でも、90年代初頭のオリジナルビデオ映画版『ほんとにあった怖い話』(その後、稲垣吾郎ホストでTVシリーズ化)などが、後の黒沢清監督(『CURE』『回路』『スパイの妻』)、中田秀夫監督(『リング』『事故物件 恐い間取り』)、清水崇監督(『呪怨』『犬鳴村』)らの作品に影響を与えたことで“Jホラーの父”“Jホラーの先駆者”と呼ばれている。

この連載企画「Jホラーのすべて」は、そんな彼の作品を中心に、創作の舞台裏や、演出の秘密に迫りながら、今一度、「Jホラーとは何か?」を検証し、その全貌を明らかにしていく。


鶴田法男監督



<バックナンバー>

序章「監督引退」
第一回「原点① …幽霊を見た… 」
第二回「原点② 異常に怖かった」
第三話「オリジナルビデオ版『ほん怖』誕生」
第四回「幻の『霊のうごめく家』初稿」
第五回「OV版『ほん怖』撮影秘話①」
第六回「誕生!“赤い服の女の霊”の真相(前編)OV版『ほん怖』撮影秘話②」



鶴田監督が小三の時に幽霊を見た自宅の廊下。男は突き当たりを襖をすっと抜けていった。連載第一回「原点①…幽霊を見た…」より







鶴田法男監督・最新情報


60万部突破の人気小説『恐怖コレクター』がコミック化!
9/15発売の「月刊コミックジーン10月号」にて連載開始!


鶴田監督が原作を務め、シリーズ累計60万部を突破した、角川つばさ文庫の人気シリーズ「恐怖コレクター」のコミカライズが、2021年9月15日(水)発売の「月刊コミックジーン10月号」((株)KADOKAWA)より新連載スタート。
コミック版「恐怖コレクター」漫画・結城にこ、原作・佐東みどり、鶴田法男、キャラクター原案・よん。

コミックジーン 2021年10月号
2021年9月15日(水)発売「月刊コミックジーン10月号」((株)KADOKAWA) 画像クリックでAmazonの紹介ページを確認できます





鶴田監督も出演し、伝説的傑作「霊のうごめく家」のハイライト映像も紹介された
NHK-BS特番『たけしのこれがホントのニッポン芸能史/ホラー』が9/18(土)再放送決定!


『霊のうごめく家』©1991朝日ソノラマ、ジャパンホームビデオ



Jホラーの原点にして最高傑作の一つ『霊のうごめく家』(今回連載で取り上げるOV版「ほんとにあった怖い話 第二夜」に収録)の映像のハイライトシーンが放送され、鶴田監督本人もVTR出演し、大きな話題を呼んだNHK-BS特番『たけしのこれがホントのニッポン芸能史/ホラー』が2021年9月18日(土)午後六時より再放送が決定!

番組公式サイト
https://www.nhk.jp/p/ts/P8PG1QQN2V/episode/te/G5JMNXQ537/










今回の記事(第七回)を読まれる前に…



今回より取り上げるのは、傑作『霊のうごめく家』などが収録された、伝説的なオリジナルビデオ版『ほんとにあった怖い話 第二夜』です。

鶴田監督のプロ監督デビュー作にして、Jホラーの原点というべきオリジナルビデオ版『ほんとにあった怖い話』シリーズ(全三巻/後にフジテレビでTVシリーズ化)。
その記念すべき1作目が発売されたのは1991年7月5日。今年でちょうど30周年を迎えました。

記念すべき第一作・オリジナルビデオ(OV)版『ほんとにあった怖い話』VHSジャケット1991年7月5日発売。現在はVHS、DVD共に廃盤。



発売日の7/5、30周年を迎えたタイミングで、中断していた当連載を再開しました(第五回「OV版『ほん怖』撮影秘話①」)
この回より当面はオリジナルビデオ版『ほんとにあった怖い話』の知られざる撮影秘話を中心に記事を掲載する予定です。


Jホラーの原点・OV版『ほんとにあった怖い話』を鑑賞する方法
ビデオマーケット、GYAO!、そしてAmazon Prime Videoが追加に


OV版「ほん怖」第三話「赤いイヤリングの怪」


Jホラー史においても非常に重要なオリジナルビデオ版『ほんとにあった怖い話』(以下、OV版「ほん怖」)ですが、ビデオ(VHS、DVD)が廃盤で、レンタルもほとんど流通していませんでした。

現在、シリーズ三作すべてがネット配信で鑑賞できるのがビデオマーケットです。
他にGYAOでは「ほんとにあった怖い話」と「ほんとにあった怖い話 第二夜」の二話を配信中。

その後、当サイトでの連載が続く中、7月発売の別冊映画秘宝「恐怖! 幽霊のいる映画」での鶴田監督インタビュー、「読売新聞 日曜版」(2021年8月15日)、雑誌「POPEYE」(9月号)などのメジャーなメディアで、鶴田監督とOV版『ほんとにあった怖い話』の記事が掲載されるなど、再評価の機運の高まりもあって、この秋より、Amazon Prime Videoにて配信がスタートしました。
チャンネルは「MEN’S NECO+オンデマンド」となります(「ほんとにあった怖い話」「ほんとにあった怖い話 第二夜」の二話が配信中)。

ほんとにあった怖い話


Amazon Preime Video

※画像クリックでAmazon Prime Videoの紹介ページを確認できます








このほかの主な鑑賞方法


ほんとにあった怖い話 
(一作目/1991年7月5日発売)「ひとりぼっちの少女」「幽体飛行」「赤いイヤリングの怪」収録

ほんとにあった怖い話 第二夜 
(二作目/1992年1月24日発売)「夏の体育館」「霊のうごめく家」「真夜中の病棟」

新ほんとにあった怖い話 幽幻界 
(三作目/1992年7月24日発売)「婆 去れ!!」「踊り場のともだち」「かなしばり」「廃屋の黒髪」

※タイトルのクリックで、ビデオマーケットの各作品の紹介ページを確認できます。




Yahoo!のGYAO!でも二作品がレンタル配信中(現在、期間限定でレンタル110円セール中)。

ほんとにあった怖い話

ほんとにあった怖い話 第二夜




さらに、東京・渋谷のSHIBUYA TSUTAYAでは、なんと最初のVHS版「ほんとにあった怖い話 第二夜」がレンタルできます。
筆者も実際に借りてみました。ジャケットはさすがに30年物ですが、もちろんデッキで再生できました。
発売当時のままの雰囲気で楽しむには最適のアイテムです。

実際に棚に並んでいたVHSジャケット。実際に借りて鑑賞しました。




今回の記事の参考に、未見の方はこの機会をお見逃しなく!










連載企画「Jホラーのすべて 鶴田法男」


第六回「誕生!“赤い服の女の霊”の真相<後編> ~OV版「ほん怖」撮影秘話②~」


■鶴田法男監督(以下、鶴田)、聞き手・福谷修(以下、福谷) ※は注釈

第四話「夏の体育館」 (C)1991朝日ソノラマ、ジャパンホームビデオ




福谷「前回に続き、オリジナルビデオ版『ほんとにあった怖い話』「夏の体育館」のことをお聞きします。

「夏の体育館」のクライマックスで、「赤い服の女の霊」が再び現れ、女子高生にじわりと迫るシーンは、原作にはありません。霊が少しずつ近づいてくるカットもまた、Jホラー史的にはとても重要と思いますが、どのように生まれたのでしょうか。
もちろん小中さんが二つのエピソードをつなぎ、後半で赤い服の女の幽霊に女子高生が襲われるクライマックスを用意したというのはわかりますが、それでも、あの女の動き、雰囲気、たたずまい、照明、赤いワンピースと言うビジュアル、全てが恐ろしく、素晴らしいと思います。
幽霊の足がうっすら半透明であったりするのは、過去の幽霊映画の名残かもしれませんが、同時に、あのカクカクした不気味な動き(ゆっくりと左手を上げ、右手も上がり、前かがみで近づく、という不気味な動作の演出。顔もはっきり見えない)は、『リング』『呪怨』『回路』などの原点といえますが、いかがでしょうか」



鶴田「確か、『続・裕美さんのケース―夏の体育館編―』以外に、もう一作、女の幽霊が主人公に近づいてくる原作があったので、それをミックスした記憶があるんですよね。
それで、赤い服の女の登場シーンについて、小中さんの台本にはこう書かれています。」



S#12 調整室
千満子、目を見開いている。
膝ごしに見えるのは壁。否、ぼんやりと、赤い服の女がそこから這い出してくる。
千満子、体が硬直している。目を開くのみ。



鶴田「絵コンテはこうなってますね」


当時の撮影用の絵コンテ①



鶴田「つまり、壁から抜け出してくるイメージだったんですよね。」





鶴田「だから、私もグリーンバック合成にして「壁抜け」を撮るつもりで絵コンテも描いてました。
でも、グリーンバック合成は撮影の前日に止めたんです。」


福谷「それはなぜですか?」


鶴田「うーん、まず、難しい説明になることをお許しください。
『第二夜』の私の演出プランは、「視点をずらさない」でした。
1作目は思うように撮れなかったので視点がぶれぶれになっていると我ながら反省点が多かったんです。そんな思いを持って、『第二夜』に取り組んでいました。
で、「壁抜け」を明確に見せようと考えると「壁と女を横位置から撮る」のが一番分かりやすいんですよ。
でも、「幽霊を横位置から撮る」ことは避けないといけないと考えた。
1作目の『ひとりぼっちの少女』で幽霊の手を横位置から撮ったショットがあるのですが、あれが入ったせいで作品全体のテンションが落ちたと思ったのです。あのショットはカメラマンの判断で撮ったものだったのですが、客観的になりすぎていて怖くないんですよね。
観客に「怖い」というエモーションを与えるには主観ショットが一番効くんですよ。
だから、POVで撮っている『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』、『パラノーマル・アクティヴィティ』、『レック/REC』、それに白石晃士監督作品は怖くなるわけです。
ですから、絵コンテにあるように千満子の主観ショットで壁抜けを正面から撮ろうと思った。
でも、これだと「抜けてきた感」が出しにくいので合成に手間が掛かるし予算がかさむ。そこでシンプルに同ポジションの空舞台と人物の二重露光にした方が良いと思って、「壁抜け」のアイディアは捨てたんですよね。」


福谷「なるほど。「壁抜け」が元のアイデアというか、きっかけとは意外でした。
たしかに壁抜けは面白いですが、リアルに怖くなるか、説得力が出るかどうかは別ですからね。
あえて過程をシンプルにした分、確実に怖さは増したと思います。
では、実際に、あの赤い服の女の、不気味な動きは、監督が女優に芝居をつけたものでしょうか。」


鶴田「あの独特の芝居は女優さんに「幽霊だけどお岩さんにはしたくない」、「あなたは人間と同じだ。でも、死んだ人間なんだ。しかし、ゾンビではない」とか、まあ、色々と注文を付けていたら、ああなったんですよ。
自分でも夢中になってお芝居に注文を出していたし、幽霊役の女優さんも私の無茶な注文に必死に応えていただけだったと思います。
(台本に目を落とし)水沢杏子さんという方か……。今はどうなさってるんだろう? 
正直な話をすると、この水沢杏子さんの頑張りがなかったら、あの独特の幽霊の芝居は構築できなかったですよね。」


福谷「 途中、近づいてきた幽霊のアップのカットがありますが、怖いですね。アップでもはっきりしない見せないがゆえに、逆に“視線”を感じてぞっとします。個人的には、『リング』のクライマックスでテレビから這い出てきた貞子のアップのラストカット(長い髪の隙間から、ギロッと見下ろして、にらみつける)に通じるような、凄みを感じます。似ているというか、他人の空似かもしれませんが、鶴田監督はどう解釈されますか」


鶴田「それは私には分かりません。
ちなみに、『夏の体育館』の台本はこうなってますね。」



S#16 調整室
女、千満子の抱える膝に迫る程近づく。
そこまで近づいても、女の姿はボンヤリしてはっきりとは見えない。




鶴田「これを読んだときに、幽霊の顔がアップで映っているのだけど、ぱっと見ではそれが分からない心霊写真を思い浮かべたんです。
その時に閃いたイメージは30年経っても忘れないですね。とにかく、その心霊写真の感じを映像で再現したいと思った。そんな感じです。
ですから、福谷さんには申し訳ないですが、『リング』の貞子の目のアップとはイメージは全く繋がらないです。」


福谷「なるほど、心霊写真ですか。心霊写真の曖昧であるが故の、得体の知れない怖さを意識されたわけですね。失礼しました」



鶴田「いえ。むしろ、1996年に発表した『亡霊学級』の「白いセーターの髪の長い女」が、「貞子」と似ていると指摘するホラーファンがいらっしゃいますよね。
私自身、『リング』のテレビ抜けを初めて観たときに、「む、む、む、ちょっと似てる」と思いましたし……(笑)。」






福谷「このシーンにおける幽霊と女子高生のカットバックは、「ジョーズ」のサスペンス演出を意識したと、DVDのコメンタリーではお話していましたが、もう少し具体的に教えてください。
また、他に、こうした恐怖シーンで影響を受けた作品があれば教えて下さい。」


鶴田「先に述べたように恐怖感を高めるには視点のブレを作らないことが重要なんですよね。
だから、主観映像であるPOV作品は自ずと緊張感が生まれる。
しかし、POVの場合、5分くらいなら飽きずに見せることは可能ですが、それ以上になるとやはり飽きる。
POVじゃないにしても、視点にブレが無いようにコンテュニティを構築すると作品を非常に窮屈にしてしまい、観客は息苦しく感じるし、時には非常に理解しづらいものになってしまう。
ですから、時々、ルール違反の客観ショットを入れたりするわけです。
そうすると、窮屈さを解消できるし、観客も理解しやすくなるんですよ。
私の『夏の体育館』の赤い服の女が、体育館の調整室に1人残された千満子に迫るシーンは、
「千満子のワンショット」「千満子の主観ショット」だけで構築するのが一番怖いと思ったんですね。
でも、それで絵コンテを描いていたら飽きてしまった。
で、優れた既存の映画を参考にしたいと思って思いをめぐらした。
それで、『ジョーズ』の桟橋のシーンが初見のときに非常にスリリングに感じたのを思い出した。」



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鶴田「あのシーンは「海に引きずり込まれた釣り人」「後ろから迫ってくる壊れた桟橋」の2つの主観的な視点が交互にカットバックされていたと記憶していたわけです。
で、当時ですからレーザーディスクを引っ張り出して見返してみたら、ほとんどは「海に引きずり込まれた釣り人」と「後ろから迫ってくる壊れた桟橋」の2つの視点で構成されているのですけど、ワンカットだけ「桟橋ゴシの岸に向かって泳ぐ釣り人」という客観ショットが入っているんですね。
これが非常に効果的で、桟橋と釣り人の位置関係が分かるし、主観的なショットだけで構成された窮屈さからも解放される。
それに気づいたんですよ。だから、『夏の体育館』の中でも「赤い服の女ゴシの千満子」という客観ショットをワンカット入れることにしたんです。絵コンテの続きを見てください。」


当時の撮影用の絵コンテ②

当時の撮影用の絵コンテ③

当時の撮影用の絵コンテ④




福谷「それって、ヒッチコックの『鳥』で空に浮かぶ鳥ごしにパニックになる町のショットと同じようなことですか?」


鶴田「そうです! そうです! 『鳥』のあのシーンって基本的にはティッピ・ヘドレンのアップとその主観ショットで構成されてるじゃないですか。で、あの空に浮かぶ鳥ゴシのパニックになる町の客観ショットが突然挿入されるんですよね。あれは神の視点なんですけど、あのショットがワンカット挿入される事で観客は全てを把握できる。しかも、状況が悪化するイメージが一瞬にして伝わる。映画芸術の見事な帰結点の1つだと思います。
説明ショットなんですが、説明に陥らないんですよね。「主観的客観ショット」とでも言えばいいのかしら。映画ならではの、映画だからこそ表現出来る華麗なるショットです。ヒッチコックは素晴らしいですよね。」


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鶴田「ま、とにかく、上手く出来た映画は、説明ショットが単なる説明にならない凄さがあるんですよね。
ヒッチコック、黒澤明、溝口健二、デヴィッド・リーン、そしてスピルバーグなどの名匠、巨匠と呼ばれる監督の絵作りや演出は説明ショットや説明台詞が説明にならないように計算されてますからね。

あ、すみません。あらぬところに話が行ってしまいました。」



福谷「いえいえ、とても興味深いお話をありがとうございます。
ここまでお聞きすると、「夏の体育館」が傑作であるには相応の理由があったというのがよく理解できます。
また、たとえ演出の理論としてわかっていても、それを現場で実践し、スタッフ、キャストを動かして作品として結実させることにはさらに困難を伴います。しかも低予算ですからね。
この作品もまた鶴田監督のホラー演出スタイルが確立された記念碑的な作品と思います。
では最後に、ここまでお話をされて「夏の体育館」で思い出された撮影秘話などがあればお願いします。」



鶴田「撮影秘話ですか? いや、もう30年前の作品ですからね。さすがに忘れましたね。
低予算のビデオ映画について、まさか30年後にこんなに詳しく質問をされるとは考えていなかったですからね。
でも、台本や絵コンテ、それに注文書やその他の資料を取っておいて良かったです。


それにしても、映画に限らず作品というものは不思議ですね。数億円の製作費をかけて大ヒットをしたのに、1、2年で忘れられてしまう作品もあれば、この『ほんとにあった怖い話』のように低予算の小さな作品が語り種になっている。
やはり作品は生き物ですね。作り手の思惑や計算だけでは成り立ってなくて、一度世の中に出ていくと勝手に成長しますね。
そんな事を考えていたら、ひとつ思い出したことがあります。
この作品は、千満子、秋実、悠加の3人の女子高生が主人公で、途中で秋実だけが幽霊を見るシーンがあるんですけど、その芝居の前に悠加に「秋実のおばさんって霊能者って本当?」という台詞があるんですよ。
これは小中さんの台本には無くて、監督の私が現場で足したものなんです。
3人の中で秋実にだけ見えてしまうことが、どうしてもしっくりしなくて秋実を演じた寺田恵美という女優さんも納得できないところがあるみたいだったので、急遽、足したんですよね。
で、完成作を見た小中千昭さんはおおむね褒めたけど、その足した台詞に対しては「幽霊が見えるのに理由は要らない。見えるものは見えるんだ!」と大変にお怒りになりましたね。
脚本の打合せをしているときに、この三人の女子高生のキャラクターの差異をもっと明確にしたいとお願いをしたんですが、小中さんはそういう事にはあまり興味が無いみたいなんですよね。
三人のキャラの差別化をどうやって醸し出すか悩んだまま撮影に入ってしまった。
で、確かに、幽霊が見えることに理屈が必要ないというのはおっしゃる通りなんですが、自分としてはこの3人の女子高生のバックボーンを少しでも作ってあげてドラマとしての深みを付けたかった。
私は映画における幽霊描写、スプラッタ表現に頼らないホラー映画とか、そういう事をもちろん1つの目標としていましたけど、一方で、映画の物語性やドラマ性もしっかり構築したいと思っていました。
黒澤明監督『七人の侍』は魅力的な設定とアクションと人間ドラマがあって、更に映画としての斬新な表現も随所にある。そのことで映画の古典になって未来永劫残っていくわけです。
そんな『七人の侍』のようなホラー映画は作れないのだろうかと当時から夢想してましたね。
結果として、その答えは私ではなくて、高橋洋=中田秀夫コンビの『リング』でひとまず出た気はした。
何が言いたいのかよく分からなくなりましたが、作品作りも人生もなかなか思うようにいきませんね。
『夏の体育館』のあれこれを思い返していたら、そんな事が頭の中にわいてきました。」




ありがとうございました。
次回はいよいよ「霊のうごめく家」について、お聞きしたいと思います。





次回は9/18の予定です。※諸般の事情で遅れる場合があります。






【鶴田法男プロフィール】

鶴田法男監督


1960年12月30日、東京生まれ。和光大学経済学部卒。
「Jホラーの父」と呼ばれる。大学卒業後、映画配給会社などに勤務するが脱サラ。
1991年に自ら企画した同名コミックのビデオ映画『ほんとにあった怖い話』でプロ監督デビュー。本作が後に世界を席巻するJホラー『リング』(98)、『回路』(01)、『THE JUON/呪怨』(04)などに多大な影響を与え、‘99年より同名タイトルでテレビ化されて日本の子供たちの80%が視聴する人気番組になっている。
2007年には米国のテレビ・シリーズ『Masters Of Horror 2』の一編『ドリーム・クルーズ』(日本では劇場公開)を撮り全米進出。
2009年、「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」コンペティション部門審査員。
2010年より「三鷹コミュニティシネマ映画祭」スーパーバイザーを務める。
角川つばさ文庫『恐怖コレクター』シリーズ他で小説家としても活躍中。


【主な映画】

『リング0~バースデイ~』(東宝/00)

『案山子/KAKASHI』(マイピック/01)

※ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2001、ファンタランド国王賞受賞

『予言』(東宝/04)

※ニューヨークトライベッカ映画祭正式招待作品

『ドリーム・クルーズ』(KADOKAWA/07)

※『Masters Of Horror 2』の一編として全米テレビ放映。

『おろち』(東映/08)

※釜山国際映画祭正式招待作品

『POV~呪われたフィルム~』(東宝映像事業部/12)

※2011南アフリカホラーフェスタ公式上映作品

   2011ブエノスアイレス・ブラッドレッド映画祭公式上映作品

『トーク・トゥ・ザ・デッド』(ダブル・フィールド/13)

『Z~ゼット~果てなき希望』(SPO/14)


【主なTV】

『ほんとにあった怖い話』シリーズ(フジテレビ/99~)

『スカイ・ハイ』シリーズ(テレビ朝日/03、04)

『ウルトラQ dark fantasy』(テレビ東京/04)

『ケータイ捜査官7』(テレビ東京/08)

『怪奇大作戦 ミステリーファイル』(NHK-BSプレミアム/13)


【主な書籍】

「知ってはいけない都市伝説」(KADOKAWA/監修/13)

「恐怖コレクター」シリーズ(KADOKAWA/監修&共著/15~)


鶴田法男website
http://www.howrah.co.jp/tsuruta/

twitter
https://twitter.com/NorioTsuruta








【最新情報】


中国本土で撮った新作映画『ワンリューシュンリン(原題)』
2020年10月30日中国5000館で公開!日本公開が待たれます!








(鶴田法男監督関連作品)

リング0 ~バースデイ~ [Blu-ray]



予言 [DVD]



おろち [DVD]


『恐怖コレクター』シリーズ累計60万部突破!

恐怖コレクター 巻ノ十六 青いフードの少年 (角川つばさ文庫)



「恐怖コレクター」のコミカライズが、2021年9月15日(水)発売の「月刊コミックジーン10月号」((株)KADOKAWA)より新連載スタートしました。

コミックジーン 2021年10月号

2021年9月15日(水)発売「月刊コミックジーン10月号」((株)KADOKAWA) 画像クリックでAmazonの紹介ページを確認できます


怪狩り 巻ノ五 せまりくる悪夢 (角川つばさ文庫)



『みんなから聞いた ほっこり怖い話(1)/幽霊の道案内』絶賛発売中!
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鶴田法男Presents、サウンド・ホラー『THE PARANORMAL TELLER』無料配信中!

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https://spinear.com/shows/the-paranormal-teller/









【聞き手・福谷修プロフィール】

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「DVD&ビデオでーた」(角川書店)などの映画雑誌のライターや、構成作家を経て、2000年に自主製作したオカルティック・ラブストーリー『レイズライン』にて、みちのく国際ミステリー映画祭オフシアター部門グランプリ受賞。2003年、プロ映画監督デビューした日本香港合作ホラー映画『最後の晩餐-The Last Supper』(加藤雅也主演)でスコットランド国際ホラー映画祭準グランプリ受賞。その後、『こわい童謡 表の章/裏の章』(多部未華子、安めぐみ主演)、『渋谷怪談 THEリアル都市伝説』(石坂ちなみ主演)、『心霊病棟 ささやく死体』(芳賀優里亜主演)、『劇場版 恐怖のお持ち帰り』(馬場良馬主演)など、数々のホラー映画を監督する。また、NintendoDSのホラー・アドベンチャーゲーム『トワイライトシンドローム 禁じられた都市伝説』の監督・シナリオを担当するなど、映画以外のホラー作品も手がける。作家としても、『渋谷怪談』(竹書房)でデビュー後、『子守り首』(幻冬舎)、『心霊写真部』(竹書房)、『霧塚タワー』『鳴く女』『怪異フィルム』(TOブックス)など著作多数。

中でも、『心霊写真部』は2010年に中村静香主演でDVDドラマ化され、一度は打ち切られたものの、ニコ生ホラー百物語などで再評価され、人気が沸騰。クラウドファンディングを経て、2015年に『心霊写真部 劇場版』(奥仲麻琴)、2016年『心霊写真部リブート』(松永有紗主演)が製作される。

2018年、アニメーション作家、坂本サクが監督を務める劇場用ホラー・アニメ映画『アラーニェの虫籠』(花澤香菜主演)を製作・監修・プロデュース。本作は、アニメ映画祭の世界最高峰、アヌシー国際アニメーション映画祭にて正式上映された他、四大アニメ映画祭の一つ、ザグレブ国際アニメーション映画祭の長編コンペティション部門にノミネートされるなど、ドイツ、カナダ、台湾など、世界中の国際映画祭で招待上映され、好評を博した。新作はホラー・アニメ映画『アムリタの饗宴』(製作・プロデュース・監修)で2021年公開予定(令和二年度文化庁文化芸術振興費助成作品)。他に実写のホラー映画を準備中。

twitter
https://twitter.com/o_fukutani


(福谷修関連作品)

アラーニェの虫籠 [Blu-ray]

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